スーパー戦隊シリーズ最新作『機界戦隊ゼンカイジャー』(2021年3月7日放送開始)のメインビジュアルが12月21日に発表され、特撮ファンからの注目を集めた。
『機界戦隊ゼンカイジャー』とは、『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)を第1作とする「スーパー戦隊シリーズ」の第45作目。現在放送中の第44作目『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)の後番組として、テレビ朝日系全国ネットで放送される。
今回の『機界戦隊ゼンカイジャー』でひときわ目をひくのは、そのヒーローキャラクターのインパクトの強さだろう。中央にいる「ゼンカイザー」は『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャーを思わせるマスクで、その額には「45」の数字が輝いている。そして彼の背後には、等身大ヒーローというより"巨大ロボット"を思わせる無骨なデザインのキャラクターが4体、思い思いのポーズを決めている。人数的には「スーパー戦隊」の基本ともいえる「5人のヒーロー」には違いないのだが、5人の見た目の個性が従来以上に"強すぎる"のが『ゼンカイジャー』の最大の特徴といえるかもしれない。
現在発表されている資料によれば、ゼンカイザーがチーム唯一の「人間」ヒーローであり、そこに4体の「ロボット」ヒーローが加わって「戦隊」を結成するとのこと。これまでにも、1人の現代人と4人の未来人がチームを組んだ『未来戦隊タイムレンジャー』(2000年)や、"殿"のレッドに4人の家臣が仕える『侍戦隊シンケンジャー』(2009年)、1人の人間と4人のジューマン(異世界ジューランド出身)という編成の『動物戦隊ジュウオウジャー』(2016年)など、センターに位置する"レッド戦士"と仲間たちの立ち位置を変えるという試みは何度か行われていたが、ここまで"見た目"をはっきり変えたのはゼンカイジャーが初。この大胆ともいえるヒーローキャラクターがどのような活躍をするのか、大いに興味が持たれる。
ゼンカイザーと共に悪と戦う4体の機械生命体(ロボット)、ゼンカイジュランは『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)の"大獣神"、ゼンカイガオーンは『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001年)の"ガオキング"、ゼンカイマジーヌは『魔法戦隊マジレンジャー』(2005年)の"マジキング"、ゼンカイブルーンは『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006年)の"ダイボウケン"をベースにデザインされたものだという。
かつてない「歴代"戦隊"ロボット」オマージュの「スーパー戦隊」というべき『機界戦隊ゼンカイジャー』に期待をかけて、ここからは「スーパー戦隊シリーズ」で大活躍した"巨大ロボット"の変遷を追いかけてみたい。
戦隊巨大ロボットのはじまり
スーパー戦隊シリーズで初めて巨大ロボットが登場したのは、第3作『バトルフィーバーJ』(1979年)。もともと東映特撮テレビ作品では、『ジャイアントロボ』(1967年)『大鉄人17』(1977年)など、人類を守って悪と戦う"巨大ロボットヒーロー"というジャンルがあり、いずれも好評を博していた。70年代半ばになると、『秘密戦隊ゴレンジャー』や『ジャッカー電撃隊』(1977年)、そして『アクマイザー3』(1975年)といった等身大ヒーロー作品の中で「メカニック特撮」の活躍が目立つようになり、矢島信男特撮監督率いる「特撮研究所」スタッフによる珠玉の特撮映像がヒーローの戦いを盛り上げる働きをしていた。その流れをより発展させようと、『スパイダーマン』(1978年)では等身大ヒーローのスパイダーマンが巨大ロボット・レオパルドンに乗り込み、巨大化したマシーンベム(怪人)と格闘戦を行う特撮シーンがクライマックスを彩るようになった。
『バトルフィーバーJ』では、70年代「特撮ヒーロー」のトレンドというべき「巨大メカニック特撮」の魅力をパワーアップさせるべく、当初から「等身大(チーム)ヒーローと巨大ロボットを融合」させるべく、企画が立てられた。しかしなにぶん初めての試みであることから、巨大ロボット=バトルフィーバーロボのデザインワークは難航し、完成までに相当の時間がかかってしまった。デザイン決定と造型が予定より遅れたことから、初期製作エピソード(第1~4話)では「巨大ロボ建造中」という設定で、敵組織エゴスとバトルフィーバー隊で設計図やロボ情報の奪い合いをするアイデアが生まれ、ロボットの特撮シーン撮影のスケジュールを調整したという逸話が残っている。
満を持して第5話から登場したバトルフィーバーロボは、戦国武将の甲冑をモチーフとした無骨なデザインが子どもたちの興奮を誘い、たちまち人気を集めた。空中を飛ぶ万能戦艦バトルシャークが2つに分割し、その中からロボットが出撃するといった、メカニックと単体ロボットの"コンビネーション"も好評だった。『バトルフィーバーJ』は、以後の東映特撮ヒーローに「等身大ヒーロー+巨大メカ(ロボット)」のパターンを完全に定着させた作品だった。
