GRUS-1Dだけが別名を持つ理由は?
今まで、同社は10kg~200kgの5機の衛星を開発し、運用してきたが、いずれも一品モノだった。それに対し、今回のGRUSでは、同型機を初めて「量産」。これも、同社にとっては大きなチャレンジだった。宮下直己CTOは、「初の量産製造により、大きな知見が得られた」と述べる。
従来は、「宇宙機設計グループ」が設計・開発・テストまですべてを担当していた。一方、今回は「デジタル製造推進グループ」(DMAG)を新設。今後の本格的な量産を見据えた専用チームを作り、設計グループと量産グループが密接に関わりながら、衛星を開発していく体制を整えたという。
今回のGRUS衛星4機の製造は、今後の量産のための貴重なデータ取りにもなった。製造のすべての工程において、コストや時間を可視化。宮下CTOは、「今後はこれを最適化・洗練化することで、新しい量産が可能になる。人間の習熟度だけではなく、AIなどのデジタル技術も活用し、デジタル量産で世界に挑戦していきたい」とした。
ところで、今回の4機の中で、GRUS-1Dは福井県民衛星「すいせん」でもある。すいせんは、福井県が所有。福井県の上空では、福井県が優先的に使用するが、それ以外の場所では、AxelGlobeの1機として活用される。
この手法は、福井県、アクセルスペースの双方にメリットがある。アクセルスペースは、GRUS衛星の数を増やせるし、福井県は、衛星1機のコストで高頻度の観測が可能になる。
中村CEOは、「自分では1機しか持っていなくても、バーチャルに5機10機使える。衛星のシェアリングエコノミーのようなものを実現できる」と説明。「各都道府県が1機ずつ持てば、それだけで50機になる。民間企業でも、こういう形での参画はあり得るのでは」と、今後の拡大に期待した。