2020年10月、大阪医科大の元アルバイト秘書の女性が、賞与などの支払いを求めて起こした訴訟について、判決が言い渡されました。
2審・大阪高裁では、大学側に正社員の支給基準の60%となる約110万円の支払いを命じていましたが、最高裁判所は「ボーナスが支給されないことは不合理な格差とまではいえない」と判断しました。女性は逆転敗訴となり、大きな話題となっています。
契約社員やパートなどのいわゆる非正規雇用労働者は、ボーナスをもらうことはできないのでしょうか。
非正規雇用労働者を取り巻く現状や法律を確認します。
データからみる非正規雇用労働者の現状は?
まず、非正規労働者は日本においてどれくらいの数いるのでしょうか?
総務省の「労働力調査」(2019年度)によると、正規の職員・従業員数が3,516万人(前年比22万人増)いるのに対して、非正規の職員・従業員数は2,163万人と、その割合は全体の約38%になります。
また賃金に関しては、正社員・正職員が32万5,400円(年齢42.0歳、勤続13.0年)に対し、正社員・正職員以外は21万1,200円(年齢48.9歳、勤続9.1年)、正社員・正職員の約65%程度となり、差があることが分かります(※厚生労働省「2019年度 令和元年賃金構造基本統計調査」)。
一方、海外ではどうでしょうか。
以下は2014年時点のフルタイム労働者に対する、パートタイム労働者の時間当たり平均賃金(フルタイム=100)を示したものです(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2019」)。
少し古いデータであること、国によって、パートタイム労働者の定義・調査対象・賃金水準の算出方法等が異なるので、単純に比較できないことに注意は必要ですが、これを見てみると、日本の働き方による賃金格差は、諸外国と比較しても大きなものだと言えるのではないでしょうか。
日本・・・56.6(2018年: 60.4)
イギリス・・・71.0
ドイツ・・・72.1
フランス・・・86.6
イタリア・・・66.4
オランダ・・・74.3
デンマーク・・・79.0
スウェーデン・・・82.2
法律では非正規雇用労働者のボーナスはどうなっているの?
こういった現状を変えるべく、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の格差を是正しようという動きもあります。
2019年4月1日から「働き方改革関連法」が順次施行され、同じ企業で働く正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与・手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されることになったのです。
(パートタイム・有期雇用労働法: 大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日より施行、労働者派遣法: 2020年4月1日より施行)
ボーナスについても、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない、とされています(厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」)。
つまり、働く内容が同じであれば、雇用形態に関係なく、同じ待遇が企業には求められているのです。
冒頭で紹介した判例では、"正規雇用労働者と働く内容が違う"(職務内容等に正規雇用労働者との差がある)として、「ボーナスが支給されないことは不合理な格差とまではいえない」と判断されたことになります。
ボーナスをもらっている非正規雇用労働者ってどれくらいいるの?
それでは実際に、これまで非正規雇用労働者はどれくらいの割合でボーナスを支給されていたのでしょうか。
東京都産業労働局の調査では以下の通りとなっています。
支給率
【契約社員】
全員に支給37.6%、一部に支給21.7%、未支給32.7%、無回答8%(令和元年度)
【パート】
原則として全員に支給24.0%、一部の人に支給16.8%、原則として支給していない56.4%、無回答2.8%(平成28年度)
【派遣労働者】
全員に実施20.4%、一部を除き実施9.5%、実施していない33.0%、無回答37.1%(平成30年度)
支給額
【契約社員】
20万円以上40万円未満が19.1%で最も多い(令和元年度)
【パート】
10万円以上20万円未満が26.0%で最も多い(平成28年度)
【派遣労働者】
20万円以上が65.2%で最も多い(平成30年度)
「働き方改革関連法」が施行されたことで、ボーナス支給についても、今後は雇用形態ではなく、職務内容による正当な評価・支給が企業には求められます。
今回はボーナスという面から非正規雇用労働者の現状をみてきましたが、雇用形態に縛られず、仕事そのものを評価される社会になることで、働き方をより自由に選択できるようになるといいですね。