京阪電気鉄道は20日、中之島駅にて「5000系車両展示 / 座席昇降実演観覧会」を開催した。5扉車として知られる5000系が誕生50周年を迎えるにあたり、「5000系誕生50周年記念イベント」の一環で実施。全国的にも珍しくなった5扉車をひと目見ようと、多くの鉄道ファンらが集まった。

  • 京阪電気鉄道5000系。2020年に誕生50周年を迎えた

    2020年に誕生50周年を迎えた5000系

5000系は1970(昭和45)年、大阪方のラッシュ時に対応するため、日本初の本格的な多扉車として登場。1両あたり5扉に増やし、うち2扉は朝ラッシュ時間帯のみ使用。それ以外の時間帯は扉を締め切った上で座席が設けられる。

最終的に7編成製造された5000系は、長らく京阪本線を中心に活躍。1998(平成10)年からリニューアル工事を受けた。現在も4編成が在籍しており、今年、誕生50周年を迎えることになった。

当日は一般参加者向けの観覧会に先立ち、報道関係者向けに座席昇降の実演が行われた。5扉のうち2扉が「ラッシュ用ドア」で、ドア前に設けられた座席が昇降する。アナウンスに合わせ、「ウィーン」という音とともに座席がゆっくり上がる。上部に収納されるまでの時間は30秒ほど。続いて座席が下がり、朝ラッシュ時間帯以外の運用と同じ3扉仕様となった。座席が昇降する車内を見渡しながら、「座席が動く」というアイデア自体に感嘆した。

  • 座席昇降の実演がスタート

  • 30秒ほどで「ラッシュ用ドア」前の座席が上がる

  • 「ラッシュ用ドア」前の座席が扉の上部に収納される

  • 「ラッシュ用ドア」前に座席が設けられた車内

  • 昇降できる座席は2扉分で、全座席が昇降できるわけではない

  • 「ラッシュ用ドア」前の座席が収納された状態の車内

  • 車外から座席昇降作業を見る

このユニークな座席昇降は、登場当時、乗車率200%を超す朝ラッシュ時間帯における円滑な乗降と、着席サービスが重要な昼間時間帯の需要の両立を狙い、考え出されたという。座席昇降のシステム自体はシンプルであり、故障は少ないそうだ。以前は朝ラッシュ時間帯の終了後、終着駅でも座席昇降が行われ、利用者も車外から座席が降りる様子を観察できた。現在は車庫構内または営業終了後に駅構内で行われるため、昇降の様子を見られる機会は少ない。

長年にわたり京阪電車のラッシュ時間帯を支えてきた5000系だが、京橋駅でのホームドア設置工事にともない、引退が迫っている。3扉仕様であっても他の車両と扉の位置がずれるため、ホームドアの運用に支障を来すという事情が引退の背景にある。来年1月30日のダイヤ変更に先立ち、1月29日をもって5000系の5扉運用が終了。その後も5000系自体の運用は継続されるが、順次引退する予定となっている。

  • 5扉が開いた状態の外観

  • 3扉が開いた状態の外観

  • 5000系は他の車両と扉位置が異なるため、乗車位置ステッカーと扉との間にずれが生じる

1月29日までは通常通り、全4編成が朝夕時間帯を中心に主に準急以下の種別で運用に就く予定。1月24日まで、5000系の全編成に記念ヘッドマークが掲出される。「5000系誕生50周年記念スタンプラリー」も1月24日まで行われ、京橋駅、萱島駅、淀駅、出町柳駅の4駅で記念スタンプを集めると、数量限定・先着順で5000系をデザインしたオリジナルマスクケースがもらえるとのことだ。