2020年の秋からTiger LakeことIntelの最新CPU「第11世代Coreプロセッサ」を搭載するノートPCが登場している。Tiger Lakeは前世代のIce Lakeに比べて、CPUのパフォーマンスは20%以上もアップし、グラフィックスに関しては新たなGPU「Intel Iris Xe Graphics」が採用され、最大で2倍も向上しているという。

IntelのCPUに内蔵されているGPUはビジネス用途ならば十分とは言え、それこそ最新ゲームを遊びたいともなればお世辞にも3D性能が高いとは言えず、ゲームをプレイするのには向いていない時代が長かった。“性能2倍”となれば、最新ゲームもそれなりに遊べるのか期待してしまうというもの。

というわけで、ここではIntelのTiger Lakeリファレンス機に近いスペックを持つMSIのモバイルノート「Prestige 14 Evo」を使って、実ゲームでのベンチマークを中心に性能をチェックしていきたい。

なお、今回試用した「Prestige 14 Evo」は海外仕様だが、日本では同スペックで日本語キーボードの「Prestige 14 Evo A11M 785JP」が実売価格16万円前後で発売されている。気になる人はチェックしてほしい。

  • 今回試用したMSIの「Prestige 14 Evo」

    今回試用したMSIの「Prestige 14 Evo」

Prestige 14 EvoはCPUがTiger LakeのCore i7-1185G7(4コア8スレッド、最大4.8GHz)、メモリが16GB(LPDDR4X)、ストレージが512GBのNVMe SSD、グラフィックスはIntel Iris Xe Graphics、ディスプレイが14型のフルHDとなっている。

  • 国内未発売のモデルでキーボードは英語仕様

  • 左側面にはThunderbolt 4(Type-C)を2基備える

  • 右側面にはUSB 2.0、microSDカードスロット、ヘッドセット端子を用意

  • CPU-Zでの表示。CPUはCore i7-1185G7で4コア8スレッド、最大4.8GHz動作だ

  • GPU-Zでの表示。Iris Xe GraphicsがCPUに組み込まれている

テストの前にIntelのモバイル向けCPUに搭載されているGPUのスペックを簡単に紹介しておきたい。CPUは4コア8スレッドのCore i7シリーズから選んでいる。Iris Xe Graphicsは演算ユニット(EU)の数を増やし、性能の底上げを図っているのがわかる。

世代 CPU名 GPU名 演算ユニット(EU) 最大動作クロック
第11世代(Tiger Lake) Core i7-1185G7 Iris Xe Graphics 96基 1.35GHz
第10世代(Ice Lake) Core i7-1068G7 Iris Plus Graphics 64基 1.1GHz
第10世代(Comet Lake) Core i7-10510U UHD Graphics 24基 1.15GHz

Tiger Lakeの基本性能を試す!

まずは、基本性能からチェックしておこう。なお、電源モードはすべて「高パフォーマンス」に設定してテストを行っている。

  • CINEBENCH R20の結果

  • PCMark 10 Standardの結果

  • Crystal Disk Mark 7.0.0hの結果

Tiger LakeはIntelでは初となるPCI Express 4.0(Gen4)に対応したのも大きなトピックだ。Prestige 14 EvoにはPCI Express 4.0 x4対応のNVMe SSDが搭載されており、シーケンシャルリードで4,950.18MB/sの速度を記録。PCI Express 3.0 x4接続のNVMe SSDではシーケンシャルは3,500MB/s前後が限界だったので、それを超えているのを確認できた。早くデスクトップ向けのCPUもPCI Express 4.0対応を願いたくなるところだ。

  • Crystal Disk InfoでPCI Express 4.0 x4接続のNVMe SSDが搭載されていることを確認した

Iris Xe Graphicsのゲーム性能を試す!

さて、ここからは本題のゲーム性能をチェックしていく。まずは定番の3Dベンチマーク「3DMark」から。Fire StrikeとTime Spyのスコアを見る限り、エントリー向けの外部GPUクラスとは言えそうだ。

  • 3DMarkの結果

続いて、人気FPSの「VALORANT」を試して見たい。射撃場の一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定した。軽めのゲームということもあり、フルHD解像度なら画質設定を最高にしても快適なゲームプレイの目安となる平均60fpsを大きく超え、平均75fpsに到達している。

  • VALORANTのフレームレート

次は、バトルロイヤル系として「フォートナイト」と「Apex Legends」を試す。フォートナイトはソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートをCapFrameXで測定。画質を「低」設定にすれば平均105.4fpsと十分なフレームレートを出し、画質を「中」設定でも平均54.1fpsとそこそこ快適にプレイできるフレームレート。画質「低」や「中」では3D解像度が下げるので画面全体的に荒っぽさは出てしまうが、プレイできるフレームレートが出てるのは心強い。

  • フォートナイトのフレームレート

「Apex Legends」は、トレーニングモードで一定コースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで測定した。Apex Legendsは一括で画質を調整するプリセットは用意されていないが、画質の各設定を最低まで下げると平均69.4fps、画質を中程度まで上げても平均60.9fpsと十分快適にプレイできるフレームレートを確認できた。Apex Legendsは画質設定を下げても、そこまで画面に粗さを感じないゲームなので、筆者としてはフォートナイトよりも気持ちよくプレイできると思った。

  • Apex Legendsのフレームレート

最後は重量級のゲームとして「モンスターハンターワールド:アイスボーン」を試してみよう。集会エリアを作成し、一定のコースを移動した際のフレームレートをCapFrameXで計測した。画質「低」設定ならば平均66.4fpを達成。十分スムーズにプレイできるフレームレートだ。ただ画質「中」にすると平均33.6fpsまで下がる。

  • モンスターハンターワールド:アイスボーンのフレームレート

このようにIntel Iris Xe Graphicsは、軽めのゲームなら最高画質でも余裕でプレイ可能、中~重量級のゲームでも画質設定を下げればプレイできるフレームレートを出せるのが分かった。Tiger Lakeは採用するメーカーが熱設計に合わせてTDP(Core i7-1185G7なら12~28Wの範囲)を調整できるようになっている。薄型や小型を追求したモバイルノートでは、もう少し性能は下がる可能性はあるが、ノートPCでもそれなりにゲームが楽しめると言ってよいのではないだろうか。

その一方でIntel Iris Xe Graphicsは登場したばかり。ゲームによっては起動しなかったり、グラフィックの描画が正しく行われない現象を確認した。まだまだゲームの動作確認やドライバーのチューニングに余地があるということだろう。そのため、Intelでは動作確認済みのゲームを「インテル Iris Xe グラフィックス検証サポートプログラム」にて認証済みのゲームタイトルとして公開している。

Tiger Lakeを採用するノートPCはモバイル向けが中心だ。テレワークや移動などの合間に人気ゲームが楽しめるというのは、ゲーマーにとってうれしい要素であるのは間違いない。検証タイトルが順調に増えれば、仕事にも遊びにも使えるモバイルノートとして新たな地位を築くのではないだろうか。