「体」と「身体」。同じ「からだ」という読みでも受ける印象は異なります。どちらも間違いではありませんが、公用文書などで使用できないものもあるのです。今回は「体」と「身体」がどのような場面で使うのが効果的かご紹介します。
「体」と「身体」の違いは? 意味を解説
「体」「身体」、どちらも「からだ」と読むことのできる漢字ですが、みなさんが「からだ」という音を聞いたときに思い浮かべる漢字はどちらでしょうか。また、それぞれにどのようなイメージを抱くでしょうか。 まず、それぞれの文字の意味を確認してみましょう。
体の意味は
体とは動物の頭から手足まですべてを意味する言葉です。場合によっては手足を除いた胴体部分を指したり、体格そのものや健康状態を意味したりすることもあります。他の読み方としては「たい」や「てい」などがあります。
身体の意味は
身体とは通常「しんたい」と読みますが、「からだ」と読むこともできる言葉です。意味は体とほぼ同じですが、「身」が精神や心の意味合いを含むため、人間のからだに対してのみ使用されます。胴体だけではなく手足、頭もすべてあらわす場合も「身体」という表記を使用します。
「体」と「身体」の違いをまとめると?
下記で「体」と「身体」の違いをまとめます。
- からだ全体を表すときは「体」でも「身体」でも良い
- 手足を除いた胴体部分を指すときは「体」
- 「体」は、人間だけでなく、人間以外の動物・物体が対象でも使用できる
- 「身体」は精神・心も含むニュアンスになるため、人間にしか使用できない
「体」と「身体」、どちらの漢字が正解?
一般的には「体」も「身体」も間違いではありません。自分の出したいニュアンスやしたい表現にしたがって好きな方を選択するといいでしょう。しかし、公用文書の場合は「常用漢字」を使用することになるので注意が必要です。常用漢字では「体」が「からだ」の正しい表記となります。
常用漢字の「身体」は「からだ」と読まない
常用漢字に照らし合わすと「身体」は「しんたい」と読みます。「身体」を「からだ」と読むことはできません。ただし、常用漢字はあくまで「目安」。常用漢字外のものが日本語として間違っているというわけではありません。しかし、常用漢字のみ使える文書の場合は注意が必要です。
公用文書では「体」を使おう
新聞の表記や公用文書などでは常用漢字を使うことになっています。そのため、公用文書などで「からだ」を表記したい場合は「体」と書くようにしましょう。また、履歴書や社内の文書などより正しい言葉遣いをしたい場合も公用漢字表に基づき「体」を使用するのがいいでしょう。
「体」と「身体」の使い分け
ほとんど同じ意味を持つ「体」と「身体」ですが、使用する場面や対象、ニュアンスによってより細かな違いがあります。以下では、どのような場面で「体」または「身体」を使用するのが適切かご紹介します。
「身」があらわすもの
まず「体」と「身体」の唯一の違いである「身」という漢字について考えていきましょう。「身」とは「しん」「み」と読む漢字です。「からだ」という意味や「自分」、「社会的な立場」という意味を持っています。また、「刀身」など「物の本体」を指す場合にも使います。
「身が引き締まる」などのように、単に体という意味だけではなく「精神」をあらわすときにも使います。または「相手の身になって考える」のように「地位・立場」を指す場合もあります。
人間以外に「身体」は使わない
「身」は体だけではなく、場合によっては「身分」や「立場」にも使う言葉です。そのため、地位や立場を持つ人間に対して使用するのがいいでしょう。犬や猫などの動物のからだをあらわすときは「身体」よりも「体」と表記するのが自然です。
「車体」や「機体」など、機械や乗り物の本体部分をあらわすときも「身体」ではなく「体」を使った方が適切です。
なお、「身」には「心」や「精神」といった意味合いも含まれています。そのため体の中にある心や精神もまとめてあらわしたいというときには「身体」を使うのがいいでしょう。
胴体をあらわしたいときは「体」
「体」には「手足を除いた胴体部分」という意味もあります。そのため胴体を指すときには「身体」ではなく「体」と表記するのがいいでしょう。
「体」と「身体」、こんなときはどっちの漢字?
どちらも間違いではないとはいえ、使い分けに迷ってしまうシーンも少なくありません。続いては「からだ」を使ったよく使う文章の場合、どちらを使うべきなのかを解説します。
「おからだに気をつけてください」
お見舞いや手紙の最後などで相手を思いやるときに使う「おからだにお気をつけください」という文章。この場合「体」と表記するのももちろん間違いではありません。しかし、相手を慮ってより丁寧な表現にしたい場合は「身体」を使うのがいいでしょう。
「お体に気をつけてください」よりも「お身体に気をつけてください」の方が丁寧で、体だけではなく精神状態についても思いやった表現になります。
「からだを動かそう」
「からだを動かそう」という文も標語などでよく使われています。精神や立場ではなく、肉体そのものについて表現している文章なので、「体」を使って「体を動かそう」のように表記するのがおすすめです。
とはいえ、「身体」でも不正解にはなりません。公用文書などのあらたまった形式でない場合はお好みで表記するといいでしょう。
「体」と「身体」の違いを知って正しく使い分けよう
同じ「からだ」という言葉でも「体」や「身体」、「躰」など表記する漢字は多くあります。表記によってニュアンスや意味を変えられるのは日本語の魅力でもありますが、いざというときに迷ってしまうこともありますよね。
「身体」は常用漢字で「からだ」と読むことはできないので、公用文書で「からだ」と書き記したい場合は「体」を使うようにしましょう。
また「身」という漢字には「精神・心」という意味や「立場・身分」といった意味も含まれています。「からだ」という言葉を使う対象が人間の場合や、心にまで及ぶ場合は「身体」を使うのがいいでしょう。
反対に動物や機械などに使う場合は「身体」ではなく「体」の方がふさわしい表記となります。