NTTドコモは18日、1,000円値下げを含む、既存料金プランの改定を発表した。5G対応の料金プラン「5Gギガホ」新プランは月額6,650円と1,000円引きに、4G対応の「ギガホ」新プランは600円引きの月額6,550円となる。改訂は2021年4月1日から、新プランとして提供。ギガホの値下げによって、4G、5Gへの移行、データの利用促進を図りたい考えだ。

  • ドコモの料金プランは複数のコンセプトで展開。既存料金プランはプレミアという位置づけ

ドコモでは、新料金プラン「ahamo」を3月から提供するが、若者世代を中心に契約からアフターサポートまでオンラインで完結すること、一部サービスを省くことなどで、1カ月20GBまで月額2,980円という価格を実現。これに対して、ショップでのフルサポート、フルサービスを利用できる既存プランの値下げを12月中に行うと発表していた。

  • ahamoと既存プランの位置づけ。既存の「ギガホ」系プランや、新発表の「はじめてスマホプラン」は特にファミリー層をターゲットにする

大容量データ利用者やスマホ初心者向けの料金設計

ドコモは、「一人一人のライフスタイルに合わせ、ドコモの中で複数のコンセプトで料金プランを展開する」(副社長執行役員・田村穂積氏)考えで、一人暮らしの若者を中心に、オンラインで手軽に契約、サポートを利用できることを求めるユーザーに対してahamoを展開。事前エントリーでは、当初の想定を上回る30万以上のエントリーがあったそうだ。

それに対してドコモでは、3Gユーザーがいまだに多く、大容量プランの利用者がそれほど多くない、という課題があった。そのため、「データをたくさん使う人、初めてスマートフォンを使う人が安心してドコモを使えるよう、フィットするよう料金プランを見直した」(同)という。

ドコモの井伊基之社長はahamoの発表会で、既存料金プランを「5Gへの利用促進を目指したプレミア」との位置づけを示しており、実際の名称も「5Gギガホ プレミア」「ギガホ プレミア」に変更された。既存のギガホプランは2021年3月31日に新規受付を停止する。

NTTドコモ料金プラン(月額)の比較

NTTドコモ 月額料金プランの比較
1GB 3GB 5GB 7GB 20GB 30GB 60GB 100GB 無制限
5Gギガライト / ギガライト 3,150 4,150 5,150 6,150          
ギガホ 7,150 7,150 7,150 7,150 7,150 7,150      
ギガホ プレミア 5,050 5,050 6,550 6,550 6,550 6,550 6,550    
5Gギガホ 7,650 7,650 7,650 7,650 7,650 7,650 7,650 7,650  
5Gギガホ プレミア 5,150 5,150 6,650 6,650 6,650 6,650 6,650 6,650 6,650
ahamo 2,980 2,980 2,980 2,980 2,980        
はじめてスマホプラン 1,980                
ドコモ料金プラン(月額・税別)の比較(「5Gギガホ プレミア」と「ギガホ プレミア」が太字、数字の単位は円)。料金は全て割引、キャンペーンを除く。はじめてスマホプランは5分間の音声無料付き、12カ月まで980円

5Gギガホ プレミアは、従来の月額7,650円が6,650円と1,000円割引に。さらに、ファミリー割引内の回線数に応じて割引が提供される「みんなドコモ割」で最大1,000円引き、ドコモ光とのセット割で1,000円引き、dカードでの支払いによる割引170円を合わせると、最安で4,480円から利用できる。利用が3GB以下の場合1,500円引きになるため、割引前で5,150円、割引を最大適用して2,980円となる。

  • 5Gギガホ プレミアは容量無制限。フルで割引を適用すると6650円が4480円まで割り引かれる

ギガホ プレミアは月額7,150円が6,550円へと割り引きになる。5Gギガホ プレミアと同じ割引が用意され、最安で4,380円になる。3GB以下の場合は同様に1,500円引きになるため、月額5,050円。最大割引を適用すれば2,880円だ。

  • ギガホ プレミアも同様に、フルで割引を適用すると4,380円になる

期間限定の割引はナシ、常時の安さを意識

期間限定の割引がない点も特徴で、「最初の6カ月」などの割引がない。そのため、「期間限定の割引を含めて最安値として比較されると、(他社のプランが)プレミアプランより安く見えるが、6カ月、1年後に高くなるのはどうかなと思って設計した」と 常務執行役員営業本部長の鳥塚滋人氏。

その代わり、「家族で使った場合にお得に使えないのかというニーズ」(同)に応える形で、みんなドコモ割とドコモ光セット割は継続した。これによって、囲い込みを強化して、他社への転出を防ぎ、転入を増やしたい考えだ。過度な囲い込みは総務省によって問題視されているが、通常価格でも1,000円引きとしたことで、過度な囲い込みにはならないと判断したのだろう。

