JR西日本は5日、「WEST EXPRESS 銀河」山陽コースの報道公開を実施した。大阪駅から福山駅まで試乗し、約6時間にわたる在来線の旅を体験。車内で朝食・昼食も提供された。「WEST EXPRESS 銀河」山陽コースは12月12日の運行開始を予定している。
今年9月にデビューした「WEST EXPRESS 銀河」は、11月まで山陰方面の夜行特急列車(下りは京都発出雲市行、上りは出雲市発大阪行)として運行。山陽方面へは昼行特急列車として運行される。きっぷの販売は当面、日本旅行の企画・実施する旅行商品のみに限定される。山陽方面の予約倍率は現時点で約8倍だという。
報道公開が行われた12月5日、「WEST EXPRESS 銀河」は7時12分頃、大阪駅4番のりばに入線。既存の117系(6両編成)を改造した車両だが、西日本の美しい海や空を表現したという瑠璃紺色の車体が目立つ。側面に大きくデザインされたロゴマークもアクセントになっている。報道関係者らを乗せた列車は7時19分、大阪駅を発車した。
「WEST EXPRESS 銀河」の1号車はグリーン車指定席「ファーストシート」。2号車は女性席で、リクライニングシートの普通車指定席と、ノビノビ座席「クシェット」を備える。3号車はフリースペース「明星」、リクライニングシートの普通車指定席、コンパートメント「ファミリーキャビン」(2部屋)を設置。4号車は1両すべてをフリースペース「遊星」として使用している。5号車はノビノビ座席「クシェット」。6号車はグリーン個室「プレミアルーム」と、乗務員室後方にフリースペース「彗星」を設けた。
6号車の「プレミアルーム」は1名用個室1室、複数名用個室4室を備え、複数名用個室は昼行運転時、1室2~3名で利用可能。1号車の「ファーストシート」は、1つのボックスに向かい合う2席を配置し、昼行運転時の定員は16名となる。夜行運転時の定員は8名(8ボックス)で、可動式の背もたれを倒してベッド状に転換できる。2・5号車の「クシェット」は、かつての簡易寝台のように横になってくつろげる座席で、1つのボックスに上下2段、計4席を設置している。
「WEST EXPRESS 銀河」では感染症対策にも取り組み、フリースペース「明星」「遊星」に飛沫感染防止のパーテーションを設置した。パーテーションには各フリースペースのロゴマークに加え、寝台特急のヘッドマークを思わせるデザインで「距離」「マスク」と描かれたものも。フリースペースなどに置かれた消毒液にも「WEST EXPRESS 銀河」のデザインが施されていた。その他、空気清浄機を設置し、抗ウイルス・抗菌加工も実施。自動換気装置による車内換気を行うなど、車内環境整備に万全を期すとともに、地元イベントや物販も「3密回避」「非接触」を踏まえて行う。
大阪駅を発車した「WEST EXPRESS 銀河」は、JR神戸線の複々線区間を走行。三ノ宮駅での停車中、神戸の老舗「イスズベーカリー」の「銀河特製パン」が積み込まれ、コーヒーとともに朝食として提供された。卵を使用した生地に自家製チョコチップアーモンドクリームを包み、星形に焼き上げ、「WEST EXPRESS 銀河」のロゴを焼き付けた限定オリジナルパンだという。
神戸駅発車後、新長田駅付近で進行方向左側に鉄人28号のモニュメントを見ることができる。須磨海浜公園駅を通過すると海沿いを走り、明石海峡大橋が見え、舞子駅付近でその下をくぐる。明石市内では、進行方向右側に明石市立天文科学館の塔時計が見える。西明石駅から先は複線区間となり、土山駅と御着駅で時間調整を行い、新快速や特急列車などに抜かれる。大阪駅を発車してから約2時間半、9時45分に姫路駅に到着した。
日中時間帯に新快速が15分間隔で運転されるJR神戸線に対し、姫路駅から先は普通列車が主となり、黄色い車体の115系も見られるようになる。相生駅を通過するあたりから、「山陽本線」の名称とは裏腹にローカル線の趣さえ感じられる区間となり、やがて兵庫県・岡山県の県境を越える。和気駅を過ぎると、進行方向右側に吉井川が見え、しばらく並行した後、万富駅の手前で川を渡る。沿線の公園でゲートボールを楽しんでいた人たちも、「WEST EXPRESS 銀河」に気づくと立ち止まり、物珍しそうに列車を眺めていた。
岡山駅には11時26分に到着し、8分間停車。ここで車掌が交代する。停車中に岡山「三好野」の「銀河特製弁当 晴れの国御膳」が積み込まれ、発車後に昼食として提供された。「晴れの国」岡山の郷土料理が詰まった幕の内弁当で、岡山名物の祭ずし、穴子めし、えびめしをはじめ、食後の楽しみとして吉備団子も味わえる。
岡山駅発車後の車内では、地域の特産品や「WEST EXPRESS 銀河」オリジナルグッズが販売されたほか、周南市の3酒蔵による「周南の地酒のみくらべセット」の試飲体験(通常は広島~徳山間で実施)も特別に行われた。列車は倉敷駅に停車し、笠岡駅で長時間の運転停車を行いつつ福山駅へ。岡山駅発車後と福山駅到着前、福山市出身のラジオDJ、小林克也氏による歓迎車内アナウンス(録音音声データ)が流れた。
13時16分に福山駅に到着し、ここで下車。福山駅では約45分間の停車時間を活用し、乗客へのおもてなしが行われる。駅コンコースで地域の特産品やばらグッズなどを販売するほか、ボランティアガイドによる福山城の解説も。福山城は福山駅北口を出てすぐの場所にあり、現在は2022年の築城400年に向け、リニューアル工事を実施中。2022年に再び来られるように、乗客へ入場招待券を配布するとのことだった。その他、特定日に備後福山武将隊の演舞も予定している。
今回乗車した「WEST EXPRESS 銀河」山陽コースの下り列車は、福山駅を14時2分に発車した後、三原駅、西条駅、広島駅、宮島口駅、岩国駅、徳山駅、新山口駅、新下関駅に停車し、終点の下関駅に19時45分に到着する。上り列車は下関駅10時38分発・大阪駅22時2分着で運転され、途中の柳井駅と倉敷駅で乗客へのおもてなしを行う予定。今月は12月12・15・19・22日に下り列車、12月13・17・20・24日に上り列車が運行される。年明け後は1月9日から3月11日まで、土曜日と火曜日に下り列車、日曜日と木曜日に上り列車を運行する予定(一部の日を除く)となっている。