「それはまだ、流行っていない」というコピーで話題沸騰中のサントリースピリッツが提供するジャパニーズジン「翠 (SUI)」。同商品は、"食べながら飲む"という日本の飲酒習慣に合わせた新しいジンの形を提案し、注目を浴びている。今回、サントリー「翠 (SUI)」の人気の秘密をブランドマネージャーの佐藤純氏に聞いてきた。
世界的なジン人気と国産ジンの増加
ジンは、殻類等を糖化、はっ酵させ蒸溜したスピリッツに、ジュニパーベリーなどのボタニカル(草根木皮)を加え、さらに蒸溜して造るお酒だ。
いま世界市場ではジンの人気が右肩上がりで、ここ10年で130%超の伸びを見せているという。佐藤氏はその理由として「さっぱりとしたものを飲みリフレッシュしたいこと」「糖質をおさえたいなど、人々の健康志向が高まっていること」を挙げ、ボタニカルを使用するジンがその需要に応えていると述べる。
だが、日本におけるジンの市場は金額ベースで1%程度であり、日本人になじみがあるお酒とは言えない。とはいえ昨今は国産のジンも数を増しており、日本人の舌に合うジンが潜在的に求められているのは間違いない。
ただし、日本ではお酒を食事とともに楽しむ文化がある。日本でジンを展開するとしても、食事シーンに入ってくることは避けられない。ジン本来の味わいを活かしつつも欧州のジンとは異なる味わいを実現しなければ、日本では受け入れられないだろう。サントリーが目指したのは、日本人の味覚に合わせたジンだ。
なお、サントリーは古くからジンを製造しており、1937年に「ヘルメス・ジン (HERMES GIN)」を発売している。これは「角瓶」の発売の前年。サントリーがジンに自信を持っているのもうなずけるだろう。
日本ならではの食事に合うジンを目指して
このような背景から生まれたのが、このジャパニーズジン「翠 (SUI)」だ。"翠"は翡翠とカワセミから生まれたネーミングで、デザインに用いられているカラーはさわやかさの青と植物由来の緑をかけ合わせたもの。サントリー社内では「翠ブルー」と呼ばれているという。
味の決め手は、柚子、緑茶、生姜といった和素材。これを、ジン本来の味わいを形成するボタニカルと組み合わせている。ゆずの香り、緑茶の旨味、生姜の辛みが、日本の食事の邪魔をすることなく引き立て、さわやかな飲み口を実現している。
サントリーが勧める「翠 (SUI)」のオススメの飲み方は、ジン1:炭酸水4で割った「翠ジンソーダ」。このほか、「翠 (SUI)」の素材である柚子、生姜、煎茶割りや、和素材である大葉、梅干し、生わさびもオススメの組み合わせとのこと。これまでジンと組み合わせられることがなかった素材だけに、その味わいが気になるところだ。
さて「翠 (SUI)」の味わいについてだが、「日本の食事や居酒屋メシに合わせやすい」飲み口となっている。その理由は、前述の和素材。日本の食卓におなじみかつ、日本人の味覚にあう柚子、緑茶、生姜を使用することで、日本食や居酒屋メシとの相性が良いのだという。
佐藤氏がとくに勧めるのは鶏肉や白身魚。さらに「唐揚げならちょっと山椒を振ってみたり、ポテトサラダならわさびを混ぜ込んでみたりと、和の食材を入れるとより相性がよくなります」と、翠 (SUI)とのマリアージュについて教えてくれた。
加えて、価格面でも競争力が期待できる。サントリーは「翠 (SUI)」以外にも、2017年からジャパニーズクラフトジン「ROKU」を販売しているが、700mlで希望小売価格4,000円(税抜)の「ROKU」に対して、「翠 (SUI)」は希望小売価格1,380円(税抜)。日常的な消費を目指した戦略的な商品であることがわかる。
ちなみに、価格帯が異なる2つのジンについて、次のように佐藤氏は説明する。
「翠 (SUI)は、普段の食事に寄り添うスタンダード。日常的に楽しんでいただくためのお酒です。ROKUは、日本の四季の豊かさに触れられるプレミアム。華やかで豊かな香りがありますので、特別な時やちょっといい食事と一緒に楽しんでいただきたいと思います」
盛り上がりを見せる「翠 (SUI)」人気の秘密は?
「翠 (SUI)」が発売されたのは今年の3月。コロナ禍の中でも居酒屋では好反応を得ていたそうだ。加えて、あの印象的なCMが開始されてからその勢いは増し、個人でも手に取る人が増えているという。佐藤氏も「当初の出荷予定を大幅に超えています」と語る。
この背景には、コロナ禍によって自宅で瓶酒を楽しむ人が増えていることや、食事に合わせやすいということで炭酸水割りの人気が上がっていることが挙げられると佐藤氏は話す。
(※参考:コロナ禍で「炭酸水」が売れているのはなぜ? )
ユーザーからは、「さわやかで飲みやすい」「食事に合う」といった味わいを評価する声や、「糖質やプリン体がない」という健康面での評価だけでなく、女性を中心に「デザインが良く、キッチンやダイニングに置きやすい」という声もあるそうだ。
「CM放映後に行ったアンケート調査では、これまで缶のお酒しか買っていなかったお客様からも購入していただいており、これまでのジンというカテゴリを超えてご支持いただいていると感じています」と佐藤氏は話す。
居酒屋からも「ジンを飲まないお客様が『おいしい』と言ってくれた」「一日200杯くらい出た」といった声があり、「うちがsuiを流行らせる!」と気勢を上げるお店もあるそうだ。各エリアでもオリジナル活動が盛んになっており、東京、横浜、大阪、福岡の繁華街でキャンペーンを行うお店も増えているという。
佐藤氏は「翠 (SUI)」を「ぜひ居酒屋メシと合わせてほしい」と話すとともに、翠ジンソーダを「角ハイボールのような定番にしたい」と意気込みを見せる。食事に合う翠ジンソーダが居酒屋の定番メニューになる日もそう遠い日ではないのかもしれない。