「要因」と「原因」は混同しやすいですが、意味に違いがあります。本記事では、それぞれの意味を紹介した上で要因と原因の違いや使い分け方を解説。さらに、例文を交えた正しい使い方や類語・言い換え表現についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

  • 原因と要因、それぞれの意味は

    「要因」と「原因」、あなたはちゃんと使い分けることができていますか?

要因と原因の違いとは

まず原因、要因のそれぞれの意味を確認してみましょう。ひとつずつ意味を押さえることで自然と違いや使い分けも見えてきます。

要因の意味

要因とは「物事を発生させることになった主要な原因」という意味を持ちます。要因の「要」は「かなめ」とも読み、「もっとも大切な部分」という意味があります。因(ことの起こり)の中でも要(もっとも重要なきっかけ)となった部分で「要因」だと押さえておきましょう。

なお、要因を英訳すると「Factor」となります。訳によっては「理由」を意味する「Reason」を使うこともあるようです。

原因の意味

原因とは「ある物事や状態、変化を引き起こすもとにあること」という意味です。「事故の原因を調べる」や「その病気の原因は未だ不明だ」のように使います。

原因の「原」とは「物事のはじめ」や「みなもと」という意味を持っています。「因」にも「ことの起こり」や「理由」という意味があり、どちらも「物事のはじめ」という共通した意味がつながってできた言葉です。

原因を英訳すると「Cause」。日本語にすると「原因」と「要因」は似ているため混同しがちですが、他の言語に置き換えてみると違いがはっきりします。

他にもある◯因

他にも「因」のつく熟語は多くあります。「物事の起こった最初の原因」という意味の「起因」や「物事の起こる本当の原因」を意味する「真因」。「ある作用を引き起こす原因」という意味の「誘因」や「ひとつの原因」という意味の「一因」など、原因に関連するものが多く混同してしまいがちです。

どれも同じ意味のように思ってしまいがちですが、原因と要因のようにひとつずつ要素を整理していくとそれぞれ意味は異なっています。「◯因」という言葉の意味を調べていくだけでもさらなる語彙力アップが期待できそうです。

相手に自分の思いを伝えられるように、シーンに合わせて適切に言葉を選ぶため、今一度熟語やそれぞれの意味について調べてみるのもいいでしょう。

  • 原因と要因、それぞれの意味は

    意味の違いがわからないときには英語や他の言葉に言い換えてみるのもおすすめです

要因と原因の使い分け

原因と要因のそれぞれの意味をご紹介しました。要因の意味の中に「原因」という言葉が入っていることからもわかるとおり、両者はとても似ている言葉です。では、原因と要因はどのように使い分ければいいのでしょうか。わかりやすい使い分けの仕方をご紹介します。

要因は良いときでも使える

原因は基本的に事件や事故など悪いことが起こったときに使われる言葉です。「敗北の原因」や「今回の成績が悪かった原因」のように使用されます。

しかし原因とは違い、要因は物事が悪い方に転じたときだけではなく、良かったときにも使用することができます。「人気の要因は丁寧なサービスにある」など、結果が良好であるものにも使用できるのは要因と原因の大きな違いです。

要因は原因が集まったもの

要因は一般的に、物事を引き起こした複数の要素に対して使われます。「テストの結果が悪かった要因は土日に勉強を怠ったことや範囲の確認が不足していたこと、他の教科に時間をとられてしまったこと」というように、要因は複数ある場合にも使うことができます。

反対に原因は一般的に1つの場合が多いのです。「事件(テストの結果が悪かった)の原因(勉強時間が足りなかった)には、複数の要因(土日に予定があった、範囲がわかっていなかった、他の教科の方が難しいと思っていた)が絡んでいる」のように使い分けられます。

文章によっては異なる場合もありますが、複数ある要因が1つの原因を作り出していると覚えておきましょう。

  • 原因と要因の使い分け

    要因がいくつも折り重なってひとつの原因を作っています

要因と原因の正しい使い方・例文

原因と要因のそれぞれの違いや使い分けについて理解することはできたでしょうか? 次に原因と要因を使った例文をご紹介します。例文を通してさらに使い方を勉強してみましょう。

要因

要因は物事が起こった際の主要な原因のことです。複数あることや、対象となる物事が良いものであった場合も使えるのが原因との大きな違いといえるでしょう。 例文は以下になります。

・今回取引が成功した要因はいくつか挙げられる。

・この地域の人口減少の要因について調べている。

・PCを使って要因分析を行いましょう。

原因

原因はなにか物事が起こったときに、それを引き起こしたもっとも重要な部分のことを指す際に使います。例としては以下のようなものが挙げられます。

・この病気は未だ原因不明だ。

・原因究明のため総力を尽くします。

・いずれにせよ原因がはっきりしなければ対策を練ることもできない

  •  原因と要因の例文

    物事が良いものなのか悪いものなのか、複数で構成されるものなのかが使い分けのポイントです

要因と原因の類語・言い換え表現

最後に原因と要因の類語・言い換え表現をご紹介します。似ている言葉を知ることで、もととなる言葉の認識を深めることができます。また、原因と要因のどちらを使えばいいか迷ってしまったときには類語や言い換え表現を使ってみるのもおすすめです。

要因の類語・言い換え表現

要因の類語は、要因の意味の中のどの部分を抜き出すかによって変化します。 「結果に結びつくもの」という意味の類語は「因子」や「素因」、「要素」などが挙げられます。「物事を構成する抽象的な部分」という意味では「要素」や「エレメント」、「成分」と言い換えることもできるでしょう。

その要因が物事のはじめの方に位置するのなら、「きっかけ」や「引き金」、「契機」などと言い換えることが可能です。使い方としては「あの笑顔が“きっかけ”で恋に落ちた」や「成功する“要素”には決まったものがある」などが挙げられます。

たったひとつの「原因」とは違い、「要因」にはさまざまなものが含まれています。言い換える場合はそれがどのような性質を持ったものなのかに着目し、より適切な言葉を探すようにしましょう。

原因の類語・言い換え表現

原因は物事の「最初の発生」にまつわる言葉です。「たね」や「もと」、「せい」が類語として挙げられます。「それが喧嘩の“たね”となった」や「こうなったのはあなたの“せい”だ」などと言い換えることができるでしょう。

他にも「もっとも直接的な原因」という意味を持つ「近因」、「間接的に関わっている遠い原因」の「遠因」も類語のひとつです。

  • 原因と要因の類語

    類語などに言い換えることによってそれぞれの言葉の特徴が見えてきます

要因と原因を正しく使おう

一見すると同じような意味に思える「原因」と「要因」。しかし2つは異なる意味を持ち、使えるシーンも分かれています。原因は物事の起こったもとにあるものを指す言葉で、その物事が良かった場合に使うことはできません。要因は物事が起こった際にそれを構成する要素を指す言葉なので、複数ある場合も多く、成功したシーンなどでも使えるのが大きな特徴です。「多くの要因が重なってひとつの原因を作る」と覚えておくのがいいでしょう。

他にも日本語には「誘因」や「起因」、「近因」「遠因」など混同しやすい「因」のつく言葉が多くあります。せっかく日本語を使う国で生きているのなら、一見複雑に思える言葉も自分のものとして、シーンに応じて使えるように適切な言葉を覚えていきたいですね。