NTTドコモは12月3日、メインブランドの新料金プランとして、月額2,980円で20GBのデータ通信ができる「ahamo(アハモ)」を発表しました。同日開催された発表会では、メディアからの質問にNTTドコモの井伊基之代表取締役社長が回答していきました。ここではその内容をレポートします。
ahamoは政府の値下げ要請によるもの?
ahamoの料金設定は政府の携帯電話料金の引き下げ要請に応じたものか、という質問に井伊社長は「当社はこれまで20代の若い層に弱かったという事実があります。ぴったりのプランがなく、顧客が他社に取られている状況でした。そこで後発として、競争力のあるプランを出したかった」と回答しました。
「政府の要請というより、まさに競争戦略で、このプランを出したわけです。当社の切実な競争戦略上の打ち手であり、そのため他社に勝てる価格に設定しました。ここで打ってでなければ、ずっと3番手の状況が続いてしまう。サブブランドとは呼ばず、メインプランにするということで打ち出しました」と説明しています。
サブブランドはやらないの?
サブブランドにしなかった理由については「そもそもブランドとは、お客様が価値を決めるもの。キャリア側からメイン、サブと言うのはおこがましいし、20代の方にはこれがメインプランになるという考え方です。前任者の吉澤は、うちではサブブランドはやらない、というポリシーを持っていました。サブブランドありきで考えたわけではありません」。
既存プランは「料金を下げる方向で検討」
既存プランの今後について聞かれると「2019年6月から提供開始したギガホ、ギガライトの良さはデータ容量を余らせずに、使った分だけ料金がかかる階段状のプランになっている点でした。この良さを残しながら、ニューノーマルな生活に合わせてもっとお得感のある料金に見直していく、つまりは料金を下げる方向でいま検討しています」と回答。
新社長に就任した意気込みは?
新社長に就任したばかりということで、今後の意気込みを聞かれると、井伊氏は次のように回答しました。
「もう3番手と言われないようにする。そしてトップに返り咲きたい。シェアというよりも、売上と利益を伸ばしながら、低廉で品質の良いサービスを提供する。これを果たせるかどうかですね。今回は料金プランにフォーカスしましたが、付加価値サービス、法人営業における会社へのソリューション提供など、ポートフォリオを伸ばしていきます。今後は人口も減るので通信料金は下がる傾向になりますが、IoTなど違う分野での通信も伸ばしながら。お客様のサービスとしては、映像コンテンツなどの取り組みを加速します。ネット上で簡単に見れるようにするなど、リモートの時代、ニューライフスタイルに合ったサービスをどう打ち出すかだと思っています」。
利益はどこで得る?
新料金プランは収益にはマイナスだが、という指摘には「通信料金収入としては減収しますが、別の付加価値サービスでどう埋めていくか。それは事業経営者としての責任です。取り返す勢いでやっていきます」と意気込みました。
MVNOと連携するプラン、詳細は?
ドコモでは今後、MVNOと連携した「小容量で」「超低廉な」Economy(エコノミー)プランも検討する予定です。
このEconomy(エコノミー)プランについて聞かれると「まだ検討段階です。パケットを使わない、料金が安いことが最優先、という方がメインにする料金プランです。いまMVNO事業者は、様々な戦略を練っています。そこに、どう連携できるか。例えばMVNOでもdポイントが使えるようにする。すると利便性が増すのではないか。そんなイメージを抱いています。まだ何も予定はなく、時期も未定です。どうやったら利用を促進できるか、MVNOの皆さまと一緒になって考えていきます」。
ahamoはまず20代にアピールする
ドコモショップでahamoについて問い合わせる顧客も出てくるのでは、という質問には、「そうしたことも起きうると考えています」と、折り込み済みであるとしました。
「(ahamoの)基本コンセプトはオンライン、WEBのみでサクサクできること。新しいリモート型の社会で求められる仕組みを本気でつくる、ということで考えています。でも、それができないかたは何らかのカタチで助けないといけない。それも考えたい。基本コンセプトはブラさず、「リモート」ということです。ターゲットを明確にすることで、コンセプトが明確になる。まずは20代をどうやって引きつけるか、を打ち出していきます」。
5G通信で20GBは少ないのでは?
