フェルミ推定は、問題を何度も解くことで就活の面接対策でも役立てられるようになります。ただし、前提となる数字や、問題を解くポイント、テクニックを事前に知っておかなければ時間内に問題を解くことは難しいでしょう。
本記事では、フェルミ推定の問題を解くためのポイントや、丸暗記をしておきたい基本的な数字について解説します。また、フェルミ推定の練習問題と解答の考え方の例もまとめました。これから就活でフェルミ推定に取り組みたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
フェルミ推定の問題を解くポイント
フェルミ推定の問題を練習で解くときに意識したいポイントを2点解説します。
前提となる数字は覚える
フェルミ推定では、前提知識として知っておきたい統計値の知識が不可欠です。一般常識レベルの統計値や、よく問題に必要となる統計値は丸暗記しておかなければ問題を時間内に解くことは難しいでしょう。
限られた時間で解答をまとめる練習をする
フェルミ推定の問題を解く練習を就活対策として行うなら、限られた時間内で解答を出す練習が必要です。正確な数字を出そうとすればするほど、検討しなければならない数字が増え、まとめる時間もかかってしまいます。
時間内に問題をまとめるには、ある程度割り切って前提を定めることも重要です。時間内に解答をまとめる練習をすることで、全体を俯瞰して割り切る部分とこだわる部分を見極めて、時間内に解答できるようになります。
フェルミ推定を解くのに押さえておきたい基本的な数字
フェルミ推定を解くには、基本的な統計値をいくつか知っておきましょう。統計値の中には変動が多いものもあるため、概算値を覚えておく方が解きやすいです。ただ、念のため、詳細な値を参照できる公的なサイトも紹介します。
フェルミ推定に使える統計(日本版)
日本に関する統計の概算値と、詳細データの参考サイトは以下の通りです。
統計値の名称 | 概算値 | 参考サイト |
---|---|---|
人口 | 1億2,700万人 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」 |
世帯 | 6,000万世帯 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」 |
国土面積 | 約37万8,000万km2 | JICE「以外に大きい日本の国土」 |
可住地 | 約30% | JICE「低地に広がる日本の都市」 |
平均寿命 | 84歳 | 厚生労働省「簡易生命表(基幹統計)」 |
労働力人口 | 約6,600万人 | 総務省統計局「労働力調査 調査結果目次(全国結果)」 |
1年の出生数 | 約87万人 | 厚生労働省「人口動態統計」 |
大学進学率 | 約54% | 文部科学省「令和元年度学校基本調査(速報値)の公表について」 |
大企業の数 | 1.1万社 | 中小企業庁「中小企業の企業数・事業所数」 |
中企業の数 | 350万社 | 中小企業庁「中小企業・小規模事業者の数」 |
これだけの情報を暗記しておくと、フェルミ推定の問題に取り組む際、解答を導き出すための引き出しが増えます。
フェルミ推定に使える統計(世界版)
世界に関する統計のうち、フェルミ推定の問題を考えるのに役立つ数値をいくつか紹介します。
統計値の名称 | 概算値 |
---|---|
人口 | 77 億人 |
地球の表面積 | 5億km2 |
海と陸の面積の割合 | 7 : 3 |
世界の国の数 | 195カ国 |
世界の統計を調べるには、総務省統計局の「世界の統計」が便利です。最新の情報が掲載されていますので、自分で気になる統計値を調べて覚えておきたい場合に活用してください。
その他の基本的な数字
他にも、フェルミ推定を解くために知っておくといい数字としては、アメリカや中国、日本のGDP、日本の駅数、東京都の人口と面積などがあります。
また、自分が住んでいる都道府県の面積や人口といった基本的な数値を覚えておくと、問題に解答する際ベースとして使えることも多いので確認するのもおすすめです。
実際にフェルミ推定の問題を解いているうちに、知っておきたい数字が出てきたら、自分で調べて覚えるようにするといいでしょう。
フェルミ推定の練習問題
ここからは、フェルミ推定の練習問題をいくつか紹介します。前提確認を提示して、前提から計算の公式を組み、数値を当てはめて解いていくという流れで解き方を整理しました。
ここで提示している問題の解き方にも前提の抜け漏れがあると考えて、自分で前提を検討してみてください。
1.東京都にある電柱の数は?
<前提確認>
1km2あたりの電柱数を推定して計算する前提とします。
- 東京都の面積は 約2,200km2(統計値)
- 面積あたりの電柱数は経験値でだいたい5mに1本、5m2に2本と推定(仮定による数値)
- 日本の可住地は約30% だが東京都は60% 程度と仮定(仮定による数値)
<前提から計算の公式を組む>
1. 1km2辺りの電柱数=(1km2÷5m2)×2本
2. 東京都にある電柱の数=東京の面積×面積当たりの電柱数×60%
<数値を当てはめて計算>
1. 1km2辺りの電柱数=200×2本=400本/km2
2. 東京都にある電柱の数=2,200km2×400本/km2×60% =52万8,000本
この問題に妥当性の検証として他の要素がないかを探してみましょう。例えば、電柱は地下化しているがその分は考慮の必要があるかどうか、などです。
2.日本で使用されているPCの数は?
