俳優の窪田正孝が主演を務めたNHK連続テレビ小説『エール』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)が27日、異例の“コンサート”で完結。作曲家・古関裕而氏をモデルにした主人公・古山裕一(窪田)と妻・音(二階堂ふみ)の夫婦の物語、そして最終回の“歌のプレゼント”で、タイトル通り、視聴者にエールを届けた。
人々の心を勇気づける音楽を世に送り出してきた裕一と、歌手になる夢を追い続けた妻・音。二人三脚で音楽とともに生きた2人の物語は、多くの感動を呼んだ。そして、最終回は特別編とし、「『エール』コンサート」と題してコンサートを開催。古関氏の名曲を鉄男(中村蒼)、久志(山崎育三郎)、光子(薬師丸ひろ子)ら人気キャラ総出演で届け、裕一指揮による「長崎の鐘」は、 音と出演者全員が平和の祈りを込めて歌い上げた。
脚本も手掛けたチーフ演出の吉田照幸氏は、「最後に古関さんに『ありがとう』という意味を込めて古関さんの曲を歌うというのはこのドラマでしかできないですし、意味があるものなのではないか。しかも、昌子さん(堀内敬子)や岩城さん(吉原光夫)が、あれだけ歌がうまいのに歌っていないという無駄遣いも含めて(笑)、ここで歌うとみんな衝撃を受けるのではないかと思ってやりました」と振り返る。
吉田氏は以前、『紅白歌合戦』をはじめとする音楽番組を担当しており、「どうしてもやりたかった。これだけ歌える人がいて、しかも僕が音楽番組もやっていて、いろんな要素が重なっていた」と、コンサートへの思いは強かった。技術スタッフとして『紅白歌合戦』を撮影しているチームも参加。また、『エール』の音楽を担当した瀬川英史氏が「イヨマンテの夜」の最初のドラを叩いたり、歌唱指導の先生たちがコーラスで参加するなど、『エール』のスタッフが総力をあげて作り上げた。
特別編のコンサートも幕を閉じ、2カ月半の再放送期間も含め8カ月にわたって視聴者にエールを送り続けてきた物語は完結。SNS上では「裕一と音の素敵な夫婦愛に感動しました」「裕一さんと音さんの夫婦愛にエールいただきました」「改めて音楽の持つ大きな力を感じました」「タイトル通り毎日エールをくれました」「タイトルに相応しく日本中にエールをくれた」「この時期の朝ドラがエールであったことに多大なる感謝」「コンサートを観て、涙が出てきた。音楽の力は凄い」と感動と感謝の声があふれた。
コロナ禍において、『エール』というタイトルのもと、夫婦の物語と音楽の力で多くの人にエールを届けた本作。吉田氏は「『エール』というタイトルだったことに、運命的な役割をみんな感じていたと思います。自分たちは何かをみなさんに送らなければいけないという。ただ頑張れ、励ます、明るいとかではなく、悲惨なことや思いもよらない不幸な出来事も含めて描かないといけないという気持ちはすごく芽生えました」と明かす。
その“運命的な役割”は、キャストも感じていた。本編のラストとなった第119回(26日放送)の最後に、二階堂とともに視聴者にメッセージを送った窪田は「世界中を未曾有の不幸が襲う中で、『エール』という名でドラマをやる意義を、裕一を演じながら感じさせてもらいました。少しでも見てくださる皆さんの力にこのドラマがなれたのならば、スタッフキャスト一同本当にうれしく思います」と語りかけた。
予期せぬ事態となったからこそ生まれたものもあった。コロナ禍での撮影においては、「距離をとった芝居はどうすればいいのか」「(劇中の)食べ物はどうすればいいのか」など、それぞれの立場で考え行動する必要があったため、いつも以上に作品への参加感を一人ひとり感じ、強いつながりが芽生えたという。吉田氏は「危機というのは人をつなげる力がある。なんとかしなきゃ、自分も何かできるのではないかと。『エール』はそういう力が生んだものなのかなと思います」としみじみ。
タイトル『エール』に運命的な役割を感じながら作品を作り上げたスタッフ・キャストら。吉田氏は「希望は、心に残る……5年後に『エール』の話が出たときに、『あそこのあれさぁ』と言えるように印象づいていたら本望だなと思います。もしくは、苦しいときに思い出して元気になるというドラマだったらいいなと。これは僕だけではなくみんなの思いだと思います」と願いを込めた。
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