ビジネスシーンにおいて、「抽象化」は重要な要素です。「抽象化」とは、物事の構成要素から共通する事項を抜き出すことであり、この思考能力を身に着けることで、仕事で活かせるようになります。
本記事では、物事を抽象化して見ることのメリットや、抽象化するためのトレーニング方法について紹介します。
なぜ物事を抽象化して見る必要があるのか
「抽象化」というと、「曖昧」と捉えて良い印象を持たない人も多いかもしれません。しかし、近年では日常生活やビジネスシーンなどで重要視されている思考法と言われています。
先述の通り、抽象化とは、物事の全体を見渡すことで共通の要素を見つけ出し、1つの概念にまとめることです。つまり、抽象化できなければ、1つの概念をもって問題に対処できません。ここでは、抽象化思考の具体的なメリットを紹介します。
物事の本質を見抜ける
物事を抽象化して捉えることで、重要ではない情報を取り除けます。細かい情報に囚われることが少なくなるので、本質を見抜ける力が養えると言えるでしょう。本質を把握することで、さまざまな視点で物事を分析することができます。
物事の全体像がつかみやすくなる
物事を抽象化することで、共通点を見出し、1つの概念にまとめることができます。
例えば、上司に「〇〇社の特徴を表して欲しい」と指示された場合、「残業が少ない会社で、社員の職場への不満は低く、転職者も最近は少ない会社」と答えると、具体的過ぎて全体像が掴めません。これを抽象化し、「働き方改革に取り組み、成功している会社」と表現した上で、「残業が少ない」「転職者が少ない」などの具体的な特徴を伝えると、よりイメージが湧くことでしょう。
選択肢が増える
本質を見極めることで、そこからさまざま解決策を考えることができます。
例えば、Aさんが書類で不要な位置に印鑑を押したとします。その問題を解決するには、書類を再印刷し、印鑑を正しい位置に押しなおせば解決します。しかし、同様のミスがこれまでも何度も起きていたとしたらどうでしょうか? どうも問題の本質は「Aさんの注意不足」ではなさそうですね。
Aさんに限らず、BさんもCさんも同様のミスをした経験があるようであれば、そもそもの書類の型(テンプレート)に問題があるのかもしれません。
このように、1つの問題だけではなく、複数の問題を抽象化して捉えることで、「テンプレートの改善」「オペレーション改善」といったさまざまな解決策を考えることができます。
コンセプトが説明しやすくなる
コンセプトとは、概念や観念を表す言葉であり、ビジネスシーンで非常に重要になります。例えば、新商品のプレゼンをする場合、真っ先に説明するのが商品コンセプトになります。商品コンセプトが明らかでなければ、アピールポイントがぼやけることになります。抽象的思考でコンセプトを明確に話すことで、具体的な内容も伝わりやすくなるでしょう。
物事を抽象化することのデメリット
抽象化思考は、非常に大切な思考ですが良いことばかりではありません。場面によっては、具体的な思考をもって考えることが求められます。大切なのは、抽象化のメリットに加えてデメリットを正しく理解し、場面に応じて具体化と使い分けることです。ここでは、物事を抽象化することで明らかになるデメリットを紹介します。
一般化されすぎてわかりにくくなる
物事を抽象化すると、本来持つ特徴に対する意識が薄れることがあります。抽象化をするには、さまざまな構成要素から共通する要素を抜き出すことが必須です。
物事の概念を表す場合であれば問題はありませんが、せっかくの特徴や強みが淘汰されると本末転倒だと言えるでしょう。したがって、物事を抽象化する際には、単に構成要素をまとめるのではなく、特徴や強みをいかに表すかを考えることが必要です。
誤った解釈がされてしまう場合もある
物事を抽象化する際、思い込みや誤認識があると概念が歪んでしまいます。抽象化は決して、物事を曖昧に表現することではありません。求められるのは、それぞれの構成要素を正確に把握することです。
ところが、思考の軸が定まってないと、考慮すべき事象の相関関係や構成要素があやふやになり、間違った判断がなされます。誤った解釈をしないためにも、物事の事象だけでなく背景を読み取ることを習慣にしましょう。
抽象化思考のトレーニング方法
日々のトレーニングで、物事を抽象化して見る力を身につけることは可能です。ビジネスシーンにおいて、抽象化思考は必須の思考法だと言えるでしょう。しかし、どうすれば抽象化思考が身につくのかわからないという方も少なくありません。ここでは、抽象化思考を鍛えるトレーニング方法を紹介します。
具体的な物事にテーマをつけてみる
ビジネスシーンにおいて、経験値が高くなるとさまざまな知識が蓄積されます。そのため、物事の本質を見逃すことも少なくありません。
そこで、物事を考える際「つまり〇〇ということだな」と要約する癖をつけることが大切です。「つまり」を使うことが抽象化のコツであり、物事を簡単に要約しテーマをつけることが容易になります。
短い文章で表現する
物事を伝える際、長い文章よりも短い文章の方が、表現は難しくなります。長い文章だと、修飾語を重ね詳細に説明することが可能です。ところが、短い文章であれば言葉選びに気を遣う必要があります。短く伝わる文章を書く力を身に着けるには、日記がおすすめです。その日1日の出来事を短い文章に表すことで、言葉の選び方や文章構成を学べるだけでなく、まとめる思考を養えるでしょう。
別の視点から物事を見てみる
見方を変えればいくつもの回答が見つかり、物事の本質を見極められるようになります。例えば、機械が壊れた際、「機械に欠陥があったのか」「使い方に問題があったのか」で解決策は異なります。つまり、1つの視点からでは考えられなかった解決策が出てきます。物事を考える際には、抽象化思考をもって別の視点で見ることを心がけましょう。
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抽象化思考で物事の本質を捉えることで、さまざまな場面に活かすことができます。物事を曖昧にするのではなく、共通する要素を抜き出して本質を捉えるようにしましょう。
日頃から物事の構成要素を見出し、要約するなどのトレーニングが抽象化思考を身につけるコツです。