サイボウズは11月17日、緊急事態宣言から約半年のタイミングで同社のサイボウズ チームワーク総研が実施した「テレワークのコミュニケーション」についての調査結果を公表した。テレワークには「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」といった形態があるが、今回の調査ではシーンを明確にするため「在宅勤務」に絞って実施した。

在宅勤務の頻度は出社とのミックス型が7割

調査目的は、テレワークをしている人の職場内コミュニケーションについて意識や実態を把握し、よりよい職場環境づくりのための参考とするものとなり、対象は週1回以上在宅勤務をしている会社員・公務員・経営者および役員3087人、年齢は20~69歳、エリアは全国、割付条件は就業実態に寄せるため、勤務先の従業員規模/男女比/年代で割付。期間は10月2日~同6日、調査方法はパネルを活用したインターネット調査とした。

2020年10月時点の在宅勤務の頻度は「週に1~2日」が4割、「週に3~4日」が3割と、在宅勤務と出社を組み合わせている人が多い結果となり、職場の人とのコミュニケーションについて、使用している手段を複数回答で尋ねたところ、「E-mail」が8割、「電話」が7割、「Web会議」が6割となった。

  • 在宅勤務の状況

    在宅勤務の状況

年代別にみると、ツールの利用差が明確となり、20代では「E-mail」「電話」が他年代より低く、20~30代は「チャット」を使用してのコミュニケーションが40~60代より多い傾向となった。

職場の人とのコミュニケーション

また、職場の人とコミュニケーションをとる時間について、(1)業務に関わるコミュニケーション(社内会議・打ち合わせ・朝礼・申し送りなど)、(2)業務に直接関わらないコミュニケーション(雑談・ランチ・交流会など)の2つの内容に分けて尋ねた。

(1)の総計では「30分未満」が過半数、「0分」を加えると6割になり、従業員数別に見ると従業員数が多いほどコミュニケーション時間が増しており、1000人以上での「30分未満」は4割に減る一方で、「1時間以上」が3割を占めた。業務に関わるコミュニケーションの時間数について、多くしたいか少なくしたいかを聞いたところ「適量」と回答した人が8割に達した。

  • 従業員数別の業務に関わるコミュニケーション時間数のグラフ

    従業員数別の業務に関わるコミュニケーション時間数のグラフ

(2)の総計では「0分」「30分未満」ともに4割強となり、(1)と違い、従業員数「10人未満」から「1000人未満」にかけては「0分」が減り「30分未満」が増える傾向となっており、「1000人以上」では「0分」と「30分未満」がともに43%となった。

コミュニケーションの時間数を多くしたいか少なくしたいかを聞いたところ、全体値である総計では「もっと多くしたい」が2割となり、業務に関わるコミュニケーションとの違いが見られた。従業員数別では「10人未満」に比べ「1000人未満」および「1000人以上」で、「もっと多くしたい」がほぼ倍となっている。さらに年代別で見ると「もっと多くしたい」は「20代」「30代」で高く、「40代以上」との差が見られる。

  • 従業員数別の業務に関わらないコミュニケーション時間数のグラフ

    従業員数別の業務に関わらないコミュニケーション時間数のグラフ

在宅勤務では5割以上がコミュニケーションがしにくいと感じている

職場の人とのコミュニケーションのしやすさを業務に関わるコミュニケーション、業務に直接関わらないコミュニケーション、それぞれについて聞き、どちらも「しにくい」と回答した人が5割を超えた。業務に関わるコミュニケーションのしやすさについて年代別に見ると、年代が下がるほど「しにくい」と回答する人が増えており、「20代」が61%、「60代」51%で、10%の差があった。

業務に直接関わらないコミュニケーションのしやすさについても、年代が下がるほど「しにくい」と回答する人が増える傾向があり、最も高い「20代」が60%、最も低い「50代」47%で13%の差となった。

  • コミュニケーションのしやすさに関するグラフ

    コミュニケーションのしやすさに関するグラフ

業務に関わるコミュニケーションがしにくい理由をフリーアンサーからテキストマイニングを行ったところ、「相手の顔が見えない、状況が分からない」「電話など連絡の取りにくさ、メールなど時間がかかる」「上司とのやりとりが多い」「通信環境が悪い」「タイミングが難しい」などが挙がった。

