4度目にして初めて防衛戦を制した豊島竜王。羽生九段はタイトル獲得100期達成ならず。

将棋のタイトル戦、第33期竜王戦七番勝負第5局(主催:読売新聞社)、▲羽生善治九段-△豊島将之竜王戦が12月5、6日に神奈川県「ホテル花月園」で行われました。ここまで豊島竜王が3勝、羽生九段が1勝で迎えた対局。豊島竜王が防衛を果たすのか、それとも羽生九段が踏みとどまるのか注目された一戦は、84手で豊島竜王が勝利。タイトル初防衛を達成しました。

第5局で先手番の羽生九段は、矢倉を選択。これに対し、豊島竜王は早めに右桂を跳ねて仕掛けを見せます。竜王戦史上最短手数の52手で終局した第1局と同様の出だし。再び速攻策を採るのかと思われましたが、豊島竜王は穏やかな駒組みを選択。結局、先手は矢倉、後手は雁木の構えとなりました。

先に仕掛けたのは羽生九段。3筋の歩を突き捨て、銀を前進させていきます。歩を手にした豊島竜王は8筋から「継ぎ歩」で反撃。羽生九段は3筋を、豊島竜王は8筋でポイントを上げました。

2日目に入ると、戦いは激しさを増していきます。豊島竜王は3筋で銀交換を挑み、手にした銀を△8七銀と相手の歩の利きに打ち込んでいきました。銀損の攻めながら、8筋にと金を作ることに成功。さらに3筋にもと金を作って挟撃態勢を築きます。

金1枚、銀2枚と豊富な持ち駒を手にした羽生九段は、相手玉頭に銀を打ち込んで反撃を開始。4四の飛車が4一の玉をにらんでおり、厳しい攻めに見えます。しかし、ここからの豊島竜王のしのぎが巧みでした。

まず、守りから離れていた金を活用。王手、王手で攻める羽生九段の手に乗じて、△5三玉と玉自らが相手の攻めの主軸である飛車を狙いにいきます。飛車を取られては攻めの継続ができなくなるため、羽生九段は▲4六飛と飛車を逃がしましたが、そこで△5一銀が受けの決め手となりました。8二の飛車の横利きを通し、銀の利きで5二を守り、玉の6二への退路を広げた一石三鳥の一手。この手が豊島竜王に防衛をもたらしたと言っても過言ではないでしょう。

羽生九段はなおも▲4一金と攻めを続けますが、△4四桂で飛車の利きを遮断したのが冷静。さらに5手後には、その桂を△5六桂と跳ねて羽生玉に迫って勝負あり。最後は羽生玉に詰めろをかけて羽生九段を投了へ追い込みました。

この勝利でシリーズ成績を4勝1敗とした豊島竜王が、タイトル防衛を達成。通算6期目のタイトル獲得です。また、棋聖、王位、名人と3連続で防衛に失敗していた豊島竜王ですが、ついに4度目の防衛戦にして初の防衛となりました。

一方、2年ぶりのタイトル登場だった羽生九段は、タイトル奪取に失敗。通算100期目のタイトル獲得は今期では成し遂げることができませんでした。しかし、6日の日曜日に放映された、第70回NHK杯将棋トーナメントの3回戦では、渡辺明名人を見事な内容で破っています。タイトルからは遠ざかっているものの、まだまだその実力は健在です。

激闘の第5局を制し、タイトル防衛を決めた豊島竜王
激闘の第5局を制し、タイトル防衛を決めた豊島竜王