パナソニックは、55V型の透明有機ELディスプレイモジュールを商品化し、日本と台湾やシンガポールなどのアジア大洋州市場を皮切りに、12月上旬から順次グローバルに発売を開始する。価格はオープンプライス。
背景が透けて見える透明ディスプレイで、空間を遮断せずに周囲の環境に溶け込み、実物に重ねて映像を表示するなど多様な表現が可能。商業施設やラウンジ、美術館などへの導入を想定している。
パナソニックは2016年以降、IFAやCES、ミラノサローネなどの展示会で透明ディスプレイの試作品を展示し、改良を重ねてきた。同社は「5Gなど通信インフラの進化やコンテンツの多様化も加速する中、新たな映像表現が可能な透明ディスプレイへの期待の声が多く寄せられたことを受け、今回の商品化に至った」と説明している。
1,920×1,080ドットの透明有機ELパネルを採用。画素ごとに配置された有機EL素子が自ら発光するためバックライトが不要で、色鮮やかな高画質を実現する。また、広視野角で斜め方向からでも見やすく、デジタルサイネージ(電子看板)やショーウィンドウなど広い空間での表示に適するという。画面有効寸法(幅×高さ)は1209.6×680.4mm。
さらに独自開発の調光ユニットにより、光の透過率を電気的にコントロール。透明モードと遮光モードを切り替えられ、遮光モードでは調光ユニットの透過率を下げてパネル後方からの光透過を抑え、明るい環境下でも背景が見えない、黒の引き締まった高コントラストな映像を表示できるという。なお、調光ユニットを備えた「TP-55ZT110」に加えて、調光ユニットなしの「TP-55ZT100」も用意する。
ディスプレイ部の厚みは1cm未満(55ZT110は7.6mm、55ZT100は3.8mm)と超薄型で、一枚のガラス板のように周囲の空間に溶け込むという。ディスプレイモジュール内の各部材を真空で高精度に貼り合わせることで、反射ロスを抑えて透明性を高めた。
ディスプレイ部と電源ユニット部を分離したモジュール仕様で汎用性を高め、住宅のほか、商業、交通、公共施設も含め、さまざまな場所に柔軟に設置できるという。複数枚接合による大画面表示も可能で、短辺方向は最大2枚まで、長辺方向は原理上、何枚でも接合できるとのこと。ただし完成品として製品に組み上げられていないため、設置は専門業者へ依頼することを推奨している。
HDMI入力(Ver1.4b)を1基備え、HDMIのCEC機能に対応。3.5 mm ステレオミニの音声出力と、ソフトウェアアップデート用のUSB端子も備える。AC電源で動作し、消費電力は292W(待機時約0.5W)。パネル用のT-Con基板や、電源ユニット部の信号基板との接続ケーブル、リモコン、長さ約1.8mの電源ケーブルなどが付属する。
パネル本体のサイズ/重さは、調光ユニットありの55ZT110が約1235×748.9×7.6mm(縦×横×厚み)/約14kg、調光ユニットなしの55ZT100が約1225×744.4×3.8mm(同)/約8kg。