米労働省が2020年12月4日に発表した11月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数24.5万人増、(2)失業率6.7%、(3)平均時給29.58ドル(前月比+0.3%、前年比+4.4%)という内容であった。
(1)11月の米非農業部門雇用者数は前月比24.5万人増と、前月の61.0万人増から減速。市場予想(46.0万人増)も下回った。コロナ禍からの回復が始まった5月以降で最低の増加幅となり、3カ月平均の増加幅も52.2万人に減速した。製造業や建設業など広範囲にわたる業種で雇用の伸びが鈍化したが、小売業ではクリスマス商戦直前にもかかわらず3.47万人減少した。一方で、運輸・倉庫業はオンライン・ショッピングの増加を睨んだと見られる動きで14.50万人増加した。
(2)11月の米失業率は市場予想の通りに6.7%となり、前月から0.2ポイント低下。フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は12.0%と、前月から僅か0.1ポイントの改善にとどまった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は61.5%へと、前月から0.2ポイント低下しており、求職を諦め労働市場から退出する人が増加した事を物語る結果となった。
(3)11月の米平均時給は29.58ドルとなり、前月から0.08ドル増加。伸び率は前月比+0.3%、前年比+4.4%となり、前月比では予想(0.1%)を上回ったが、前年比は予想通りであった。小売業など比較的賃金が低い業種で雇用の回復が鈍った事から全職種の平均値が押し上げられた側面が強い。
米11月雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加幅および失業率の低下幅が5月以降で最小となった。米国全土で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、雇用の回復ペースが著しく鈍った事を強く印象付ける内容であった。ただ、市場はそうした回復鈍化の中にも希望を見出した模様で、この日の米国株はNYダウ平均が史上最高値を更新するなど全面高の様相であった。雇用情勢の鈍化が確認された事で、追加経済対策の必要性が増したため、来年の新政権発足を待たずに発動されるとの期待が高まった。こうした中、米国債利回りが上昇するとともにドルも強含んだ。市場は、米雇用統計で示された「足元の不透明感」より、「先行きへの期待」の方を強めているだけに、今後の与野党協議の行方に注目したい。