上半期の新車販売はコロナ禍で苦戦したが、秋に入ると回復の兆しが見えてきた。依然としてトヨタが強いが、売れるモデルのキーワードは「コンパクト」と「SUV」にあるように思える。昨年登場したトヨタ「ライズ」は上半期に首位を奪取したが、これで満足しないのがトヨタのすごいところで、「ヴィッツ」後継の「ヤリス」ファミリーに「ヤリスクロス」という魅力的なSUVモデルを投入してきた。

今回は自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)が発表したデータをもとに、2020年11月の人気車ブランドを紹介。ダイハツOEM車「ライズ」と、本家トヨタ「ヤリス」のトップ争いに注目したい。

2020年人気車種、11月トップ10

順位 ブランド通称名 ブランド名 販売台数
1 トヨタ ヤリス 19,921
2 トヨタ ライズ 10,627
3 トヨタ アルファード 10,109
4 トヨタ ハリアー 9,897
5 トヨタ カローラ 9,653
6 トヨタ ルーミー 9,112
7 トヨタ シエンタ 7,187
8 ホンダ フィット 7,161
9 ホンダ フリード 6,864
10 トヨタ ヴォクシー 6,860

※軽自動車および海外ブランド車を除く

■1位:トヨタ「ヤリス」

国内で長年親しまれた「ヴィッツ」の後継モデルとして、輸出車名で刷新された「ヤリス」は、先代に恥じないグローバル・コンパクトカーとしての機能を実装している。トヨタが誇るTNGAプラットフォーム採用による優れた操縦性や燃費性能はもちろん、最新のカメラやセンサーを用いた駐車や衝突回避支援システムなどの安全技術も惜しみなく投入された。また、様々な派生モデルも展開され、8月に追加されたSUVモデルの「ヤリスクロス」も爆発的なヒットを記録している。

  • トヨタ「ヤリス クロス」

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■2位:トヨタ「ライズ」

「ライズ」はトヨタ傘下のダイハツによって開発・生産された「ロッキー」のOEM車だが、洗練された都市型クロスオーバーと、ハードなクロスカントリーのちょうど中間のデザインが人気を呼んでいる。5ナンバーサイズに堂々とした存在感と室内の広さを確保。エンジンは1リッター3気筒ターボのみでハイブリッドは持たないものの、車両価格や燃費性能などのコストパフォーマンスも非常に優れているモデルだ。

  • トヨタ「ライズ」

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■3位:トヨタ「アルファード」

今や大型高級ミニバンのカテゴリーではライバル不在の「アルファード」。トヨタ製ミニバンの旗艦にふさわしい風格や豪華な内装はもちろん、様々な最新の安全性能や、専任のオペレーターとリンクする「コネクティッドサービス」も用意されている。また、ビッグセダンの人気が落ちていく中で、今や「クラウン」のようなショーファードリブン(運転手付の高級車)としての役割も果たしている。

■4位:トヨタ「ハリアー」

流麗なクーペフォルムと高い質感の内装を持つ「ハリアー」は「高級クロスオーバーSUV」というジャンルのパイオニアだ。そのコンセプトは2020年6月に登場した4代目でもさらに磨きがかかり、発売早々トップ10内にランクインするほど。デザインだけではなく、高次元の走りを実現するTNGA新プラットフォームの採用や、最新の安全性能など、トヨタSUVの旗艦にふさわしい装備が与えられた。

  • トヨタ ハリアー

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■5位:トヨタ「カローラ」

トヨタのファミリーカーとして長い歴史を持ちつつも、ミニバンやハイブリッド、コンパクトカーなどの台頭で不遇の時期を過ごした「カローラ」。しかし、TNGAに基づいて刷新された12代目で再び人気モデルに返り咲いた。国内では流行のSUVモデルはまだ登場していないが、セダン、ハッチバック、ワゴンのボディタイプやガソリン/ハイブリッドのエンジン、多彩なグレードを展開することで、幅広い年齢層やニーズに応えている。

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「ヤリス」がぶっちぎりの独走、プレミアムカーもトヨタ勢のみ

トヨタ同門対決は本家の「ヤリス」がトップを独走し、上半期を制した「ライズ」を大きく引き離した。「ヤリス」がここまで伸びたのは、やはりSUVモデル「ヤリスクロス」の投入が大きいはず。ヤリスファミリーではあるが、無印「ヤリス」より立派な車格を持ち、ガソリンエンジンのみの「ライズ」と違ってハイブリッドの設定もある。価格帯も大きく離れていないので、「ライズ」の購入を検討していたユーザーが流れたことも考えられるだろう。

コロナ禍の上半期はコンパクトカーがトップ10を占めていたが、回復基調にあった秋以降からは、一人横綱の大型ミニバン「アルファード」や、モデルチェンジした「ハリアー」といったプレミアムモデルが上位にランクインした。しかし、やはりほかのメーカーはトヨタの牙城を崩すまでには至らず。コロナが収束しない中では、高価なメガヒットモデルは難しく、しばらくはコンパクトSUVブームが続くのではないだろうか。

※ブランド通称名とは、国産メーカーの同一車名を合算したものであり、海外生産車を含む
※上位台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含む(例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含む)