『バトルフィーバーJ』のヒットを受けて企画された『電子戦隊デンジマン』(1980年)では戦闘機デンジファイターから変型する「ダイデンジン」、『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)では2機の変型メカが合体する「サンバルカンロボ」と、シリーズが続いていくごとに巨大メカと巨大ロボットの出番が多くなり、ユニークな変型・合体システムが取り入れられて、子どもたちの興味をひいた。
ドラマを背負う巨大ロボ
『科学戦隊ダイナマン』(1983年)のダイナロボまで、スーパー戦隊シリーズの巨大ロボットは"巨大化した敵"を倒すための"切り札"として絶対的な強さを打ち出していた。巨大ロボットの在り方が変化してきたのは第8作の『超電子バイオマン』(1984年)。この作品では、500年前に滅亡したバイオ星から地球にやってきたバイオロボが、物語の"きっかけ"を作る重要な役割を担った。バイオロボは勇敢な若者たちに浴びせた「バイオ粒子」を受け継ぐ子孫たちを見つけ出し、新帝国ギアと戦う戦士に選んだ。スーパー戦隊シリーズで初めて"意志"を備えた巨大ロボットとして、バイオロボは重要な存在だった。
第10作『超新星フラッシュマン』(1986年)では、フラッシュマンの操縦するフラッシュキングが、改造実験帝国メスの獣戦士によって"大破・敗北"するショッキングな出来事が起こった。巨大化した獣戦士に対抗するすべを持たないフラッシュマンの危機を救ったのは、レー・バラキが英雄タイタンから受け継いだ巨大トレーラー型ユニット「フラッシュタイタン」だった。『フラッシュマン』はスーパー戦隊シリーズの歴史で初めて「2号ロボ」が登場した作品であり、これ以降は1号ロボの仲間として2号、3号ロボがかけつけるパワーアップ展開が子どもたちを興奮させることになった。
第12作『超獣戦隊ライブマン』(1988年)では、1号ロボ・ライブロボと2号ロボ・ライブボクサーが「合体」し、スーパーライブロボとなって強敵を打ち破った。メカニックが変型してロボになり、さらにロボ同士がスーパー合体して最強形態になるというパターンはここからスーパー戦隊シリーズに採用され、さらなるバラエティに満ちた特撮カットが生みだされた。第13作『高速戦隊ターボレンジャー』(1989年)では、5台のターボマシンがターボロボに合体し、さらに大型基地ターボビルダーがターボロボ(1号ロボ)とターボビルダー(2号ロボ)を同時に格納するという、超スケールの合体ギミックまで生まれた。戦闘シーンのクライマックスでのみ存在感を発揮するのではなく、ヒーローキャラクターと同じようにドラマを背負う存在にまで高まった巨大ロボット。これが80年代後半~90年代にかけてのスーパー戦隊シリーズの"進化"のひとつだといえるだろう。
メカから"神"へ。そして"合体"への挑戦
ファンタジーRPG要素を取り入れた意欲作・第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)では従来の巨大メカニック、巨大ロボットが出動するのではなく、ジュウレンジャーが"守護獣"と呼ばれる恐竜型の"神"を召喚するという、新しい概念が作り出された。この"ファンタジー路線"はスーパー戦隊シリーズの可能性の幅を拡げる役割を果たし、以後のシリーズにも自由度の高い"巨大戦士"がぞくぞく登場することになった。第22作『星獣戦隊ギンガマン』(1998年)では5体の星獣たちがメカニカルな「銀星獣」に変身してからギンガイオーに合体していたが、第25作『百獣戦隊ガオレンジャー』の"パワーアニマル"は元の姿を活かしつつ合体を行い、精霊王ガオキングとなって活躍した。
『百獣戦隊ガオレンジャー』で試みられた「両手、両足を構成するパワーアニマルが自由に換装できる」というアイデアによって、ガオキング、ガオマッスル、ガオハンターにはさまざまな合体バリエーションが存在し、巨大ロボット(巨大戦士)の魅力をさらに高めた。その後も、多くの巨大ロボットが歴代スーパー戦隊ヒーローと一緒に、凶悪な敵を粉砕するべくさまざまな"力"を身に着け、激しい戦いを繰り広げてきた。第44作『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)では、輝く宝石「キラメイストーン」が各種マシン=魔進に変型し、合体してキラメイジン、キングエクスプレスザビューン、ギガントドリラー、グレイトフルフェニックスといった巨大ロボットに変型し、キラメイジャーたちのよき相棒として大活躍している。
スーパー戦隊シリーズ最新作『機界戦隊ゼンカイジャー』では、今まで以上に「(巨大)ロボット」にスポットをあてたストーリーが展開されるのではないだろうか。今後の作品情報にも大いに期待したい。
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