永瀬王座が激しい攻め合いからリードを奪い、手堅く押し切る
渡辺明王将への挑戦権を争う、第70期王将戦挑戦者決定リーグ(主催:スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社)のプレーオフ、▲豊島将之竜王-△永瀬拓矢王座戦が11月30日に東京・将棋会館で行われました。結果は128手で永瀬王座の勝利。王将リーグは初参加ながら、いきなり挑戦権を獲得しました。
豊島竜王と永瀬王座のリーグ成績は共に5勝1敗。豊島竜王は永瀬王座に、永瀬王座は広瀬章人八段に敗れたのみです。
プレーオフの対局は、振り駒の結果豊島竜王が先手番となりました。両者の対戦では先手番が12勝2敗と大きく勝ち越しています。どちらも後手番での勝利は1回のみ。この対局まで先手番が7連勝中でした。
本局は角換わり模様の出だしから、永瀬王座が角道を止めて雁木に組みました。雁木に組んでも玉を囲いに行かないのが工夫の順。居玉のまま、9筋の位を取り、攻めの形の構築を優先しました。
玉の守りを固め、右四間飛車の攻撃陣形を組んだ豊島竜王が仕掛けて戦いがスタートしました。角交換から桂交換となり、右四間飛車の攻めが決まったかのように見えましたが、すかさず永瀬王座が反撃に出ます。
△8六歩▲同歩と飛車の歩を突き捨ててから、△9四桂と設置したのが好手順。端歩の突き越しはこの手を見越してのものだったのでしょう。
その後馬を作って飛車を攻めていった永瀬王座に対し、豊島竜王も反撃に出て激しい攻め合いとなりました。しかし、この攻め合いは永瀬王座に軍配が上がります。永瀬王座の飛車の打ち込みがあまりにも厳しく、豊島竜王は受けのためだけに自陣に角を打たざるを得なくなってしまいました。
一方、豊島竜王の攻めはなかなか永瀬玉には届きません。上部からの攻めに対して、居玉の構えは相手の攻めから遠ざかっていて、プラスに働いています。さらに△6一玉と相手の攻め駒の逆サイドへ逃げる手も生じました。
劣勢になった豊島竜王は懸命に粘りましたが、永瀬王座は勝ちを焦らない手堅い指し回しで優位を維持。これでは流石の豊島竜王をもってしても逆転は不可能で、永瀬王座が押し切りました。
王将戦七番勝負へと駒を進めた永瀬王座。タイトル挑戦は昨年の第67期王座戦以来となります。また、2日制のタイトル戦登場は今回が初めてです。
永瀬王座が挑むのは、渡辺王将。両者の対戦成績は永瀬王座の3勝10敗と、少し差を付けられています。タイトル戦では2018年の第43期棋王戦五番勝負で戦っており、その時は2勝3敗で惜しくも永瀬王座が敗れました。直近の対戦は昨年の第32期竜王戦ランキング戦1組決勝で、ここでも渡辺王将が勝利しています。
渡辺王将と永瀬王座による七番勝負は1月10、11日に開幕します。年明けからの番勝負が今から楽しみです。