生活保護を申請するときは、どのような条件があるのか事前に確認しておきたいものです。そこで今回は生活保護の概要と申請条件をご紹介するとともに、受給できるかどうか迷いやすい個別事例について受給の可否を解説します。

  • 生活保護の申請条件は? 事例でわかりやすく紹介

    生活保護の申請条件は? 事例でわかりやすく紹介

生活保護の申請条件と種類

生活保護制度とは、収入や資産がわずかで生活に困窮し、なおかつ経済的な支援をしてくれる親族がいない人に対し生活に必要な費用を給付する制度です。厚生労働大臣が定めた基準で算出した最低生活費と世帯全員の収入を比較し、預貯金や不動産、受給可能な年金などの資産を差し引いたうえで最低生活費を下回る額を給付します。(※1)

生活保護を受ける前提条件

生活保護を受けるには、以下のような前提条件を満たしている必要があります。

  • 生活保護は世帯単位で行うものであるため、世帯全員が利用可能な資産、能力のほかあらゆるものを生活費のために活用すること
  • 資産の活用 : 預貯金、生活で利用していない家や土地などの不動産を売却して生活費に充てる
  • 能力の活用 : 働くことが可能な場合は、その能力に応じて働く
  • あらゆるものを活用 : 受給可能な年金や健康保険など、他の制度での給付金を活用する

また、生活保護の要件には入っていませんが、扶養義務者(配偶者、子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母など)から扶養が受けられる場合は、そちらを優先することになっています。そのうえで、生活保護を受給するには、次の要件を満たす必要があります。

受給対象の要件

  • 世帯収入が定められた最低生活費を下回っている
  • 預貯金や不動産など活用できる資産がない
  • 受給可能な年金や給付金を受給しても最低生活費に満たない
  • 働くことができない、あるいは働けるところがない

前提条件と要件を満たした場合に限り、最低生活費に満たない分を生活保護費として受給することができるのです。(※2)

生活保護の種類

生活保護には下記の通り8種類の扶助があります。これらの中から生活保護受給者が必要であるものが支給されます。

扶助の種類 支給内容
生活扶助 食費や光熱費など生活に必要な費用
住宅扶助 住まいの家賃
教育扶助 義務教育に必要な学用品などの費用
医療扶助 医療機関を受診する際の費用(本人負担なし)
介護扶助 介護サービスを受ける際の費用(本人負担なし)
出産扶助 出産に必要な費用
生業扶助 高等学校等就学費や就労に必要な技能の取得に必要な費用
葬祭扶助 葬儀費用

ほかにも「一時扶助」や「進学準備給付金」というものもあります。「一時扶助」では、長期入院していた人が退院後に家が必要になったり、自然災害で家がなくなってしまったりした際の転居などに支給されます。

「進学準備給付金」は2018年から始まった制度で、生活保護従者世帯の子どもが大学などに進学した際に受給できます。金額は自宅通学か自宅外通学かで変わり、それぞれ「自宅通学 : 10万円」「自宅外通勤 : 30万円」となっています。(※3)

生活保護の申請から受給までの流れ

生活保護を申請してから受給するまでの流れは、以下の通り。(※4)

  • 1. 事前に相談
  • 2. 生活保護の申請
  • 3. 生活保護受給の調査
  • 4. 生活保護費の支給

以下、順を追って説明します。

1. 事前に相談

生活保護は住んでいる地域を管轄する福祉事務所に申請します。 相談するのは福祉事務所の生活保護担当ですが、福祉事務所がない自治体は役所に窓口があります。

2. 生活保護の申請

担当者に相談して生活保護の利用が決まったら、次に生活保護申請書を提出します。申請書とあわせて添付資料(給与明細や収入・資産申告書)など必要書類も提出しましょう。

3. 生活保護受給の調査

生活保護を申請すると、以下の調査が行われます。

  • 生活状況を把握するための家庭訪問
  • 預貯金や不動産などの資産調査
  • 扶養義務者による援助が可能かどうかの調査
  • 就労による収入や年金などの給付の調査
  • 就労できるかどうかの調査

4. 生活保護費の支給

上記の調査をして生活保護が必要と判断されると、原則申請から14日以内に生活保護費の支給が決まります。生活保護費として支給されるのは、世帯全員の収入の合計額が最低生活費を下回る場合のみです。

【最低生活費】-【世帯全員の収入合計額や年金、預貯金など】=【生活保護費の支給額】

生活保護費の受給開始後は以下のような決まりがあります。これに従わなければ支給停止となることもあるので注意が必要です。(※4)

  • 毎月収入状況の報告
  • 年に数回、福祉事務所のケースワーカーによる家庭訪問
  • 就労が可能な場合は、就労の助言や指導の実施
  • 世帯に収入が得られるようになった場合は、福祉事務所へ報告 など

生活保護の受給対象を個別事例を基に解説

家庭の状況によっては、生活保護を受給できるかどうか迷うことがあるかもしれません。そこで、いくつかの例をもとに、生活保護の受給ができるかどうか解説しましょう。

事例1. 持ち家がある場合

生活保護では、生活で利用していない家屋や土地は売却して生活費をつくるために活用しなければなりません。けれども、自分たちが住んでいる家の場合はそれが持ち家であっても生活保護の受給はできます。しかし、その持ち家が著しく高価なものの場合は売却することを求められるケースもあります。(※5)

ただし住宅ローンが残っている場合は生活保護費を使っての返済はできません。そのため、持ち家の売却を求められる可能性があることを留意しておきましょう。

事例2. 自動車を持っている場合

基本的に自動車の所有は認められていません。しかし、以下の場合は例外として所有が認められています。(※6)

  • 仕事で自動車を使用している
  • 障害がある人が通勤や通学に車を使っている
  • 公共交通機関が使えない早朝や深夜に自動車で通勤している
  • 公共交通機関が利用しづらい地域に住んでいて、通勤や通院など生活に自動車が欠かせない
  • 1年程度で就職できる見込みがある

事例3. 親族からの援助が受けられる場合

親族からの援助は生活保護の要件には含みませんが、もし経済的援助が得られる状況であればそちらを優先することになっています。とはいえ、援助があるからといって生活保護を受けられないというわけではありません。援助された額は生活保護費から差し引かれます。

事例4. 実家に住んでいる場合

生活保護は世帯単位で受給するものです。もし、自分の収入がわずかで生活に困っていたとしても同居する親の収入と合算して生活保護が必要かどうかを調査されます。そのため、親の収入によっては生活保護を受けられない場合があります。

ただし、同じ家に住んでいたとしても別居する予定で生計は別になる、あるいは親が介護施設に入所するなど世帯分離する理由があるのであれば、生活保護が認められる場合があります。

どうしても最低生活費が得られない場合は、早めに相談しましょう

生活保護の申請条件は、預貯金などの資産がないこと、働く能力はあっても仕事がなかなか見つからない、年金など他に受給できるものがないなどで、どうしても生活費を得ることができない場合に受給できるものです。そのため、まずは資産や働く能力を活用することが求められます。

今回ご紹介した個別事例も参考に、さまざまなものを活用しても最低生活費に満たない場合は、できるだけ早く住所地を管轄する福祉事務所に相談されることをおすすめします。

参照 :
(※1)厚生労働省「生活保護制度
(※2)NPO法人Posse「生活保護Q&A
(※3)青森市「進学準備給付金(生活保護制度)
(※4)宮城県「生活保護の権利と義務について
(※5)大阪弁護士会「生活保護に関するQ&A
(※6)厚生労働省「「生活保護制度」に関するQ&A

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