「目元美人」と表現される女性の特徴の一つとして「長いまつ毛」が挙げられるだろう。近年は、自分のまつげに人工まつげを装着する「まつげエクステ(まつエク)」をしてまつ毛を盛る女性も増えてきているが、そんな長いまつ毛やボリューム豊かなまつ毛がまつ毛に生息する「まつ毛ダニ」の温床となっているかもしれないのだ。
本記事では、美容皮膚科医のやながわ厚子医師の解説のもと、まつ毛ダニの正体やまつ毛ダニの予防策などについて紹介していく。
まつ毛ダニとは
まつ毛ダニ、あるいは顔ダニと呼ばれるダニの正体はニキビダニの一種である「デモデックス」。まつ毛の毛根部や皮脂腺、マイボーム腺などに生息し、体長は種類にもよるが0.2~0.4mm程度で肉眼では見えないサイズが一般的だという。
「海外のデータでは20歳以下ではほとんどまつ毛ダニが認められず、40歳代までは30%くらいの方に、60歳以上では70%に認められたという報告もあります。また、男性よりも女性の方がやや多いというデータもあります」
まつ毛ダニが繁殖すると出る症状
まつ毛ダニが繁殖するとさまざまな症状が出現するようになる。代表的なものは以下の通りだ。
- 結膜炎
- まぶたの腫れ
- かゆみ
- 目の乾き
- 大量の目やにが出る
- 目がごろごろする
- まつ毛が抜けやすくなる
- まつ毛が生えにくくなる
「まつ毛ダニが生息しても大半は無症状ですが、自覚症状としては『まつ毛の生え際がかゆい』『結膜炎』などが代表例としてあげられます。そのほか、フケのようなものがまつ毛の生え際に出たり、まつ毛の生え方が乱れ、ひどくなるとまつ毛が生えなくなったりするケースもあります」
まつ毛ダニが繁殖する原因
まつ毛ダニが繁殖する原因は、簡単に言えば「不衛生な目元周り」にある。以下にその詳細をまとめたので、目元周りを強調するようなメイクをしている女性は特に注意するようにしよう。
まつ毛エクステやつけまつ毛のやりすぎ
まつエクは汚れが付着しやすいうえ、クレンジング時はエクステが取れないよう力を加減してしまうため、汚れがたまりやすい。そういった汚れはまつ毛ダニにとって格好の餌となるので、まつエクを使用している女性は丁寧に目元ケアをする必要がある。また、つけまつ毛は同じものを何度も使用すれば当然汚れがたまっていくため、使いまわしは避けるようにしよう。
アイメイクのクレンジング不足
上記のまつエクだけではなく、ウォータープルーフのマスカラやアイラインも、自分ではクレンジングしたつもりでいても、どうしても目元に汚れが残ってしまいがち。クレンジングをする際は、アイメイク専用のクレンジング剤を使用し、目元だけを先にするといいだろう。
「すでに頬や背中などにニキビダニによる症状がある方や、皮膚疾患のためにステロイドを長期使用していらっしゃる方は、まつ毛ダニが繁殖しやすい可能性が高くなることが考えられます」
まつ毛ダニの治療法
現時点ではまつ毛ダニに対する有効な薬がないため、薬物療法は望めない。やながわ医師は、上記のような症状が継続的に出現するようならば、眼科で受診すべきと助言を送る。
「まつ毛ダニは一度棲みつくと簡単には取り除くことはできません。症状によっては専門医により駆除する治療が行われるケースもあり、最悪の場合は手術の必要も出てくるかもしれません」
まつ毛ダニの予防法
まつ毛ダニは一度繁殖してしまうと治療が困難なため、ダニを繁殖させないための予防が肝要となってくる。誰でも実践可能な対策は以下の通りだ。
(1)目の周りをしっかり洗浄する
「目元周りを清潔な状態を保つことが、まつ毛ダニ対策には最重要となります。目をこすらず、丁寧にクレンジングを行うようにしましょう」
(2)専用器具を用いたクレンジングをする
「つけまつ毛の粘着剤や過度なアイメイクはクレンジングで落としきれないこともあるため、専用のメイク落としを使用してください。まつ毛エクステを使用している人はまつ毛エクステ専用のクレンジング剤を使用するようにしましょう。そして、使用するメイク道具も定期的に洗浄し、清潔な状態で使用しましょう。目の周りをきれいにできるまつ毛専用のシャンプーもあります」
(3)目の周りを温める
まぶたの縁にあるマイボーム腺は眼球の表面に脂の膜を作り、涙の蒸発を抑制する役割などがある。ただ、脂は冷えると固まってまつ毛ダニの温床となる可能性もある。皮脂は温めると溶け出すため、蒸しタオルなどで目元を温めるといいだろう。
目の周りをきれいにしよう!
まつ毛ダニを根絶させる薬がない以上、日頃からまつ毛ダニを寄せ付けないようなまつ毛の環境を整えておくことが大切になってくる。
「まつエクやぱっちりアイメイクなしでは外出できない!」という女性は、休日をノーメイクで過ごすなどの工夫をして適度にまつ毛に休息を与えるだけでも違ってくるはず。一生付き合っていく自分の大切なまつ毛だけに、きちんとしたケアを心がけるようにしよう。