外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年11月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ユーロ/円 11月の推移】
11月のユーロ/円相場は121.702~125.136円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.1%上昇(ユーロ高・円安)した。3日の米大統領選後に、財政拡大路線のバイデン氏が優勢との見方からドル安が進行するとユーロ/ドルの上昇と連動してユーロ/円も堅調に推移した。
9日には新型コロナウイルスワクチンの早期実用化期待が高まり、リスク・オンの円売り主導で125.136円前後まで上伸。その後、ドル/円の反落に連れて19日に一時123円台を割り込んだものの、ドル安主導のユーロ高の影響で持ち直すと30日には再び125円台に迫った。
ユーロ圏諸国で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、一部の都市では行動制限措置も再発動された他、欧州中銀(ECB)が12月の追加緩和を予告するなど、ユーロの弱材料も少なくなかったが、それ以上にドル安の流れが強かった。
【ユーロ/円 12月の見通し】
ドル安主導のユーロ高がどこまで続くかが12月のユーロ/円相場のカギとなりそうだ。11月はユーロ/ドルが約2.4%上昇した一方でドル/円の下落が約0.3%に留まったため、ユーロ/円は約2.1%上昇した。
バイデン新政権下での財政拡大観測や米連邦準備制度理事会(FRB)の超低金利政策長期化観測などからドルの先安観は根強いものの、ユーロにも「弱み」がない訳ではない。欧州中銀(ECB)が12月10日の理事会で追加緩和に動く公算が大きい点、新型コロナ復興基金を含む欧州連合(EU)予算の採択にハンガリーとポーランドが反対している点、英国とEUの通商交渉が難航している点などはユーロの弱材料と言える。
これらの行方がクリアになればユーロが続伸する事も考えられるが、そうでなければユーロが反落してもおかしくないだろう。海外投機筋のユーロ買いポジションが高水準を維持していると見られる点からも、反落への警戒が必要となろう。12月のユーロ/円相場は、ドルとユーロの弱さ比べが焦点となりそうだ。