ホンダが軽自動車「N-ONE」をフルモデルチェンジして発売した。あえて見た目を(ほぼ)変えないという異色のモデルチェンジを経た個性派軽自動車だが、販売の出足は好調な様子。売れている色の内訳は、いかにも個性を重視するクルマらしいラインアップだ。
実用性よりも趣味性を選んだ軽自動車
N-ONEは2012年11月に発売となったホンダの軽自動車。今回のフルモデルチェンジで2世代目に進化した。モデルチェンジを経た新型だが、「N360」を思わせるデザインはほとんど変更なし。ただ、中身は大きく変わっていて、プラットフォームは新型だし、最新の安全運転支援システム「Honda SENSING」は標準装備となっている。
なぜ、デザインを変えなかったのか。ホンダ 日本本部 商品ブランド部 商品企画課 チーフの矢野達也さん(マーケティングを担当)は、「営業の観点からすると、デザインが変わった方がお客様にも(先代との違いを)説明しやすいのですが……(笑)」としつつ、「開発当初のデザインスケッチでは形を変えようというアイデアもあったのですが、最終的には開発陣も含め『これが一番いいね』ということで一致したので、方向性は早い段階から決まっていました」と説明してくれた。販売現場や顧客からも、「形は変えないで、とにかくHonda SENSINGを搭載してほしい」との声が多かったという。
背が高くて箱型の実用的なデザインが増えている軽自動車の世界だが、N-ONEは前から見ても横から見ても台形で、ミニカー的なキュートさがある。ミニやフィアット「500」を思わせるような感じだ。軽自動車は規格でボディサイズが決められているため、小さな空間を目いっぱい使いたいと思えば四角くしたくなるのが人情だと思うのだが、そこをぐっとこらえて(いるかどうかまでは分からないが)デザインコンシャスなN-ONEを作り、クルマに個性を求めるユーザーに訴求しようとしているのだ。
それに、より実用的な軽ハイトワゴンが欲しいのであれば、ホンダには「N-WGN」というクルマがある。以下、矢野さんの説明だ。
「2012年の発売時、(スライドドアではなく)ヒンジドアの軽ハイトワゴンはN-ONEしかなかったので、そういったクルマを求めるお客様にご好評をいただいて10万台くらいは売れたのですが、N-WGNが登場すると、日常の使い勝手を重視される方はそちらを選ばれるようになりました。N-ONEをお買い上げになるお客様は、とにかくデザイン、それとカラーで選んでいただいているケースが多いです」
モデルチェンジで導入となったマニュアルトランスミッション(MT)車も、N-ONEに合っていると思う。軽自動車の中でも趣味性の高いクルマだから、運転を楽しむための道具として、MTが選べるというのはいいことなのではないだろうか。ホンダ ものづくりセンター鈴鹿 完成車開発課 アシスタントチーフエンジニアの津田昌弘さんも「先代のN-ONEにはMT仕様そのものがなかったのですが、かわいらしさの中にも走りの楽しさがあるクルマなので、MTはマッチしていると思います」と話していた。
N-ONEの販売台数は発売日から1カ月後の12月20日時点で8,000台超。グレードの内訳はオリジナル34%、プレミアムおよびプレミアムツアラーが計37%、RS29%だった。人気のカラーは、オリジナルの上位3色が「プレミアムアイボリーパールⅡ」「フレームレッド」「サーフブルー」。プレミアムおよびプレミアムツアラーは1位が「ブリティッシュグリーンパール」で、RSは「プレミアムイエローパールⅡ&ブラック」が1位、「サンセットオレンジⅡ&ブラック」が3位となっている。黒、白、シルバーが上位を占めていないところが、いかにもN-ONEらしい感じだ。