祥伝社は11月1日、『桐谷さんの株主優待のススメ』を刊行した。著者の桐谷広人さんは、元プロ棋士で、現在は365日株主優待を活用して暮らしている。

本書では、「買うならここから。今こそ買うべき銘柄」、「儲ける人はこう使う! 3倍トクする優待の使い方」などのノウハウが、会話口調の親しみやすい文章でたっぷり盛り込まれている。

さきごろ、出版記念トークライブが開催され、桐谷さんにお話をうかがう機会を得た。有益な情報をまとめたので、ぜひお目通しいただきたい。

  • 元プロ棋士で、現在は「株主優待を活用して」暮らす桐谷広人さん 提供:祥伝社

人ごとでなく、あなたがやるべき!

桐谷さん「私も以前、株は怖いと思っていました。値上がりを見込んで株を買う株式投資なんて、なかなかうまくいかないわけですよ。例えば専門家が『この株がいい』と言っていても、実際に利益を出すのは難しい。それより、人生を楽しむための投資がいいのではと考えたわけです。それが、株主優待です。

株を発行する企業は、株を持つ株主に対して、事業で得た利益を還元する配当金や株主優待を提供しています。配当金とは、株数に応じて株主に支払われるもので、株を多く持っていないとたくさんもらえません。対して、株主優待の多くは、保有株数の影響を受けません。

たいてい1単元保有から優待を受けられ、例外はありますが、その内容は2単元、3単元と増えても変わらないことが多いのです。つまり、10万円分の株を持って1,000円分のクオカードをもらえる場合、20万円分の株を持ったからといって2,000円分のクオカードになるわけではありません。

5万円で優待株が買える企業は、100以上あります。優待株としての利回りでは、4%以上の企業も100社以上あります。中には利回り10%、配当5%などといったものもあります。そういう優待株を買ったとすると、クオカードが届いて、それを使ってコンビニで買い物をすれば、額面だけの節約ができることになります」。

つまり、資金力に自信がない人でも、株主優待のある株を買えば高い利回りが得られるというわけだ。

  • 株主優待で取得したものがたくさん 提供:祥伝社

株主優待で節税もできる?

株式投資では、配当金に対して約2割の税金が課税されるため、満額を得ることができないが、株主優待品であればそのようなことはないと言う。

桐谷さん「配当金が2,000円としたら、400円の税金が取られて1,600円しか得られません。ところが、株主優待で、例えば2,000円分のクオカードなら税金がかからず、2,000円が丸ごと手に入ることになります。

それから、株主優待では、株を長く持っていると優待品をグレードアップしてくれる企業があります。証券取引所で売買できる上場企業が3,700社ぐらいあり、その約4割の1,500社ほどが株主優待を行っています。そして、その約3分の1に当たる500社が長期保有に対して優遇制度を設けているのです。

例えば、最初に株主になった年の1年目は1,000円のクオカード、2年目は2,000円分、3年以上だと4,000円といった具合ですね。また、以前は口座を作るのに手数料、売買手数料に最低でも2,500円ほどと消費税がかかっていましたが、今は手数料ゼロのネット証券もあります」。

お金の損得ではなく豊かな人生を楽しもう

以前は、値上がりを期待して株式投資をして、日々ハラハラドキドキしていたという桐谷さん。今は、お金の損得にとらわれず、人生が楽しそう。

桐谷さん「プロ棋士をしながら株をやっていた時は、儲かると気が緩んで試合に響くし、値下がりすると頭が痛い。だから、値上がりで儲けようと思わず、優待をいただいて人生を楽しむための投資をお勧めしています。

4%以上の利回りがつく銘柄は500ぐらいあり、その中から欲しいものを選び、最初は5万円ほどで一つ買う、余裕ができたらもう一つ、といったところから始めてはいかがでしょうか。20万円ほどの予算で、4万ぐらいの株を5つほど買うと、リスクが分散され、バランスが取れます」。

今は、5万円を定期預金しても金利は0.002%と、1年預けても1円ほどしか利息がつかないことも。優待のある株なら、カードや特産品などが得られて生活が楽しくなり、利回りが得られることもある。

取材協力:桐谷広人(きりたに・ひろと)

365日株主優待で暮らす株主優待家。プロ棋士七段。
現役時代は「コンピューター桐谷」の異名を持つ。1984年、東京証券協和会将棋部の師範をしていたことをきっかけに、株と出会う。独学で株を学び、リーマン・ショックの前は時価総額3億円の金融資産を保有していた。現在は株主優待のある銘柄を中心に運用し、現金をほとんど使わない生活を続けている。