楽天と日本郵便は12月24日、戦略的提携に関する共同記者会見を開催しました。登壇した楽天の三木谷浩史社長は「楽天グループのテクノロジーと、日本郵便の配送網のアセットを組み合わせて、物流分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を起こしたい」と意気込みました。

  • 楽天と日本郵便が戦略的提携を発表。物流分野におけるDXを目指します

ニューノーマル社会は物流がより重要に

新型コロナウイルスの感染拡大により、ニューノーマルへのシフトが加速している現在。三木谷社長は「国内のネットショッピングの普及率は(中国、欧米に比べると)まだ低いけれど、コロナを機に、流通の20%程度まで一気に拡大するのではないか」と分析します。

  • 楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

それを踏まえた上で「eコマースは物流が重要。いかに安定的な配送網を確立するか」と説明。楽天の物流をめぐる動きとしては、これまで楽天市場の出店者に向けた「ワンデリバリー構想」を立ち上げ、物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」を拡大し、楽天独自の配送サービス「Rakuten-EXPRESS」の拡大なども進めてきました。

今回の日本郵便との提携を通じて楽天では、次世代の物流プラットフォームをオープンな形でつくりあげ、様々な事業者にも提供し、「持続可能な仕組みをつくっていきたい」(三木谷氏)考えです。ゆくゆくは物流だけでなく、金融、決済、モバイルなど、様々な分野においても戦略的提携を進めていきたいとしています。

  • 両社の強みを活かした連携へ

キャッシュレス決済サービスの連携を検討

日本郵便の衣川和秀氏は「当社のDXを飛躍的に加速させる最大のチャンス。私どもの全国2万4千の郵便局と物流のリアルなネットワークに、楽天様のデジタル技術とデータ活用のノウハウを組み合わせることで、日本郵便が連綿と積み上げてきたリアルの強みが一層強化できるのではないか」と期待を寄せています。

  • 日本郵便 代表取締役社長兼執行役員社長の衣川和秀氏

また日本郵政の増田寬也氏は「物流事業以外でも、金融、モバイルなどで幅広く提携について協議、検討していきたい。金融分野では、キャッシュレス決済サービスの連携を検討します。またモバイル分野では、楽天モバイルの事業拡大に資するような全国の郵便局の活用策を検討していく。これ以外にも提携の可能性があるのではないか。合意できたものについては、2021年3月提携予定の最終合意書に盛り込んでいきます」と話していました。

  • 日本郵政 取締役兼代表執行役社長の増田寬也氏

自動倉庫やドローン、ロボットの活用も視野に

提携の概要については、楽天 執行役員の小森紀昭氏が説明しました。同氏は、まず一般論としてコロナによりeコマースの成長が急拡大していること、宅配を中心とした小口配送が急拡大していること、またユーザー(受取人)と荷主(差出人)の要望が多様化していることを指摘。これに伴い、物流に関する社会課題が顕在化していると説明します。

  • 物流に関する社会課題

  • ユーザー(受取人)と荷主(差出人)の要望が多様化

こうした社会課題を解決すべく、楽天から日本郵便に提携を持ちかけたとのこと。両社の既存アセットを最大活用したうえで、デジタル化による顧客体験を向上し、同時にデジタル化による業務改善を実現していくと説明します。

  • データやAIを活用した、より利便性の高い「受け取りサービス」と、より効率の高い「配送システム」の構築へ

具体的な例として「もう少し荷物の到着をお待ちいただけたらポイントを差し上げます、荷物をまとめて配送可能でしたらポイントを差し上げます、といった取り組みも考えていけるんじゃないか」と小森氏。また、次世代技術の「自動倉庫」「ドローン」「ビッグデータ+AI」「自動走行ロボット」なども活用していく考えです。

  • 物流施設内では「自動倉庫」「ビッグデータ+AI」を、山間部や離島では「ドローン」を、公道では「自動走行ロボット」を活用していきたい考え

将来的には、新たな物流プラットフォームの共同事業化(つまり合弁会社)の設立も視野に入れていると話していました。

  • 新たな物流プラットフォームの共同事業化も検討していきます

楽天と日本郵便の提携、課題やメリットは

質疑応答では、楽天と日本郵便の戦略的提携における課題やメリットについて話が及びました。

課題と相乗効果について聞かれると、日本郵便の衣川氏は「現在、物量が早いスピードで増加しています。このペースで増加していくと、処理能力が追いつかなくなる可能性もある。私たちの内部では、持っている情報を早い段階で利用できないか検討しています。例えば、荷物を引き受けた段階で配達の情報を早めに伝えられれば、各所で様々な準備ができる。また、楽天様のお客様が品物を購入する段階でデータ連携できれば、もっと早く準備できる。楽天様では、需要の予測もしています。この時期にこのくらいの荷物がある、とあらかじめ分かるのであれば、対策も立てやすい。3月に向けて、実際にどこまで効果が期待できるか、詰めていきたい」と説明しました。

三木谷社長は「私も、楽天スーパーセールで10個くらい商品を購入して、翌日から家のピンポンが鳴りまくることがあります。必ずしも、いますぐ必要なものではないことも。また『鬼滅の刃』の新刊が出るようなとき、誰が買うか、あらかじめ分かっている部分もある。つまり、データが勝負になります」との見方を説明。続けて「金融では、キャッシュレス化がすごい勢いで広がっています。我々は銀行、カードもデジタルでやってきているので、日本郵便様にもそのノウハウを活用いただけるのではないか」と話していました。

  • フォトセッションの様子