バルミューダが東京証券取引所マザーズ市場に上場しました。初値は公開価格を1,930円上回る3,150円。同社の代表取締役・寺尾玄氏は上場記者会見の席上で、初値については「ノーコメント」とし、「一刻も早く会社に帰って仕事すべきだと思う」としました。資金調達によるバルミューダの今後の展望について、寺尾社長の記者会見からレポートします。
2万円を超える高級トースター「BALMUDA The Toaster」、ホバークラフトやミニ四駆からヒントを得たコードレス掃除機「BALMUDA The Cleaner」など、話題の製品を次々と世に送り出しているバルミューダ。
バルミューダの創業は2003年。寺尾社長が1人でスタート。転機となったのは2010年のDC扇風機「GreenFan」シリーズです。独自の二重構造に羽根とDCモーターを採用し、「自然界の風のような気持ちいい風を送り出す扇風機」として人気を集め、累計50万台以上を販売。連続テレビ小説『半分、青い。』劇中の「そよ風扇風機」のモデルになりました。
2015年にはスチームを使って焼き上げるトースター「BALMUDA The Toaster」が登場。国内外で評価され、累計販売台数は100万台を超えています。
海外では、中国本土、香港、台湾、韓国、ロシア、ドイツ、北米など販路を広げています。特に韓国ではブランドイメージの確立に成功しており、空気清浄機の「BALMUDA The Pure」は日本に先駆けて韓国で発表したほど。
バルミューダの製品づくりは「既成概念にとらわれない自由な発想から始める」。寺尾社長をはじめとするクリエイティブチームが、自由なアイデアで製品を開発していくといいます。
同社の製品説明会は、いつも寺尾社長が登壇し、製品への思いを熱く語る点が印象的です。2015年の「BALMUDA The Toaster」記者説明会にて、寺尾社長が「ヨーロッパを一人旅したときのパンが美味しかった」「チーズトーストが好き」などと話をはじめたときは衝撃でした。
当時、筆者が参加していた製品説明会や発表会は、市場分析から始まって新製品のテクノロジーを説明することがほとんど。無意識にそんな定番スタイルを想像していたところに、まず寺尾社長の体験や思いが熱く語られたので驚いたものです。
バルミューダは「体験価値」を製品の軸として提案しているため、寺尾社長が自身の体験とからめてプレゼンをするのとわかったのは後のこと。創業者を中心に、自由にアイデアを出して作りたいものを作り、世に送り出してきたのがバルミューダです。
そんなカルチャーを持つバルミューダだけに、魅力である「自由なアイデア」部分は、上場によってどう影響を受けるのかが気になります。
「自由度が下がるとは思っていません。上場することによって難易度が上がると考えています」(寺尾社長)
さらに次のように続けます。
「改造した車に仲間と乗っていたのが、これまでのバルミューダ。これからは、バスを改造してお客さまが乗ってくる。そのお客さまたちは必ずしも安全を期待していないと私は考えています。なるべくケガさせることなく、ワクワクしてもらいながらすばらしい場所まで運転していかなければなりません。非常に困難。私としては一刻も早く会社に帰って仕事するというのが今の心持ちです」(寺尾社長)。
新規カテゴリーにチャレンジ
上場によって調達した資金の用途については、人材増強、システム・設備、広告・宣伝などに使う予定。特にバルミューダは商品力や口コミなどで売り上げを伸ばしてきましたが、今後はもっと幅広い層に向けたブランド認知のために、広告・宣伝への投資を増額する考えです。
新規カテゴリーの製品にも意欲的です。バルミューダの売上高は2003年創業後、2010年に「GreenFan」で空調家電、2015年に「BALMUDA The Toaster」でキッチン家電に参入。2010年から2015年にかけて、売上高が約11倍、2015年から2019年は売上高が約4倍と、製品カテゴリーを増やすことで成長してきました。今後も新製品を開発し、新しいカテゴリーにチャレンジしていくとのこと。
具体的にどんな製品という説明はありませんでしたが、2020年10月に行われた「BALMUDA The Cleaner」の説明会では「クリーナー事業で開発中のアイデアがある」という話が出ていました。2021年には新しいクリーナー製品が登場するかもしれません(憶測ですが)。
バルミューダの2019年12月期の売上高は108億円。2020年12月期は、巣ごもり需要によるキッチン家電が好調だったことから対前期13.7%増の123億円を見込んでいます。上場後のバルミューダが、今後どんな製品を開発するのか楽しみです。