会社を辞めたら失業給付金(失業手当)を受け取れますが、どれくらいの期間、どれほどの金額を受給できるのか気になりますね。そこで本記事では、失業給付金が給付される雇用保険制度の内容と受給要件や受給期間、よくある疑問について解説します。
失業給付金(失業手当)とは? 申請方法も紹介
雇用保険制度では要件を満たす失業者に対して求職者給付が支給されます。そのうち、一般の雇用保険加入者に支給されるのが「基本手当」です。これがいわゆる「失業給付金(失業手当)」になります(※1)。
失業給付金は雇用保険に加入していて、会社の倒産や解雇、自己都合の理由などで離職した人に対し、失業中の生活を安定させながら1日でも早く再就職できるように支援するために支給される手当です。
失業給付金は退職理由によって支給開始時期が異なります。倒産や解雇など会社都合で離職した場合は、7日間の待期を経たあと支給が始まります。自己都合で退職した場合は7日間の待期に加えて、3カ月間の給付制限を経た後に支給が始まります。
この給付制限の期間が変更され、2020年10月1日以降に退職した人は5年間のうち2回までは給付制限の期間が2カ月に短縮されることになりました。失業給付金の支給開始が1カ月早まるようになったのは助かりますね。
受給要件
失業給付金を受給するには、次の要件を満たす必要があります。
- 積極的に働く意思があり、いつでも働ける能力があるにもかかわらず、就職できず失業の状態であること
- 離職日前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あること
(ここでの1カ月とは、働いた日数が11日以上ある月のこと) - 倒産や解雇など会社都合で退職した場合、または雇用期間が更新されずに退職した場合は、離職日前の1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あること
受給期間
失業給付金の受給期間は原則、離職した日の翌日から1年間となっています。ただし、次のような理由がある場合は、受給期間を最長3年間(本来の受給期間1年間+延長3年間=最大4年間)まで延長できます。
- 病気やケガのため、すぐに働くことができない
- 妊娠、出産、育児(3歳未満の子の場合に限る)のため、すぐに働くことができない
- 親族を介護するため、すぐに働くことができない
このほか、2020年2月25日以降、新型コロナウイルス感染症に感染した疑いのある人、新型コロナウイルス感染症の影響でハローワークの来所を控えている人、また新型コロナウイルス感染症の影響で子どもの世話をしなければいけない人も、受給期間を最長3年間延長できるようになりました(※2)。
受給期間を延長したいときは、住んでいる地域のハローワークに受給期間延長申請書や離職票など必要書類を提出します。新型コロナウイルス感染症の影響で来所を控えている場合でも、受給資格決定の手続きにはハローワークへ出向く必要がある点は留意しておきましょう。
申請の流れ
失業給付金を受給する際の手続きは、次のように進みます。
- 1. 書類提出
住んでいる地域のハローワークで求職の申し込みをして、雇用保険被保険者離職票・マイナンバー確認書類・本人確認書類・本人名義の預金通帳などの必要書類を提出・提示します。
- 2. 受給資格の決定
ハローワークにおいて、受給要件を満たしているか確認し受給資格の決定と離職理由の判定が行われます。
- 3. 受給者初回説明会
受給資格の決定が行われた後、受給者初回説明会の日時が伝えられます。この説明会への出席は必須です。説明会当日に雇用保険受給資格者証と失業認定申告書を受け取ります。また、第1回の失業認定日が伝えられます。
- 4. 失業の認定
原則、4週間に一回、失業の認定が行われます。指定された失業認定日にハローワークへ出向き、失業認定申告書に求職活動の状況を記入し、雇用保険受給資格者証とともに提出すると失業の認定が行われます。
- 5. 失業給付金の受給
失業が認定されると、認定日から通常5営業日で指定した金融機関の口座に失業給付金が振り込まれます。こうして、所定給付日数が経過するまで失業の認定と受給を繰り返します。
失業給付金の受給額と給付期間の確認方法
次に失業給付金の受給額と給付期間を確認する方法を紹介します。
受給額の計算方法
失業給付金はどれくらいもらえるのか、気になりますね。そこで、失業給付金の受給額の計算方法をご紹介します。
受給額を決める基本となるものが「基本手当日額」です。基本手当日額を求めるには、まず賃金日額を求めます。賃金日額は、離職日直前の6カ月に支払われた賃金の合計を180で割ることで算出できます。
