フェルミ推定とは、コンサルティングファームやスタートアップ企業のケース面接に取り入れられることのある問題の一種です。ただ、独特の考え方や事前の基礎知識が必要なため、ある程度慣れていないと解きにくい問題でもあります。
そこで、今回はフェルミ推定とは何か、面接官が確認するポイントや例題とその解き方について解説します。最後に、就活対策としてフェルミ推定を解く力の鍛え方についてもまとめましたのでぜひ最後までご覧ください。
フェルミ推定とは
フェルミ推定(Fermi estimate)とは、その場では予想のつかない質問に対して、手がかりを元に論理的な思考力を駆使して解答を導く問題の解決方法です。
フェルミ推定の問題を面接で使う場合、面接官は抜け漏れのない完全な解答を求めているわけではありません。フェルミ推定で抜け漏れの「少ない」解答を「考え抜く」力があるかどうか、面接官とのやり取りで解答をブラッシュアップする柔軟性がかるかどうかなどを見ています。
以下ではフェルミ推定とよく混同されるケース面接との違いや、フェルミ推定の具体例について、より詳しく説明します。
フェルミ推定とケース面接との違い
特にコンサルティング系企業では、「ケース面接」と呼ばれるタイプの面接が行われます。ケース面接でもフェルミ推定と同じように、論理的な思考力を駆使して数字の概算を考える問題が出る点では同じです。ケース面接の場合は、フェルミ推定で数値を推論から導いた後、対策案の立案まで求められる点が違います。
フェルミ推定の具体例
有名なフェルミ推定の問題には次のようなものがあります。
- 日本にある電柱の数はいくつでしょうか?
- 世界中で今この瞬間寝ている人の数は何人でしょうか?
一見してその場では答えに窮する問題ばかりです。この問題を、世界・日本の人口や日常経験から推定できる数などの知識から順序だてて推論することで一定の解答を導き出します。
面接官がフェルミ推定で確認するポイント
面接官がフェルミ推定で確認すると言われている点は、主に次の3点です。
- 論理的な思考力
- コミュニケーション力
- 一定時間で問題点を把握してまとめるスピード
これらの観点についてもう少しくわしく解説します。
論理的な思考力
論理的な思考力とは、因果関係を整理し順序だてて説明できる思考力のことです。フェルミ推定では、与えられた条件と自身が身につけている数値などの知識を総動員し、抜け漏れの少ない形で推論を導き出すこととなります。
ただし、面接では完ぺきな解答そのものが求められているわけではありません。そこにいたる過程の考え方に論理的な矛盾や飛躍がなく、抜け漏れが少なくなるよう工夫されているかどうかを見られていると考えてください。
コミュニケーション力
面接の場では、フェルミ推定を駆使して解答するまでの間や、解答を一度出した後に面接官との対話があるケースもあります。面接官とのやり取りがあれば、コミュニケーション力も確認事項のひとつです。
面接官とのやり取りを通じて、解答をブラッシュアップすることで、相手との対話を通じて臨機応変に対応する力も見られています。
一定時間で問題点を把握してまとめるスピード
面接でフェルミ推定の問題が出題される場合は、一定の時間を区切っての解答が求められます。規定の時間内で問題点を整理して解答をまとめるスピードも、面接官が確認するポイントです。
フェルミ推定は、未経験者では混乱して解答を時間内に出すだけでも困難です。しかし、練習問題を解答していくことで解き方を身につけられます。フェルミ推定に慣れるため、まずは例題と解き方について、次項で確認しましょう。
フェルミ推定を解く上で覚えておくべき数字
フェルミ推定を解くにあたっては、大前提として基本的な統計値を覚えておく必要があります。
ここでは最低限覚えておきたい基本的な統計値を紹介するので、ぜひ覚えてみてください。
- 人口:1億2,600万人
- 世帯:5,900万世帯
- 国土面積:約37万8,000万km2
- 可住地:約30%
- 平均寿命:84歳
- 労働力人口:約6,600万人
- 1年の出生数:約87万人
- 大学進学率:約54%
- 大企業の数:1.1万社
- 中企業の数:350万社
フェルミ推定の例題と解き方
フェルミ推定の解き方は、大きく分けて次の4段階で進めます。
- 大まかな枠組みを設計
