「是々非々で対処する」「是々非々で臨む」という表現があります。日常会話でよく用いる、「是非」という言葉にも似ていますが意味は異なります。
難しい言葉ではないため意味や使い方を理解して、正しく使うことでコミュニケーション力の向上に役立てましょう。
是々非々の読み方
この四字熟語の読み方は「ぜぜひひ」です。中国の思想家である荀子の言葉が出典だと言われています。荀子は中国戦国時代の趙に生まれた思想家・儒学者で、「性悪説」を唱えたことでも知られています。
是々非々の意味
是々非々は、私情に流されたり自分の置かれた状況に惑わされたりせず、物事を正しく判断するという意味で用いられます。道理にかなっていること・正しいことを表す「是」と、正しくないことを表す「非」を組み合わせたもので、立場にとらわれずに「良いことは良い・悪いことは悪い」と判断するケースで用いられます。
是々非々の類義語
是々非々には、たとえ敵対する相手であろうと正しければそれを認め、家族であっても間違っていればそれを正すということを意味があります。類語に「公平無私」「公明正大」「厳正中立」などがあります。
以下、それぞれの言葉の意味を紹介します。
公平無私
公平無私とは、私的な感情や自分の主観、利益などを判断基準から除いて公平に判断するという意味です。「こうへいむし」と読みます。「新入社員の採用面接にあたっては、公平無私な態度で臨む」といった使い方をします。
公明正大
公明正大とは、善悪の基準に則っていかなるときも公平に判断するという意味の言葉です。「こうめいせいだい」と読みます。「公明」は明らかで隠し事がないこと、「正大」は態度や行動が正しく堂々としている様を示します。「裁判官は公明正大な判決を下した」といった使い方をします。
厳正中立
厳正中立とは、敵対するどちらの味方もせず中間に立つという意味を持つ言葉です。「げんせいちゅうりつ」と読みます。「厳正」は厳しく公正を守ることを意味し、「中立」は両者の間に立って、どちらにも偏らないことを言います。「先生は、生徒同士のいさかいに厳正中立の立場で言い分を聞いていた」といった使い方をします。
是々非々の対義語
コミュニケーションを円滑に進めるため、対義語(反対語)になる言葉も使い方をマスターすることで、さらに表現方法が広がるでしょう。また、さまざまな言葉の対義語を覚えておけば、普段の会話の際にも役立つでしょう。
専断偏頗
「専断偏頗」は、偏った考えを勝手な解釈で正しいと思い込むという意味があります。「専断」は勝手な解釈で正しいと思い込むことを意味し、「偏頗」は考えが偏っていることを表しています。専断と偏頗という2つの言葉が合わさった複合名詞です。
使用例としては、「一方的に怒るなんて、専断偏波も甚だしい」「昨日の専断偏頗な態度は彼らしくない」などがあります。
是々非々と是が非でも・是非の違い
是々非々と似た言葉に「是非」や「是が非でも」があります。さまざまな場面で適切に使えるよう、意味や使い方を正しく理解しましょう。
是が非でも
「是が非でも」とは、ことの善悪とは関係なしに何がなんでもという意味の言葉です。「この仕事だけは是が非でもやり遂げたい」「是が非でも意見をいただかないといけない」のように使います。
この言葉には、「良かろうが悪かろうが」または「正しくてもそうでなくても」といったニュアンスが込められるため、強引に相手や周りを引き込むイメージがあります。
是非
「是非」とは、正しいことと正しくないこと、または正しいか正しくないかという意味の言葉です。「問題の是非を論ずる」「計画の是非を問う場ではない」のように使います。
是々非々の例文
今回の企画会議、是々非々で議論をお願いします。
社長は社内のコンプライアンスについて、是々非々で対応していく方針を掲げた。
彼は是々非々の判断を貫いたので、周りから信頼された。
是々非々の英語表現
「是々非々」にぴったり当てはまる英語表現はありませんが、あえて英語で表現するなら、次のようなフレーズが使えます。
- free and unbiased
(自由で偏見のない) - fair and just
(公平かつ公正な) - judging what’s right is right and what’s wrong is wrong
(良いものは良い、悪いものは悪いという判断) - do what is right
(正しいことを行う)
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「是々非々」の意味や使い方などをご紹介しました。普段の生活で「是々非々」のような四字熟語を使う機会は多くはありませんが、正しく意味を理解していれば同僚や上司との会話で不意に出て来た場合でも、対応に困ることはありません。
「是々非々」を理解し、適切に使いこなして、円滑なコミュニケーションを目指しましょう。