戦々恐々は日常会話であまり使わない言葉ですが、ニュースやスポーツの実況中継などでは度々使われる機会のある言葉です。戦々恐々という言葉が出てきたときに困らないよう、本記事ではその言葉の意味や類語、使い方などを紹介します。
「戦々恐々」の意味
戦々恐々は「戦々」と「恐々」に分解できますが、この2語はともに「恐れる」という意味を持っています。その重ね言葉である戦々恐々は、「状況や物事に対して不安感や恐怖心を持つ様子」といったニュアンスを持つ言葉です。「戦」には戦う意味ではなく、「おびえる」ことを指す「戦(おのの)く」という意味もあるのです。
これが一般的によく知られている戦々恐々の意味ですが、実は「物事に対して腰を低く構え、慎みを持って謙虚にしている様子」という意味もあります。こちらの意味は知らなかったという人も少なくないのではないでしょうか。
「戦々恐々」の語源
戦々恐々の語源は中国の古い書物「詩経」にあると考えられています。詩経の一説には「戦戦兢兢、如臨深淵、如履薄氷」とあります。その意味は「深い溝淵を覗き込んだり、薄い氷の上を歩いたりするときのように慎重で謙虚な行動をする」です。
この一説には「戦戦兢兢」という言葉が使われており、これが戦々恐々の語源とされています。兢兢は「緊張して恐れるさま、恐れて戒め慎むさま」という意味を持っています。
「戦々恐々」の使い方・例文
戦々恐々は人間の態度や状況など、いろいろな物事に対して使われます。戦々恐々を正しく使うためにも、シーンごとの例文をいくつか紹介します。
「●●は戦々恐々としている」の例文
厳しい上司に怒られやしないかと、彼はいつも職場で戦々恐々としている
あの子は自信なさげにいつも戦々恐々としている
「●●は戦々恐々としている」という使い方は、周囲の状況や人の態度・様子を表す際によく用いられます。どのような状況に戦々恐々として、その場でどのような行動をしたのかを伝えることで、恐れや不安を感じている印象を与えられるでしょう。
「戦々恐々と●●する」の例文
戦々恐々とする中、試合当日を迎えた
戦々恐々としながら、見ず知らずの人たちが集うPTAの初会合に参加した
このような使い方では、その物事に対して不安を感じているという印象を与えられます。
「戦々恐々」の類語
恐怖や不安を表す言葉は、戦々恐々以外にも多数あるため、戦々恐々にはいくつかの類語があり、別の言葉で表現されるケースもあります。いくつかを以下にまとめました。
戦々慄々
「戦々慄々」は戦々恐々と同様の意味を持ち、物事に恐れ怯える様子という意味があります。戦々恐々や戦々慄々などのように、同じ文字を繰り返して使われる言葉には、その意味を強調するという意味があります。
ただし、戦々恐々には畏れ慎むという意味がありますが、戦々慄々はその意味を含みません。戦々慄々はただ怯えて震えるという状況を指します。読み方は「せんせんりつりつ」です。
小心翼々
「小心翼々」も戦々恐々と同様に、恐れて怯える様子という意味があります。ただし、戦々恐々は状況や物事、態度など表すことに対して、小心翼々は特定の人間が恐れて怯える様子のことを指します。読み方は「しょうしんよくよく」です。
畏怖
「畏怖」も戦々恐々と同様に、恐れて恐怖するという意味を持っています。しかし、戦々恐々は状況などの幅広い物事に対して使われるのに対して、畏怖は天災や科学では証明できない事象などの「自分よりも圧倒的に強い力」に対して恐怖を感じる際に使われます。読み方は「いふ」です。
「戦々恐々」の対義語
いくつかの類語がある戦々恐々ですが、対義語ももちろん存在します。
大胆不敵
「大胆不敵」は、「恐れ知らずで勇敢に立ち向かうこと」という意味を持ちます。「不敵」は敵を敵と思わないこと、すなわち“恐れ知らず”という意味合いで使われる言葉です。良い意味でだけでなく、悪い意味でも使われます。読み方は「だいたんふてき」です。
泰然自若
泰然自若は「何事にも動じず落ち着いた様子」といった意味を持ちます。座右の銘に使われることも多い言葉です。読み方は「たいぜんじじゃく」となります。
「戦々恐々」の英語表現
戦々恐々を英語表現には「trembling with fear」「be afraid of」「filled with trepidation」「「be humble」などが活用できるでしょう。
I was trembling with fear when I see her face(私は彼女の顔を見て戦々恐々とした)
戦々恐々の正しい使い方を覚えよう
戦々恐々は日常会話ではあまり使う機会はないものの、ニュースや新聞などでは散見される言葉です。
戦々恐々には2つの意味がり、使い方で与える印象が変わってくるため、その正しい意味や使い方を把握して、適切な理解ができるようにしておきましょう。