PC製品を主力とする富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は、13.3型ノートPCとして世界最軽量となる「FMV LIFEBOOK UH」シリーズなど、意欲的な製品を市場に投入している。FCCLがレノボグループの一員となって、新たに事業を開始したのは2018年5月2日。FCCLの齋藤邦彰社長は、最初の会見で、新生FCCLがスタートした日を「Day1」とし、約3年後の「Day1000」で進化した姿を報告することを約束した。Day1000は2021年1月25日。この短期連載では、Day1から続くFCCLの歩みを振り返るとともに、Day1000に向けた挑戦を追っていく。
富士通クライアントコンピューティング(以下、FCCL)は、2018年5月に新たな体制下で事業を開始して以降も、「人に寄り添うパソコン」の実現に取り組んできた。それが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う新たな社会環境の変化において、個性的なパソコンとして評価を得ている。最たる例が、オンライン生活に最適なパソコンとしての仕様を搭載していた点だ。
2020年2月に政府が発令した全国一斉となる小中高校の臨時休校要請、2020年4月に発令した緊急事態宣言を受けて、リモートワークやリモート学習が拡大。在宅で仕事をしたり、授業を受けたりといったことが増加。さらには、おうち時間が増えたことは、趣味でパソコンを利用する機会を増やすことにもつながった。多くの人にとって、パソコンが、生活の中心に位置する存在へと変化してきている。これまでにないほど、パソコンの存在感は高まったといえるだろう。
FCCLの齋藤邦彰社長は、「FCCLは、独自の製品ポートフォリオを持ち、その広がりによって、人に寄り添うパソコンを実現してきた。そうした取り組みの結果が、新たな生活において、最適なパソコンの実現につながっている。FCCLのパソコンは、リモートワークにとどまらず、在宅学習や巣ごもり生活を楽しむといった用途を含めて、オンライン生活に最適な機能を搭載しており、その点が評価されている」と述べる。
では、FCCLのパソコンでどんな点が、オンライン生活に最適だといえるのだろうか。
一例として、FCCLの竹田弘康執行役員副社長兼COOは、主要なノートPCのディスプレイ上部に4個のマイクを搭載していることを示す。一般的なノートPCの多くは2個のマイクを搭載しているが、その倍だ。結果、ウェブ会議のマイク利用などで、高品質な音声収集につながっている(相手に聞こえる自分の声が高品質)。4マイクは、新型コロナウイルス感染症の拡大前に発売したノートPCでも採用しているものだ。
「ノートPCの中心から45度の範囲で計測すると、2個のマイクでは89.0%の音声認識率だが、4個のマイクでは92.4%に高まる。さらに90度の広範囲で計測すると、2個のマイクでは79.9%の音声認識率だが、4個のマイクでは87.5%の音声認識率。広角に音を拾うことができるため、ウェブ会議のとき姿勢を少し崩したり、資料を見るために顔の位置が変わっても、相手とのコミュニケーションが円滑にできる」(竹田副社長)
また、フルHDカメラの搭載によって、相手に見せたい商品や素材などを鮮明に表示したりもできる。オンキヨーとの協業で開発したスピーカーボックスと音響補正アプリケーション「Dirac Audio」の組み合わせは、音声が聞き取りやすいだけでなく、音楽や映像の再生で迫力のある低音を実現し、パソコンのサウンドとしては高い臨場感の音を楽しめるようになっている。
実はこれらの機能は、これほどの在宅ワークや学習機会が増えることを想定して実装したものではない。もともとはFCCLが、個人向けPCに標準でプリインストールしているAIアシスタント「ふくまろ」を活用するために搭載していたものだ。
ふくまろに話しかけると、PCで音楽や写真を再生したり、家族の顔と名前を覚えて、家族それぞれにあわせた会話をしたり、外出中に部屋の写真を送信してくれたりといった使い方ができる。ふくまろをいわば「もう1人の家族」として位置づけることを想定しているのだ。