<前提確認>
パソコンは1人1台で使うものであるため使用者数イコール使用PCの数と仮定します。1人で複数台所有している人もいますが、あまり多くないと考えここでは考えません。また、高齢者はあまりパソコンを使用しないと考え、ここでは無視します。
- 日本の人口は1.2億人(統計値)
- パソコンを利用している人(仮定)
- 仕事でPCを使用している人=労働者人口約6,000万人(統計値)
- 学校でPCを使用している人=小学生以上の学生(※2020年からのプログラミング教育を加味)
- プライベートでPCを使用している人=若い世代はスマホメイン、40代以上はPCも多いと考え、仮に労働者人口の50% で設定
<前提から計算の公式を組む>
パソコンを利用している人は、仕事・学校・プライベートでPCを使用している人の合計と考えます。
- 仕事でPCを使用している人
仕事でPCを使用している人=労働者人口
- 学校でPCを使用している人
小学生以上の学生の人数=1年あたりの出生数×12年(小・中・高)+1年あたりの出生数×大学進学率50% ×4年
- プライベートでPCを使用している人
プライベートでPCを使用している人=労働者人口×50%
<数値を当てはめて計算>
- 仕事でPCを使用している人
仕事でPCを使用している人=約6,000万
- 学校でPCを使用している人
学校でPCを使用している人=約100万人×12年+約100万人×大学進学率50% ×4年=1,200万人+200万人=1,400万人
- プライベートでPCを使用している人
プライベートでPCを使用している人=約6,000万×50% =3,000万人
6,000万+1,400万+3,000万=1億400万台
その他の練習問題
他にも、練習するのにいいフェルミ推定の問題をいくつか紹介します。
- 日本にいるネコの数は?
- 地球上にアリは何匹いる?
- 大型バスにゴルフボールはいくつ入る?
- 世界中で今この瞬間寝ている人は?
先ほどと同じような手順で実際に問題を解き、フェルミ推定の解き方に慣れましょう。
フェルミ推定を解いた後のまとめ方
フェルミ推定を解いた後は、面接官に伝わるような論理構成でまとめる必要があります。まとめる際のポイントを3点紹介しますので、この形に添って解答をまとめましょう。
話の構成は結論を最初に持ってくる
フェルミ推定で解答した結果どうだったかを最初に説明します。「日本にある電柱の本数」を問われていた場合は「日本にある電柱の本数は〇〇です」と最初に結論を持って来ましょう。
こちらも注目 : 日本の電柱数は何本? 「フェルミ推定」で答えを導こう
仮説を立てたプロセスを細かく伝える
結論の次に、仮説から計算式を順番に説明しますが、ここで重要なポイントは、仮説を考えた過程を細かく伝えることです。
例えば、タクシーの需要について検討したとき、単純に需要を羅列しただけであった場合を考えてみましょう。
タクシーの需要を以下のように洗い出しました。
・終電後の帰宅
・買い物などで多くなった場合の移動
・旅行者の移動
これだけでは、どのように検討して需要を洗い出したのかがわからず、その仮説の全体像が面接官にも伝わりにくくなります。
タクシーの需要について、以下のように仮定して洗い出しました。
1. 居住者の仕事関係 : 終電後の帰宅
2. 居住者のプライベート関係 : 買い物などで多くなった場合の移動
3. 居住者以外の移動 : 旅行者の移動
このような形で検討の過程が見えるようにまとめると、面接官も抜け漏れを指摘しやすくなります。
仮説に沿って計算式を作成
仮説を整理した後は必要な情報を提示します。具体的な数値はすでに覚えている統計値と、自分で推論から導き出した数字とをグルーピングして説明しましょう。ある程度割り切って前提を決めた部分は「ここは前提としてこう決めました」と説明することも忘れないでください。
ここまでできたら、検討の過程を細かく示しながら計算式を組み立てましょう。フレームワークにあてはめて機械的に作ったのとは違い、自分で考えながら論理を構築したことが面接官に伝わります。
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フェルミ推定の問題は、慣れないと難しく感じるものです。しかし何度か練習することで解答するコツが理解でき、より速く、より抜け漏れの少ない論理構築ができるようになります。
また、自分で問題を解くだけでなく、解答の内容を精査して抜け漏れを探し、自分で何度か解答をブラッシュアップする練習もしましょう。実際の面接では、面接官とのやり取りの中で解答を練り直すことも重要です。柔軟で迅速な対応ができるように、自分でいろいろ工夫してフェルミ推定の問題を解くようにしましょう。