<計算式1>
賃金日額 = 離職日の直前6カ月間に支払われた賃金(賞与等を除く)÷180
こうして求めた賃金日額に給付率をかけて基本手当日額を求めます。
<計算式2>
基本手当日額 = 賃金日額×給付率
おおよその基本手当日額は、賃金日額の50% ~80% (60歳~64歳の人の場合、45% ~80% )です。この際、賃金の低い人ほど給付率は高くなります(※3)。また、基本手当日額には限度額が設定されています。
<基本手当日額の上限額>
年齢 | 上限額 |
---|---|
30歳未満 | 6,850円 |
30歳以上45歳未満 | 7,605円 |
45歳以上60歳未満 | 8,370円 |
60歳以上65歳未満 | 7,186円 |
(※上記は2020年8月1日現在の金額です)
失業給付金が給付される期間については、以下のように離職理由や年齢によって「所定給付日数」が決まっています(※4)。
自己都合退職や契約期間の満了による退職、定年退職の所定給付日数
被保険者期間 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
65歳未満の場合 | 90日 | 120日 | 150日 |
倒産や解雇による離職の場合の所定給付日数
被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
失業給付金の気になる疑問
ここまで失業給付金の内容を解説してきました。まだ疑問点が残っている人もいるでしょう。そこで、よく寄せられる質問についてお答えします。
Q : 退職したら家族の扶養に入る予定ですが、それでも失業手当はもらえますか?
A : 扶養されていても、受給要件を満たしていれば失業手当を受給することはできます。ただし、失業手当を受給することで1年間の収入が130万円を超えたら、健康保険の扶養に入ることはできません。言い換えると、失業保険の基本手当日額が3,611円以上なら扶養に入れないことになります。
Q : 失業給付金の受給中にアルバイトをしてもいいですか?
A : 自己都合退職で給付制限となっている期間であれば、アルバイトは認められています。
ただし、以下の場合は就職しているとみなされ、失業給付金を受給できなくなります。
- 週の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みがある場合
- 週の所定労働時間が20時間以上、かつ、週の就労日が4日以上の場合
- 給付手続きをし、受給資格が決定した日から7日間の待期期間中である場合
また、失業給付金の受給中もアルバイトはできますが、失業の認定日にアルバイトをしたことを必ず申告しましょう。1日4時間以上、週20時間未満であれば、給付額は減ったとしても失業給付金を継続して受給できる場合があります。
Q : 傷病手当金と失業給付金は同時に受給できますか?
A : 本来、傷病手当金は病気やケガで仕事を休んでいるときに受給できるものです。一方で、失業給付金は仕事をしたくても仕事に就けない場合に受給できるものです。このように、対象者の前提が異なるので、傷病手当金と失業給付金を同時に受給することはできません。
退職前から仕事を休んで傷病手当金を受給している場合、退職後も条件を満たせば傷病手当金を受け取ることは可能です。しかし、失業給付金を同時に受給することはできません。このような場合は、失業保険の受給期間を延長する手続きをしましょう。失業手当は最長3年間延長することが可能です。
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失業給付金(失業手当)は、働く意思があるのに仕事に就けないときに受給できるものです。これまで雇用保険に加入しており、失業給付金の受給資格があるのなら、求職活動をしながら受給の手続きをしましょう。
もし、病気や親の介護などですぐに受給できないときは最長3年間(本来の受給期間を加えたら最大4年間)まで延長できるので忘れず受給期間の延長をしましょう。また、失業の認定日には求職活動やアルバイトをしたことなどを正しく申告してくださいね。
参照 :
(※1)厚生労働省職業安定局・ハローワーク インターネットサービス「基本手当について」
(※2)厚生労働省 東京労働局「新型コロナウイルス感染症に伴う雇用保険の受給期間延長について」
(※3)厚生労働省「賃金日額・基本手当日額の変更について」
(※4)厚生労働省 東京労働局「基本手当の所定給付日数」