2020年も残すところわずかとなりました。今年は新型コロナウイルスにより自粛生活を余儀なくされる時期もあり、世界的に景気の低迷が続いています。一方で景気の下支えのための金融緩和による株式市場は活況となり、日経平均株価はバブル以来の高値をつけています。

ニュースなどを目にする中で株式市場へ興味がわいてきた方も少なくないのではないでしょうか。今回は3カ月に1度発行される会社四季報から銘柄を見つけるためのヒントをご紹介します。

  • 発売されたばかりの会社四季報新春号をチェック!

「会社四季報」とは

会社四季報とは、上場企業の業績や上場している金融商品に関する情報が記載されている定期刊行物です。東洋経済新報社より3カ月に1度、3月、6月、9月、12月の年間4回発行されています。

そんな四季報は、投資家の中で欠かせないツールの1つ。四季報の発売前後には、期待の銘柄が動意(株価に動きがなかった状態から少しずつ動き始める状態)する”四季報相場”が発生したり、SNSなどで投資家による四季報を題材とした銘柄の意見交換が行われたりしています。

四季報を使った銘柄探しの基本

個別の企業に関する情報が満載の会社四季報ですが、まずは業種ごとの景気動向を見ると、どの業種の企業を特に注目したら良いか探る手掛かりとなります。

業種ごとの成長性を事前に把握しておこう

業種ごとの景気動向は、本編6ページ目付近の「業種別 業績展望」というページで確認できます。記載されているのは、業種別における前期・今期・来期の売上高や利益の増減率です。

試しに本業での利益を表す営業利益に注目してみましょう。12月16日に発売された四季報新春号によれば、今期予想で多くの業種が減少となる中、情報・通信業が107.2%、医薬品が32.1%の増加と目立って好業績であることがわかります。

また来期予想に目を向けると、一転して増加の業種で埋め尽くされているのですが、輸送用機器と鉱業が300%以上、繊維製品が95.0%、サービス業が71.0%の増加と高い増加率が予想されています。

このように、事前に業種ごとの成長性を把握することで、個別企業を見る際のインプットとなるでしょう。

大化け株を狙うなら"時価総額の小さい企業"を

業種ごとの景気動向が確認出来たら、いよいよ個別銘柄を見ていきます。せっかく投資をするのであれば、株価が10倍になる”テンバガー”など大きな成長が見込める銘柄を探したいところ。そこで注目したいのが「時価総額」です。

「時価総額」とは、簡単に言えば"企業を丸ごと買うことができる"金額のこと。この時価総額は株価×発行株式数で表されます。

これを前提に"テンバガー"がどういう状態か見ていくと、例えばトヨタ自動車は約25兆円の時価総額が250兆円、増加額でいうと225兆円にもなる状態を指します。

一方で時価総額が100億円の企業であれば、10倍になったとしても1,000億円、増加分は900億円です。

つまり10倍株を狙うには時価総額の比較的小さな企業を狙う方が、確率が高そうであるように思いませんか?

10倍を狙うのは難関ですが、2倍・3倍など大きな上昇を狙う場合でも、時価総額の大きさの観点から銘柄を探してみることをオススメします。

「会社四季報 2021年新春号」で発掘した注目の銘柄はコレだ!

それでは、実際に今後注目の銘柄を最新号の四季報から探してみましょう。

ここからの探し方は人それぞれですが、私は企業のページに記載されている「業績記事・材料記事」「業績数字」そして財務情報の中でも先ほど触れた「時価総額」に注目して、成長しそうな銘柄のスクリーニング(ふるい分け)を行うようにしています。

  • 筆者が注目するポイントはこちら(会社四季報 株アプリのプレスリリース画像を引用し、筆者が注釈を追加。株アプリは会社四季報のスマートフォンおよびタブレット向けアプリで、銘柄ごとに会社四季報の最新号の紙面を閲覧することができる)

「業績記事・材料記事」の部分には、過去との比較と四季報前号予想との比較で2パターンの見通しが書かれています。それぞれ見出しが用意されていて、最高益や急拡大など業績の勢いを表す言葉や、DX、コロナ対応など、そのときどきの情勢を表す言葉が記載されています。

ここではDXなどの短期的なトレンドに乗っているかや、介護・医療分野で中長期的に可能性のありそうな取り組みをしているかなどをチェックするといいでしょう。

また業績数字の部分では成長率を見ています。目安としては20%~25%くらいの増加率であると期待が持てるのではないでしょうか。なぜかというと20%~25%の成長率が安定して3~4年続くと2倍の成長となるからです。

  • ここからは僕の気になる銘柄をご紹介します!

このような観点から2021年新春号を一通り見た中で目に留まった銘柄はこちらになります。

キャリアリンク(6070)
官公庁や大手企業向けにビジネスプロセスの業務請負などを行っている。マイナンバー等のBPO案件の受注が好調であることから、政府が改革を進める中で今後も期待が持てる。記事の見出しにも【急拡大】が使われているほか、業績面でも中間決算の時点で営業利益ベースでは昨年の通期の値を超えており急成長をしている。また時価総額も200億円台と大化けの可能性を秘めている

アンビスHD(7071)
有料老人ホーム「医心館」を中心展開し、慢性期・終末期の看護ケアに注力している。ホスピス施設の増設も予定しており、記事の見出しにも【成長加速】が使われており、見出しの通り、業績面でも2020年9月期の営業利益が前年比100.8%増の18.26億円と急成長し、来期も25%以上の成長が見込まれている。業種としても65歳以上の人口が28%を超えている日本において、中長期的にも期待できる

コロナ禍という困難の中でも成長を続ける企業を探すのは宝探しのような面白さがあります。また企業分析に挑戦することで社会の経済の動きを短期的、長期的の両面から把握することにもつながります。

いままで投資に馴染みのなかった方でも、年末年始に四季報から気になる銘柄を見つけ、2021年に投資家として第一歩を踏み出す準備をしてみてはいかがでしょうか。

Finatextグループ アナリスト 菅原良介

1997年生まれ、Z世代のアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科に在学中は「株式投資サークルForward」の代表を務め、大学生対抗IRプレゼンコンテストで準優勝を獲得。2年間の長期インターンを経て、2020年Finatextに入社。現在はFinatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当。コミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターも務める。