FCCLでは、ふくまろを、パソコンが人に寄り添うために重要な役割を果たすと考えており、だからこそ、投資を続けてきた。そして、ふくまろを正しく動作させるためには、ユーザーの発話を正しく理解するために重要なマイク、家族の顔を正確に認識するために重要なカメラ、ふくまろの声を伝えるために高品位のスピーカーが必要だ。FCCLのパソコンに、優れたマイク、カメラ、スピーカーが搭載されていた背景には、「ふくまろ効果」があるのだ。それが、オンライン生活で求められるパソコン機能と合致した。ふくまろによって人に寄り添うパソコンを追求した結果が、在宅勤務や在宅学習などに最適なパソコンを実現したわけだ。
こうした機能の有用性が発揮されたのは、在宅勤務や在宅学習のシーンだけではない。ステイホーム下で、新たな挑戦を始めた人たちを支援することにもつながっている。
たとえば、東京・練馬のLiebeフルート音楽教室と、京都市の徳本早織フルート教室では、コロナ禍においてオンラインレッスンを開始。そこで、15.6型ディスプレイを搭載したLIFEBOOK NHシリーズを活用した。
Liebeフルート音楽教室の上塚恵理氏
「LIFEBOOK NHの明るく大きな画面に、口元や手元を間近に映すことによって、よりわかりやすいレッスンができている。従来のパソコンでは音割れが起きていたが、LIFEBOOK NHでは低い音から高い音まで滑らかに聞けて、対面レッスンとほぼ変わらないクオリティのレッスンになっている。
これまではリアルのレッスンしか選択肢がなかったが、突然の豪雨や夏の暑さ、冬の外出時の寒さなど、天候に左右されることなく、オンラインでレッスンを続けられる選択肢を提供できるようになった」
ボイストレーニング教室を運営する石原優子氏
「口の動きが良く見え、指導しやすい。また、重低音や音圧を重視したスピーカーのパソコンが多いが、LIFEBOOK NHのスピーカーは声の帯域がクリアに、輪郭が明確に聞こえる特徴を持っている。新型コロナウイルスをうつす心配も、うつされる心配もなく、自宅でレッスンが受けられる」
キッズダンス教室「mio Dance School」を主宰する長谷川美緒氏
「スマホやタブレットの小さな画面でオンラインレッスンをやってみたが、見づらくて難しいというのが印象だった。しかし、大画面ディスプレイを搭載したLIFEBOOK NHシリーズは見やすくきれいで、音も聞き取りやすかった。遠方に引っ越してしまったり、育児のためにレッスンに通えなくなったりといった場合も、オンラインレッスンなら気軽に参加できる。何年かぶりにダンスに復帰し、オンライン上でみんなと踊れると喜んでいる生徒もいる」
FCCLの齋藤社長は、「オンライン化は、会議や授業、飲み会のほか、診察や冠婚葬祭、お墓参りにまで広がっている。当初は、オンラインをオフラインの代替手段と考え、オフラインと同じようにできることが求められていた」と前置きしながら、「いまでは、オンラインで誰でもできるようにしたい、オンラインによって、これまでよりも高い効果がある使い方をしたい、という要望が増えている。オンラインに価値を感じる人たちが増えている」と指摘する。
そして、「顧客が求める『リアル以上』の価値とは何か、何で困っているのかを把握して、それをFCCLのパソコンに反映させていきたい。そこに、顧客の要望を実現できる国内開発、国内生産の強みが生きる」(齋藤社長)と語る。
FCCLは2020年10月以降、「ニューノーマライフ(New Normal Life)」という言葉を使い始めた(FCCLでは、ニューノーマルライフではなくニューノーマライフと呼ぶ)。ニューノーマライフとは、新型コロナウイルス感染症の拡大によって人を取り巻く環境に変化が生まれ、新しい日常が始まるなかで求められている、新しく自分らしい暮らしを実現することを指す。そして、New Normal PCによって、これからニューノーマライフを生きる人の想いに応えることを掲げる。
「ニューノーマライフの時代、誰もが自分にぴったりの1台(PC)と簡単に出会えるようになり、より自分らしい生き方を叶えていける未来の実現が求められるようになった。新しい日常で人が求めているのは、一人ひとりの新しい生活を、快適に、ワクワクさせられる新時代のパソコン。そうしたNew Normal PCを作りたい。
2020年10月に発表した新製品の開発においては、ユーザーの生活や使い方に寄り添えるものになっているのか、という点を徹底的に追求した。これはお客さまの声を反映し続けてきたFMVだからこそ、可能であったものだと自負している。スペックや機能だけでなく、自分がどんな風に暮らしたいか、どのように楽しむかを想像してもらえるパソコンを提供したい」(齋藤社長)
人に寄り添うパソコンの追求が、ニューノーマライフにおいて最適なパソコンにつながる。