ワコムは11月18日、同社主催の年次イベント「Connected Ink 2020」で、開発中のペン型VRデバイス「Wacom VR Pen」を披露しました。市販のVRヘッドセットと組み合わせ、VR空間に手書き文字を書いたり、細かい装飾やデザインを作り込んだりできるといいます。
ワコムによるVR空間向けのペン型デバイスの開発は以前から行われており、2018年4月にはVR/MR用3D描画ツールの試作機が公開。翌年の2019年1月には、米家電見本市「CES 2019」で試作機の実物が披露されています。
なお、この分野の競合としては、周辺機器メーカー大手のロジクール(Logitech International S.A.)が、海外向けにペン型デバイス「Logitech VR Ink Pilot Edition」を、エンタープライズ向け製品として2019年5月に発表しています。
ほぼペン型に進化。握った強さを検知する機能も
今回、開発が発表された試作機は、2019年のCESから大幅に進化。コントローラーの形状を無くし、ほぼペンそのものの形状となりました。ペン機能・消しゴム機能など、必要なボタン類はペン本体と、ペンを握るためのガイドに付けられています。
「Wacom VR Pen」では、ワコムがイラスト制作タブレットでも得意とする、筆圧検知機能も搭載されています。とはいえ描く先はVR空間のため、一般的に言われる筆圧(ペン先に加わる圧力)ではなく、ペン軸にある2つのくぼみを握る強さを検知し、VR空間に描かれる線の太さを自動で変えるという機能です。実際に展示機で試したところ、握った強さに対し素早い反応で狙い通りの強弱が付けられ、試作段階ならではのガタつきも多少はあったものの、完成形が楽しみな内容でした。
また、Wacom Cintiqシリーズといった同社製タブレットを使ってVR空間に描く機能にも対応する予定です。VR空間でも使いなれたタブレットを使い、しっかり手を置いて描けるため、対象を細かくスケッチしたり、作品に注釈を付けたりするなど、より精度の高い描画が行えるとしています。
VR空間でも繊細な描画をするためのデジタルペン
開発で意識したことは「握ったときのフィーリング」。詳細な仕様は未公開ですが、サイズや重さを最適化し、握り心地をいかに通常(2D)のデジタルペンに近づけるかを意識したといいます。
トラッキング範囲はデスクサイズ(机周辺)。体全体を使ったダイナミックな描画ではなく、タブレットを使いつつ細かい描画を仕上げていくような使い方に適しています。
同社が提供するのは本体のハードウェアと、これを使うためのアプリ用SDK(ソフトウェア開発キット)。OculusシリーズやViveシリーズなど、市販されているVRヘッドセット・コントローラーと組み合わせて利用するものになります。ワコムは、できるだけ多く対応アプリを増やしていきたいと、アプリ開発ベンダーに協力を呼びかけました。
価格は未定ですが、現時点での想定価格は200,000円ほど。2021年中にも、プロのデザイナーやクリエイターといったビジネス用途向けに提供を開始したいとしています。