ウイスキーや地酒など、近年、世界的に注目を集めているジャパニーズクラフト酒。中でも国内初のクラフトジン専門の「京都蒸溜所」として個性を発揮しているジンのブランドが「季の美」(きのび)だ。今年6月にそのブランドハウス「The House of KI NO BI (季の美 House)」が京都市中京区にオープン。週末はテイスティングセミナーも開催しているというので、さっそく潜入取材してみることに。
暖簾がそよ風になびく和風の門構え。京都らしい伝統文化の雰囲気が漂う外観だ。店内に一歩足を踏み入れると、1階入り口付近にはまず巨大な蒸留機がお目見え。都内のスターバックスの店内で最近見かけることが多くなったコーヒー豆の焙煎機のような感じで鎮座しており、それを見上げると自然と“ジンの蒸留”について想像が膨らむ。
奥のバーカウンターまで進むと、「季の美」のボトルがずらりとディスプレーされていて圧巻。同店マネージャーの佐久間氏が、かっこよくシェイカーを振るたびに辺りには心地よい音がリズムカルに響き渡り、昼間の訪問にも関わらず、気持ちはすっかり夜のバー気分に。
バーでは様々な種類の「季の美」を味わったり、飲み比べセット「利き季の美」(15ml×3種 1,300円)やカクテルなどが楽しめる。お料理は「京おばんざい盛り合わせ」800円や「京鴨肉のロースト(6種のディップソース付き)」1900円などが揃っていて、バーながら土鍋ご飯やデザートまであるのが嬉しいところ。
2階に上がるとさっそくテイスティングの準備がされていた。同店では毎週土曜日と日曜日の14時〜テイスティングセミナーを開催している(店のサイト上で申込み 税込3000円)。ジンは通常、ジュニパーベリーを始め全てのボタニカルをまとめて蒸留するが、「季の美」では柚子、玉露、生姜などの11種のボタニカルを6つのエレメントに分類して別々に蒸留し、それをブレンドすることで絶妙な調和を表現している。セミナーではその6つのエレメントのジンの原酒が6つのグラスに少量ずつ注がれていた。
セミナーの冒頭は佐久間氏による「季の美」の特徴の説明から始まる。「季の美」ではジンの製造に米から作られるライススピリッツを使用しているのも特徴で、「上品な甘さと圧倒的な舌触りのやわからかさが特徴」(佐久間氏)とのこと。また使用しているブレンド水は、やわらかい水質の京都伏見の「月の桂」で知られる有名蔵元「増田徳兵衛商店」の仕込み水を使用しているという。柚子などの柑橘類は通常は乾燥させた果皮が使われるが、同社では契約農家へ毎年収穫に行き、手作業で皮むきをした柚子を瞬間冷凍して使用することにより、フレッシュな香りを年間通して表現しているという。
さっそくベースとなる「礎」エレメントの原酒から味わってみると、確かにジンというと刺激的で、とんがった味のイメージがあったのだが、どこかやわらかくまろやかな印象。飲みやすいのでちょっと危険(笑)。6つの原酒を味わうごとに香りなどが全く異なり、飲み比べていくと個人的には山椒・木の芽を使用した「凛(ハーバル)」がとても好みだということもわかってきた。6種の味と香りを把握した後は、それぞれを少量ずつスポイトですくって、自分流にブレンドできた。これが楽しすぎた!
ジンのブレンドはやみくもにただ6種の原酒を合わせるのではなく、右側の3種を1種にブレンドして味を整え、さらに左側の3種を1種にブレンドし、最後にそのブレンドした2種を好みの割合にブレンドして完成させる。
味のバランスを整えながら、2段階に分けてブレンドしていくやり方が、素人ながらプロと同じような体験ができ、あっという間に1時間が過ぎた。ちなみに私が体験した日は満席だったが、近くの人とコソコソと自分の好みやブレンドの割合を話しながら、酒好き同士が仲良くなれてとても楽しかった。
改めて市販されているシグネーチャー・ジン「季の美 京都ドライジン」を味わってみると、そのバランスが絶妙で、さっき自分がブレンドしたものとはエレメントが同じものとは思えないほど。プロの神業が輝くジンであることが分かって脱帽。
セミナー後はそれなりに酔ってはいたのだが、やはりプロが作る渾身の一杯を堪能したくなり、最後に1階に戻ってカクテルも注文。国産プレミアムジンの凄さに圧倒されながら、世界に羽ばたく「季の美」を日本人としてこれからも応援していこうと、ゆったりと癒されながら思ったのであった。
※価格は表記のないものは全て税別です ※12月1日から新メニューに変更する予定です。