  • 各種割引は期間限定ではなく、契約中は永続的に利用できる。期間拘束もない

標準で無制限、固定回線替わりにも使える

ドコモが弱い大容量ユーザーの獲得に向けて、データ容量の制限も緩和。これまで、5Gギガホは容量100GBで期間限定キャンペーンとして無制限としていたが、これを標準で無制限にした。テザリングも無制限。これまでの5Gギガホのキャンペーンの結果、「基地局、コア、サーバーなどネットワークへの影響は少ないということで戦略的に無制限にした」(鳥塚氏)という。

一人暮らしならこれだけで固定回線代わりにも使えるだろうが、「家庭なら安定した環境の光回線の方がいい。現在の(コロナ禍の)状況でドコモ光のユーザーも増えていく傾向にある」(同)という判断で、ドコモ光のユーザーも拡大できるとの判断だ。

4Gのギガホでも容量30GBでキャンペーン期間60GBだったが、ギガホ プレミアでは標準で60GBにする。ギガホ プレミアと5Gギガホ プレミアの価格差は100円しかなく、無制限のデータ容量を考えると5Gギガホ プレミアの方がお得感が高い。5Gスマートフォンが必要な点もあるが、5Gへの移行を促進するための戦略的な値付けとしている。

ギガライトやahamoとの違い、棲みわけは?

ドコモでは、いまだに3Gのフィーチャーフォンを使っているユーザーも数多い。これを4Gや5Gに移行するのが急務となっている。3Gユーザーは料金の問題で継続している人も多いことから、通信量1GB・5分以内の国内通話無料の月額1,480円プラン「はじめてスマホプラン」を新設。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行を促す。

  • 4Gや5Gへの移行を促すための「はじめてスマホプラン」。フィーチャーフォンユーザー向けに1年目は980円という価格に抑えた

3G契約のドコモユーザーだけでなく、他社3G契約からの乗換に際しても適用でき、dカードお支払い割と「はじめてスマホ割」を適用することで、1年目は月額980円、それ以降は1,480円で利用できる。データ容量は1GBまでだが、5分間までの国内通話が無料となる。4Gだけでなく5Gの利用も可能だ。

ドコモの4G、5G契約者のうち、ギガホ利用者は4Gが3割弱、5Gが4割超だと言う。今回の料金値下げは、これをさらに拡大することを狙っている。そのため、段階的従量制の5Gギガライト/ギガライトには値下げがない。

各種割引を除いて、5Gギガライト/ギガライトは1GBまでの利用で月額3,150円、3GBで4,150円。5Gギガホ プレミアは3GB以下なら5,150円、ギガホ プレミアなら5,050円となって、5Gギガライト/ギガライトと5Gギガホ / ギガホ プレミアの差は1,000円ほどとなる。ギガライトには1GBを上限とする「ギガプラン上限設定オプション」を提供したことで、ごく小容量のプランとして位置づけ、早期に3GBまでなら1,500円引きになるプレミアプランへの移行を狙っているのだろう。

  • 5Gギガライト/ギガライトは値下げはなく、すでに発表済みの「ギガプラン上限設定オプション」を提供するだけにとどまる

これによって、一人で利用し、店頭サポートが不要、オンラインですぐに契約できることを望むならahamo、店頭サポートが必要で、家族で利用することを前提とするならギガホ プレミア・5Gギガホ プレミア、ほとんど使わないならギガライト、3Gからの移行なら「はじめてスマホプラン」という棲みわけとなった。

これ以下のさらに低廉な料金プランも「今後発表」としており、複数の料金プランで幅広いニーズに応えたい考え。その意味では、ギガライトプランの利用を減らすことも狙っていそうだ。

値下げによる契約増に期待、さらに安いプランも「今後発表」

こうした値下げによって、「減収インパクトは一定額ある」(田村副社長)が、値下げによる契約増に加え、4G、5Gの大容量プランへ移行を促進することでカバーすることを目指す。

ショップではahamoと既存料金プランの違いを説明して、ahamoを希望する人にはオンラインのみという特徴を理解してもらってから、オンラインでの契約を促す。それ以降もショップでのサポートは受け付けずオンラインでの利用を求めるようにする。逆に言えば、ショップに来るユーザーに対しては、フルサポートを提供する既存プランを推奨するという形になるだろう。それによって、家族利用を促進することも期待しているとみられる。

とはいえ、通信分野だけでは今回の減収分をまかなえるとは考えていないようで、非通信分野をさらに強化する。特に、「金融・決済分野は大きな成長余地があるし、7800万ほどの会員基盤をベースとしたマーケティングソリューション、映像配信などエンターテインメント系のコンテンツ拡充する」(鳥塚氏)など、成長領域を拡大して収益の拡大を図る。

料金値下げに対してはドコモが先行した形だが、今後、残る3社も追随することになるだろう。特にKDDIとソフトバンクはメインブランドでの料金値下げをせざるを得ない。今後、各社の対応が注目される。