5G通信を利用するうえで20GB容量は少ないのでは、との指摘には「これから5Gをエリア展開していきます。ユーザー様も増えていきます。5Gで大容量データ通信を楽しむ時代になったら、スペックを見直す必要があると考えています。その時代のニーズにフィットしたものにチューニングしていく。それがあるべき戦略です。20代の方の使い方に合わせて育てていきたい」と回答。
MVNOは生き残れるのか
(キャリアが安いプランを出して)この先、MVNOは生き残れるのか、という質問には「時代とともにセグメントのあり方は変わっていきます。ahamoの目的は、MVNOの圧迫ではありません。超低価格がお望みの方もいるので、そうしたMVNO事業者にキャパを提供するのも我々の務めですし、共存できる形を考えていくべきと思っています」。
ahamoでドコモの回線品質は下がる?
ahamoでは、既存のプランと全く同じ品質のネットワークを利用できるのか、という質問には「同じ条件で、有利不利は起きない、全く違いがないサービスになります」と回答。
既存プランとの棲み分けは?
ドコモでは、すでに「ギガホ」「ギガライト」を提供中ですが、そちらは「データ小容量から無制限までカバーし」「家族の利用でお得になり」「実店舗でフルサポートも受けられる」Premier(プレミア)な料金プランとして継続していきます。
Premier(プレミア)プランとahamoの棲み分けについて聞かれると「ギガライトは3GB以下をお使いの方が大部分です。もっと使いたい方には、容量無制限のギガホがあります。でも、ちょうど中容量がなかった。そこでターゲット層とセットで新しくahamoをつくりました」。
ahamoとセットの新端末、iPhoneも対象?
ahamoは回線(SIM)単体でも購入できますが、端末セットの提供も予定されています。
端末ラインナップについて、若者に人気のiPhoneも取り扱うのか、eSIMの対応は、との質問に「20代の方が自分のお給料で通信回線も端末代も支払うことを想定しているので、ある程度は安価な端末で、人気の機種も取り扱いたい。どこまでにするか。コンセプトに合うような機種を絞り込んで用意したいと思っています」。
いま20代を獲得できないと負けたままになる
新料金プランの発表がこのタイミングになった理由については「いま20代の方は、10年後に30代、20年後に40代になります。いま20代のかたを獲得できずに負けたままだと、今後もずっと負けたままになってしまう。その危機感があります。過去に放っておいたのを、いま私が言ってもしょうがないので、なんとかその年代をドコモユーザーとして取り込みたいという強い思いがあります」。
シニア向けの施策は?
一方でシニアに向けた施策について聞かれると「シニアのかたはドコモの比率が多い。いま60代、70代の方が3G、ガラケーからどうやってスマホに移行しようかという段階です。全国でスマホ教室などもやっています。ターゲットごとに、その方たちがメインプランとして使っていただけるよう、仕様・スペック・料金をちゃんとチューニングするというのが、あらゆる層に対応するための戦略だと思っています」。
ahamoは若手社員からの提案?
ahamoは若手社員の提案によるものか、という質問には「20代のかたたちを取り戻すための緊急的なプランを、どうつくろうか1年以上前から社内で考えていました。でも、もう私のような年寄があーだこーだ言っても受けない。やっぱり同じ世代の社員が『これなら使いたいと思います』と言ってくれるだろうと思い、彼らに期待して企画を託しました。検討して欲しいと。それが今日の発表内容になりました」。
発表の時期については、新型コロナの感染が広がり、リモートへの対応が早急に求められるなかで、少し前倒しにしてこの時期になったと説明していました。