「全機現する大人を増やしたい」と語るのは、ZENKIGEN代表取締役CEOの野澤比日樹氏。全機現とは、"人の持つ能力の全てを発揮する"という意味を持つ禅の言葉です。

野澤氏は、「テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」というビジョンのもと、WEB面接サービス「harutaka(ハルタカ)」及びAIの活用による採用のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進、自社でのワーケーション導入、スタート時からIPOを目指す上場スペック経営など、革新的な取り組みをされています。

本稿では、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が、そんな野澤比日樹氏と対談を行いました。

  • 採用・職場をDXし、HRの経営課題を解決! 全機現経営で生き生きとした社会を実現する【前編】

社会を支える大人たちが全機現していない

井上一生氏(以下、井上)――本日はありがとうございます。野澤さんの会社はZENKIGENという社名ですが、これは禅語なのですよね。社名の由来や起業の動機を教えていただけますか?

野澤比日樹氏(以下、野澤)――はい。新卒でインテリジェンス(現:パーソルキャリア)に入社して、先輩だった藤田晋さんに誘われ翌年に創業期のサイバーエージェントに入社しました。まだ社員が10名に満たなかった頃です。大阪支社の立ち上げや社長室、事業責任者として働かせていただきました。2011年6月に、ソフトバンクアカデミア外部1期生として参加して、たまたま孫正義会長から声がかかり、ソフトバンク社長室に入社、電力小売事業「SB Power」を立ち上げました。

ZENKIGENを創業したのは2017年10月です。社名は、禅語の"全機現"から来ています。全機現は、人の持つ能力の全てを発揮するという意味です。

現代は、元気がなくて、残念ながら全機現していない大人を多く見かけます。大人が疲れ切っていて、それを見て子どもたちは育ちます。全機現する大人を増やして、それを子どもたちに見せていきたい。今の日本があるのは先人たちのおかげですから、ちゃんと次世代にバトンを渡したい。そんな想いがあります。大人は働く時間が長いですから、そこに着目して、テクノロジーでHR・人の問題に取り組む会社をつくりたいと思ってZENKIGENを起業しました。

  • (左)ZENKIGEN 代表取締役CEO 野澤比日樹氏、(右)SAKURA United Solution 代表・井上一生氏

井上――人の課題は、常に経営者の悩みですよね。人材の確保や人材の定着、育成、後継者問題など、経営には常に人の課題があります。ZENKIGENでは、画期的なHRサービスを提供されていますよね。

野澤――「harutaka(ハルタカ)」というWEB面接サービスでオンライン採用をサポートさせていただいています。エントリー動画の管理やライブ面接、日程調整、リマインダー機能、など採用担当者ならではのお悩みに寄り添い面接をサポートできるのがharutaka(ハルタカ)の特徴です。

応募者の方と直接会わなくても面接ができ、距離や時間にとらわれず、多くの出会いを実現しています。精度の高い選考でミスマッチを回避するため、録画で多面的な評価を可能にするなど、採用業務の負担を軽減できます。3年前からこのサービスを展開していましたが、今回の新型コロナの影響もあり、導入していただく企業様が急激に増えている状況です。コロナ禍でも採用活動を止めずに出来ることに貢献できていると感じています。

井上――まさに時流ですね。当社も緊急事態宣言が出たとき「採用はどうしますか?」と人事担当から相談されました。これまでの「直接会う」という面接の仕方から、変わらないといけなくなりましたよね。

野澤――WEB面接は、アフター/ウィズコロナ時代ではスタンダードになると思います。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環でもありますね。

採用のDXでミスマッチ・アンマッチをなくす

井上――確かに、採用ってまだまだアナログな部分が多いですね。

野澤――アナログな部分が多いゆえに、ミスマッチが起こっているということもあると思います。WEB面接だけでなく、採用全体をAIを使ってDXしていきたいと考えています。面接の様子は録画もしているので、多角的に解析し、採用に活かすことができます。

部分的に採用のデジタル化は進んでいるのですが、まだまだ全体ではアナログな部分が多く、デジタルは点の状態です。その点をつないでいって、振り返りができるようにする。エントリーから採用までのビッグデータを採用や人事に活かすのが目的です。データが膨大なので、AIじゃないと分析できません。

井上――大企業であれば、なおさら膨大なデータになりますね。

野澤――そうなのです。大手企業ほどデータが多いので大変です。アナログだと分析が出来ず、無意識にバイアスも働くので自社にフィットした人材の確保は難しくなります。また、面接を録画、解析することで面接官に対するフィードバックも行えるようになるので面接官も候補者の良さを最大限引き出せるようになるという効果もありますね。

井上――当社でもすぐ使いたいです! 連続で面接すると、申し訳ないけど覚えてない人も出てきてしまうし、情報量が多くて、だれを採用するのが良いのか判断できなくなってしまうのです。

野澤――ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。採用する企業側も、面接には細心の注意を払う必要があると考えています。例えば、「面接を受けてその会社が嫌いになる」というのはよく聞かれるケースです。面接官の印象が悪いと、その会社の商品やサービスを買わなくなります。面接官が、無意識に悪い印象を与えてしまっているかもしれません。

井上――あ……、わかります。

野澤――面接官がその反応を読み取れなくても、応募者の方の感情は表に出ているはずです。AIが表面的に表れている表情や仕草、体の動きなどを分析して候補者の感情を理解出来るようになって来ました。 誰もが最良の候補者体験を提供できるようになる可能性があります。

井上――それは本当にすごいですね。正直なところ、社員とのミスマッチ・アンマッチはあります。経営者も、それで疲れ切っているということはよくありますよ。ミスマッチ・アンマッチを防ぐことができたら、それは経営者にとっても社員にとってもハッピーなことですよね。ZENKIGENさんのharutaka(ハルタカ)は、幸福経営を実現する可能性を秘めていますね。それも、かなり大きな可能性を。

次回は、採用のDXの次の計画について教えてください。

(次回に続く……)