プロゴルファーの宮里藍さんが11月29日、ジュニア選手たちをサポートする取り組み「宮里藍インビテーショナル supported by SUNTORY」を開催。コロナ禍で悩む中学生・高校生たちに向けて、ゴルフスキルだけでなく、メンタルの成長法なども伝えられた。

以下、写真はエム・プロジェクト提供。

  • 「宮里藍インビテーショナル supported by SUNTORY」は久光製薬などが協賛

ジュニア選手も納得のレッスン内容

2019年は競技会形式で開催されたが、今年は新型コロナウィルスによる影響からオンライン形式で開催。宮里さんは、ゴルフ大会が相次いで中止になるなどして目標を失ったジュニア選手たちに向けて、画面を通じてレッスンを実施した。

  • レッスンが始まると宮里さんの柔らかい話し方、朗らかな笑い声に、選手たちも自然とリラックスしていくようだった

今回のレッスンで宮里さんはパッティングの練習法を紹介。パターのワングリップ分だけカップからオーバーするような力加減で打つ「1グリップドリル」や、スライス・ちょっと上り・ほぼ正面・フックライン、といったさまざまな条件下でもパットをミスなく何回連続で入れていく、自身も現役時代に毎日こなしていたドリルを披露した。

  • 現役時代に毎日こなしていたドリルを披露

PTMESSの重要性

ところで宮里さんは今、メンタルトレーニング法「Vision54」を学んでいる。ゴルフ技術+アルファを習得できるプログラムで、「18ホールすべてでバーディを奪えばスコア54も夢ではない」が名前の由来になっている。29日のレッスンでは、このVision54を通じて宮里さんも初めて知ったというPTMESSについて詳しく解説した。

  • P=フィジカル、T=テクニック、M=メンタル、E=感情、S=社交性、S=ゴルフ精神、が重要だと言う

「分かりやすいのがテクニックですね。いわゆる技術的なもので、ここから修正する選手がほとんどだと思いますが、PTMESSでは『ゴルフは何で構築されているか』と考えます。例えばフィジカルの調子が悪いとテクニックに影響し、迷い・決断力のなさ(メンタルの弱さ)はストロークの緩み・スイングのミスにつながります。

また、社交性のスキルがないと人間の思考はマイナス方向になりがちで、『あそこでボギー打ってたね』と人に言われたら良い気がしません。ところが、『そうなんですよ。あそこはこうしていれば』と対応できるスキルがあれば頭もすっきり整理できます。そして重要なのが、ゴルフの精神。これはモチベーションにつながります。簡単に言えば、自分はなぜゴルフをプレーするのか、ということです」。

ここで、あらためて生徒たちに呼びかける宮里さん。

「ゴルフのどんなところが好きですか。あらためて考えたことってないですよね、きっと。でも、そういうゴルフ精神は、すごくいろんなことに結びついてきます。プロ10年目になり、もう優勝もした、世界ランクも1位になった。じゃあ次は、何のためにプレイするのか。私も、ちょっとぼやけた時期がありました。

プロ・アマ問わず、選手なら必ず何年かに1回、これを整理しないといけない。ゴルフ精神がないと、どんなに良い車でもエンジンがないのと一緒で、前に進めなくなります」。

テクニックだけ直してもゴルフは良くはならない、と宮里さん。逆にPTMESSのズレは、すべてテクニックに現れてしまうと解説。つまりテクニックが悪くなったときは、もしかしたら体調が悪いのかも、あるいはあの人と回るのが嫌だからか、それとも……と思考をめぐらせてください、とアドバイスを送った。

  • 自分の調子が良いときを理解していれば、もし調子が悪くなっても「もっと重心を低くしようかな」「ゆっくり話してみようかな」など打開策が見つかると言う

ジュニア選手の成長に驚き

そして翌日には、メディア向けにオンライン会見が実施。

オンライン開催について、「昨年、参加してくれた選手たちの状態が気になっていました。悩んでいる選手もいるでしょう。だから現状の悩みなどを話せる場をもうけたかった。半歩、前に進む、来年につなげるという意味合いで第1.5回 宮里藍インビテーショナルとしています」と宮里さんは胸の内を明かした。

また、終えてみて「率直に嬉しかったです。みなさん元気そうで、すごく安心しました。まだコロナ禍で先の見通しが立たないこともあり、自宅でできる練習法、メンタルの整え方などを取り上げました。直接、コミュニケーションできたので楽しかった」と笑顔を見せた。

  • 笑顔を見せる宮里さん

続けて、ジュニア選手の成長については、「1年でこんなに成長するのか、と驚きました。皆さんの成長するスピードが思っていたよりも早かった。自分の意見をきちんと伝えられる選手が多くて、人間的な部分でも成長していました」と言う。

そして、時代の流れを感じたそうで、「こちらが提案したドリルに対して『YouTubeを見て、似たような練習をしたことがあります』と答える子もいました。現代は情報が多く、必要な情報をピックアップしていく能力も必要になりました」と話し、自身がジュニア選手だった頃と比べて、はるかに飛距離も伸びているそうだ。

「いまの子たちはパワーがありますね。フィジカルで違いを感じます。プロの試合に出る機会も増え、経験値が積めるので、全体的にレベルがかなり上がっています」。

最後に、PTMESSについては「ゴルフだけでなく、人生のいろんな場面で必要なスキルだと思います。原因がどこにあるか、理解できるようになるので。人はどうしてもテクニックに執着してしまいがちですが、原因が他にあるかも、と視野を広げる努力をしてもらえたら」と話していた。