- 具体的な数値をどう導き出すかを考える
- 実際に計算する
- 妥当性を検証する
フェルミ推定の例題と説き方について、「日本にある電柱の本数」を例題として解説します。
大まかな枠組みを設計する
まずは、問われた問題はどのように考えれば解答を導き出せるか、という論理展開の大枠を検討します。問題の解答は、日本の面積に面積あたりの電柱の本数を乗じた数、と仮定しましょう。
ただ、日本の国土は山や森林が多く、人が住める「可住地」は国土の約30% です(※1)。そのため、導き出した数字に30% をかける必要があるとも仮定します。
具体的な数値をどう導き出すかを考える
次に、具体的に数値をどう導き出すかを考えてます。
日本の面積は、約37万8,000km2です。日本に関する問題はよく見られるため、暗記しておくべき数字として押さえておきましょう。
次に、1km2あたりの電柱の本数について検討します。正確な数字はわからないため、自分の体験から1km2あたり電柱が何本あるかの仮説を導き出します。
自分の生活上の体験では、電柱はおよそ50m四方に1本立っていると仮定しましょう。面積で換算すると、50m × 50m=2,500m2あたりで1本です。よって1km2(1,000,000m2)あたりなら、1,000,000 ÷ 2,500で400本です。
以上から、解答を導き出すために必要な数字は出そろいました。
実際に計算する
次に、実際に計算しましょう。37万8,000 × 400 × 0.3 = 4,536万本です。
妥当性を検証する
最初の推論に、何か考慮漏れがないかを検討して、最終的な解答とします。電柱の数でいえば、電線を地下に通す無電線化を検討する必要や、過疎地域と都市部では電柱の密集度が違うなど、考慮ポイントが洗い出せたら、それらの要素から数値を仮定、あるいは計算して導き出し、解答の修正をしていきます。
日本の電柱数は、2016年度時点での日本の電柱数は3,407万1,436本です(※2)。導き出した解答よりも1,000万本以上の誤差がありますので、もう少し考慮するべき事項があると考えられます。
自分でフェルミ推定の問題を解くときは、自分の推論結果と実際の解答を見比べて、どういう観点が足りなかったのかを検討しましょう。自分が見落としがちな観点が見つかることもあり、抜け漏れの少ない論理を展開する力が身につきやすくなります。
フェルミ推定を解く力の鍛え方
フェルミ推定を解く力を鍛える方法について3点ほど紹介します。
簡単な問題から解いてみる
最初から難しい問題に取り掛かっても、なかなか要領はつかめません。シンプルに解答が導き出せる簡単な問題から解いてみて、推論の構築方法や覚えておくべき数字は何かを実感として確認しましょう。
参考書籍で練習問題を解く
フェルミ推定に関する参考書籍を購入して、練習問題を何度も解くことも、フェルミ推定をスムーズに解く力になります。
注意したい点は、推論過程や解答そのものを丸暗記しないこと。面接で見られているのは、その場で推論を素早く構築する力です。丸暗記の解答では、面接官に気づかれることもあるので要注意です。
面接官との対話で精度を上げていくことを考えて練習
自習だけでは難しいかもしれませんが、面接官との対話で解答の精度を上げていく練習も有効です。同じコンサル系で面接を予定している友人がいれば、お互いの解答を見て指摘し合い、その指摘を吸収して解答を再構築する練習も有効でしょう。
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フェルミ推定は、コンサルティング会社やスタートアップ企業などで利用される問題の解答方法です。フェルミ推定やケース面接が行われることがわかっている場合、問題の傾向や丸暗記しておくべき各種数値を知り、何度も問題を解いて自分なりのコツをつかみましょう。
フェルミ推定の具体的な問題と解答方法については、関連記事で紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
あわせて読みたい : フェルミ推定の練習問題集 - 解くコツと重要数字を紹介
参照 :
(※1)JICE(国土技術研究センター)「国土を知る / 意外と知らない日本の国土」
(※2)NPO法人・電線のない街づくり支援ニューラルネットワーク「日本の電柱の数」