今や日本国内で軽自動車が占める比率は昔の比ではない。自動車メーカーとしては利幅の高い乗用車を売りたいが、なかなか景気回復の実感が沸かず、若者の自動車離れも叫ばれる中では、コストパフォーマンスの高い軽自動車の売り上げも無視はできないだろう。
現在はホンダの「N-BOX」が新車販売のトップを快走中だが、トヨタ傘下で軽自動車を長年手掛けたダイハツや、その宿命のライバルであるスズキにも意地がある。軽カーでは負けられない2社のモデルは絶対王者にどれだけ肉薄できただろうか? 全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)が発表した2020年10月の新車販売における人気車種トップ15をご覧いただきたい。
2020年軽自動車人気車種、10月トップ15
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | ホンダ | N-BOX | 16,052 |
2 | ダイハツ | タント | 13,099 |
3 | スズキ | スペーシア | 12,245 |
4 | ダイハツ | ムーヴ | 10,472 |
5 | ダイハツ | タフト | 7,471 |
6 | 日産 | ルークス | 7,069 |
7 | スズキ | ハスラー | 6,536 |
8 | ダイハツ | ミラ | 6,161 |
9 | ホンダ | N-WGN | 5,943 |
10 | スズキ | アルト | 5,325 |
11 | スズキ | ワゴンR | 4,902 |
12 | 日産 | デイズ | 4,543 |
13 | スズキ | ジムニー | 4,406 |
14 | 三菱 | eK | 2,498 |
15 | トヨタ | ピクシス | 1,863 |
※通称名については同一車名のものを合算して集計(アルト、ミラ、ムーヴ、タント、eK、プレオ、N-BOX、デイズ、ピクシスなど)
例)デイズルークスはデイズとして、2020年3月発売のルークスについてはルークスとして集計
■1位:ホンダ「N-BOX」
今やホンダの稼ぎ頭となった「N-BOX」は、近年人気のスーパーハイトワゴン。優しい丸形をイメージしたヘッドランプに、シンプルでクリーンなデザインを持つベースモデルのほか、精悍なメッキグリルにルーフスポイラー、シーケンシャルウィンカーといった流行の装備を満載した「カスタム」も用意されている。
スーパーハイトワゴンとしての装備は充分すぎるものだが、ホンダはアイディアが自慢のメーカー。燃料タンクを後部シートから前席床下に移した(特許技術:センタータンクレイアウト)ことで、室内空間を大幅に拡大するなど、独創技術でもライバルに差をつけている。
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■2位:ダイハツ「タント」
「N-BOX」に次ぐ2位はダイハツの「タント」。実は「タント」はスーパーハイトワゴンの元祖とも言えるモデルなので、ダイハツは「N-BOX」の独走を一番歯がゆく思っているはずだ。
4代目となる現行モデルには、ダイハツの新設計思想「DNGA」を第1弾として採用。これで得た優れた車体性能に加え、おなじみ大開口「ミラクルオープンドア」に、世界初の運転席ロングスライドシートを組み合わせて使い勝手を極めた「ミラクルウォークスルーパッケージ」などの革新的な機能を装備。もちろん、ダイハツの先進予防安全機能「スマートアシスト」も備えている。
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■3位:スズキ「スペーシア」
"ザ・家族の乗りもの"がテーマの「スペーシア」は、ファミリー層のニーズに応える様々な工夫がされたスーパーハイトワゴン。スイッチひとつで操作できる後部スライドドアや、室内の温度差を無くすスリムサーキュレーター、便利な収納スペースを多数設けている。
エンジンはマイルドハイブリッドの採用で発進や加速もアシストし、省燃費にも貢献。もちろん、安全性能も充実した内容だ。ワイドグリルの「スペーシア カスタム」やSUV調の「スペーシア ギア」といった演出も、軽に手慣れたスズキの成せる技だろう。
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■4位:ダイハツ「ムーヴ」
後部スライドドアに1,700mm超の全高を持つスーパーハイトワゴンと違い、「ムーブ」は一般的なヒンジドアを持つトールワゴン。同社の「タント」ほど室内は広くないものの、軽自動車としては必要にして充分なスペースを確保している。
全高を抑えたため巡行性能も高いが、「ムーヴ」はダイハツが大切に育ててきたブランドなので、軽自動車として最適なバランスに仕上げられている。派生モデルには、内外装に手を加えた「ムーヴカスタム」と、後席スライドドアにワーゲンバス風のレトロ感を醸し出すデザインの「ムーヴ キャンバス」がある。
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■5位:ダイハツ「タフト」
スマッシュヒットしたスズキの軽SUV「ハスラー」の対抗馬としてダイハツがリリースしたのが「タフト」。
デザインはどこか愛嬌のある「ハスラー」とは違い、無骨な直線基調。この堅牢さは見た目だけではなく、ダイハツの新設計思想「DNGA」で開発されたプラットフォームやエンジンによって高い車体性能を与えられている。そのほか、前席ルーフをガラスとした爽快な「スカイフィールトップ」もアウトドア派には嬉しい装備だ。
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12月のマイナーチェンジで引き離しにかかる首位の「N-BOX」
まだまだホンダ「N-BOX」は強いものの、前月比は86.2%。対するダイハツの元祖スーパーハイトワゴン「タント」や威信をかけた「ムーブ」、6月に発売された新生「タフト」が100.0%超えで台数を伸ばしてきている。
いくら高性能車の証しでもあるホンダのバッジをつけた人気モデルでも、いつまでもトップの座にいられるほど甘くないことはホンダもよく分かっているはず。相手は軽自動車では意地もメンツもあるダイハツとスズキだからなおさらだ。
ホンダは3年という長年の首位独走にあぐらをかくことはなく、12月24日には「N-BOX」をマイナーチェンジしてスタイルも装備も大幅に進化させるという。それが首位を突き進む加速力となるか、それとも不発で失速するか、来年のトップ争いも見逃せない。