2020年も残すところあと1ケ月。筆者の住む北海道では雪の季節が着々と近づいていますが、関東以南はまだ紅葉シーズンが続いています。人気の名所に足を運ぶのもいいですが、今年は人混みを避け、自転車で紅葉狩りを楽しむのはいかが?

特に折りたたみ自転車は、街乗りにちょうど良く、バスや地下鉄などに持ち運んで移動でき、便利な一面を持っています。そこで、自転車で街中を散策する魅力や、折りたたみ自転車を購入する際の選び方を、札幌にある「南風自転車店」に聞きました。

  • 折りたたみ自転車に乗って街なかの紅葉を探しに行こう

街を自由に、気軽に散策できる

皆さんも御存知の通り、自転車は歩くよりも早く、ラクに移動でき、車よりもゆったりと周りを見ながら移動できるメリットがあります。店主の有森昭二さんも自転車で散策すると、他の移動手段ではできない「気付きと出会える」と勧めます。

有森さんは以前、東京出張の際に山手線で都内を一周するかのように、自転車で蒲田を出発し、五反田、原宿を巡り、そこから一旦自転車をたたんで電車に乗って巣鴨へ行き、再び自転車で上野、品川まで走ったことがあるそう。

  • 自転車で巡ると、さまざまな出会いや発見がある

その道中で見つけた石碑から、弥生時代の「弥生」が東京都の弥生町(現東京都文京区弥生)から土器が出てきたことで名付けられたと偶然知ったと当時を振り返ります。

  • 有森さんが自転車で見つけた弥生時代の名称の由来

徒歩だと、その先がどこにつながっているか、どうなっているか分からない道をあえて選ぶことはほぼないと思います。また、遠回りするよりも近道を選ぶと思います。ですが、自転車だとその先が突き当たりでも戻ればいいと軽い気持ちで路地に入っていけますし、遠回りもそれほど苦になりません。

自転車での散策は「徒歩よりも行動範囲を広げてくれて、主要なルートから外れて自由に探検ができる楽しさがある」と有森さんは言います。

折りたたみには「乗らない選択肢」もある

では、実際に折りたたみ自転車を手に入れるには、どんなものを選んだら良いのでしょう。ひとくちに折りたたみ自転車と言っても種類はさまざま。専門サイトを調べると、たたみ方だけで大きく3種類あり、タイヤのサイズ、重量、ギヤ比など、ハード面や走行性能にも細かな違いがあります。

有森さんによると、選ぶポイントは「何を重視するか」。折りたたみ自転車には「持ち運びを優先して走りを考えたもの」と、「走りを優先して折りたためるようにしたもの」があり、その中間に「どちらにも特化しない中庸なモデル」があると説明します。

  • 有森さんが考える折りたたみ自転車の3つのタイプ

コンパクトな折りたたみ自転車は、駐輪場がなくても部屋の中で保管でき、自動車などに積めるメリットもあります。

例えば、紅葉散策に出掛けて途中で雨が降ってきた、疲れてしまったという時にはタクシーを呼んで帰ることができ、公共機関によっては折りたたんで乗車することもできます。いわば「乗らない選択」ができるのが、折りたたみ自転車の最大のメリットと言えます。

  • 交通機関によっては輪行袋に入れて持ち運ぶことが可能

そう考えると、走行性能も確かに大事ですが、そこに多少目をつむっても「持ち運びやすさを優先したもの」を選びたいところ。実際、折りたたみ自転車を愛好する人たちも最終的には持ち運びしやすい自転車に行き着く人が多いのだとか。

  • 走行性能を求める人にお勧めのTartaruga Type SPORT(一部オプションを装着)

とはいえ、折りたたみ自転車は持ち運びしやすければしやすいほど高額になっていて、最高峰と称されるMADE IN ENGLANDのメーカー、BROMPTON(ブロンプトン)の自転車は最低でも10万円台後半。初めて購入するには、ちょっとハードルを高く感じるかもしれません。

  • 持ち運びしやすい自転車の最高峰、BROMPTON(ブロンプトン)

そこで、予算的に厳しいという人にお勧めしたいのが中庸なモデル。

そちらは5万円台から購入することができ、なかでも自転車専業のメーカーは間違いがなく、エントリータイプとしてはTern(ターン)の「Link A7」(税別4万8,000円/2021モデル)やDahon(ダホン)の「Route」(税別5万円/完成車)が人気を集めています。

  • エントリーにお勧めのDAHON Route(一部オプションを装着)

正しく乗って、楽しく巡ろう

自転車で出掛ける際は、サドル位置にもご注意を。サドルが低いと余計な力を使ってしまい、無駄に疲れてしまいます。サドルの高さは、座ってペダルを一番下まで下ろしたときに膝が軽く曲がるくらいが最も効率よくペダルに力が加わります。

  • サドル位置を高めにするとペダルに効率よく力が入る

それでは足が着かなくて不安という人は、停まる直前に腰を浮かし、サドル前方のフレームをまたぐようにして両足を着けると安定します。また、スタート時には右側のペダルを上に来るようにして足を乗せ、漕ぐ勢いで腰を浮かせてサドルに乗せるとラクに走り出せます。

  • 漕ぎ出しと同時に腰を浮かせてサドルに乗るのがコツ

また、散策時には走行中もスマートフォンを確認できるホルダーや、モバイルバッテリーを入れておける袋などもあると便利です。日々のメンテナンスとしては、タイヤは空気圧がゆるくなるとパンクしやすくなるので、乗っていなくても1~2週間に1回は空気を入れておくようにしましょう。

  • スマホを装着できるとマップを見ながら散策できて便利

札幌には冬にも自転車の観光ツアーがある

雪が積もらない地域では、紅葉シーズンはもちろん、一年を通して自転車に乗ることができます。特に昨今のコロナ禍においては、3密を避けて移動ができる強い味方となってくれます。散策の際は交通ルールを守って、楽しく乗りましょう。

  • 短い紅葉シーズンを存分に満喫ください

ちなみに雪国の札幌では冬は自転車のオフシーズンだと思われていますが(実際、生まれも育ちも札幌の筆者もそう思っていました)、南風自転車店は冬にも自転車を使った観光ツアーを実施しています。

  • 冬の自転車ツアー

「道路の雪がほどよく圧雪された札幌だからこそできる」と有森さんが企画しているのは、スパイクの付いた太いタイヤのファットバイクで、札幌の街中を巡るツアー。真っ白に染まった冬の札幌でしか見られない光景を散策できます。

観光名所を巡るのとはまた違う日常の札幌と出会うことができ、中でもスキーウェアを着た子どもたちが雪山で遊ぶ姿がとてもキュートで人気なのだとか。ぜひ札幌に来た際は、こちらの散策を楽しんでみてください。

取材協力・監修:南風自転車店

札幌市豊平区豊平4条7丁目3-14