一方、業務に直接関わらないコミュニケーションがしにくい理由に関しては、業務に関わる時と同じく「相手の状況が分からない、相手が忙しい」「話す時間やタイミングが難しい」といった意見が挙がり、そのほかには「業務に関わらないコミュニケーションは取りにくい・不要・機会がない」「雑談での連絡はしない」が見られた。

在宅勤務における人間関係の変化

在宅勤務を開始して、業務で関わりのある職場の人との関係性に変化があるかを聞いたところ、6割の人が「(職場の人が)何をしているか分かりにくい」「話さない人が増えた」と回答し、他設問より高い割合となった。「自分がどう映っているか不安」については、「20代」で5割を超え、「30代」でも4割を超えており、20代と最も低い「50代」とは2割以上の開きとなった。

  • 業務でかかわりのある職場の人との関係性の変化

    業務でかかわりのある職場の人との関係性の変化

さらに、在宅勤務時のコミュニケーション(E-mail(メール)・電話・グループウェア・チャット・Web会議ツールのいずれかを使用している時の職場の人とのコミュニケーション)について、当てはまるものを回答してもらったところ、「ちょっとした会話が減る」「ランチや飲み会での交流が減る」といったコミュニケーション機会減に関する設問に「はい」と回答した人が7割を超えた。

  • 在宅勤務時のコミュニケーションであてはまるもの

    在宅勤務時のコミュニケーションであてはまるもの

また「ちゃんと伝えようと丁寧になる」も7割を超え、「場の雰囲気をつかみにくい」「発信・発言への反応がつかみにくい」など、ニュアンスの感じにくさに関する項目は6割を超え、「時間数・時間帯を気にせずコミュニケーションできる」「相手との関係がフラットに感じる」「気軽な声かけをしにくい」「相手との間に壁や距離を感じる」の質問には「いいえ」と回答した人が多くなったという。

チームワークが良いチームはコミュニケーションに時間をかける

現在、チームを組んで業務を実施していると答えた1823人を対象に、そのチームのチームワーク状況を判断するアセスメントを行い、獲得得点ごとの傾向を見た(得点が高いほどその人の在籍するチームワークの状態が良いことを表す)。アセスメント方法は「チームの目指す方向への理解」「メンバーの役割分担」「チーム内コミュニケーション」「知識や経験など情報共有」「モチベーション」「公明正大かどうか」の6要素をもとに、当該チームのチームワークを数値化し、強み弱みを把握した。

評価するため10問のアセスメント設問を「よく当てはまる」「まあ当てはまる」「あまり当てはまらない」「全く当てはまらない」の4段階で回答し、加重値で得点化。すべて「当てはまる(よく当てはまるorまあ当てはまる)」に回答した場合の最低点30点を基準に上回るものと、基準以下のものに分類をして傾向を把握したほ、上回るものの中で特に良いチーム(36-40点)の傾向を分けて抽出した。

得点別のコミュニケーションの時間数について、業務に関わるものと業務に直接関わらないもの、それぞれの傾向として、業務に関わるものは「30点以下」では「30分未満」が多いのに対し、「31~35点」「36~40点」では「30分以上」が最多となっている。

  • 業務に関わるコミュニケーションの時間数(チームワーク得点別)

    業務に関わるコミュニケーションの時間数(チームワーク得点別)

さらに、業務に直接関わらないコミュニケーションでは、三層とも「30分未満」が最多だが、「36~40点」では「30分以上」のコミュニケーションが21%あり、「30点以下」と9ポイントの差が見られるという。

  • 業務に関わらないコミュニケーションの時間数(チームワーク得点別)

    業務に関わらないコミュニケーションの時間数(チームワーク得点別)

まとめ

今回の調査から、テレワーク時の職場内コミュニケーションの実態が見えてきました。コミュニケーションにかける時間では、業務に関わるものでは「30分未満(0分含)」が6割、業務に直接関わらないものでは「0分」4割となり、詳細の時間は企業規模ごとに異なるものの、私たちが想定していた以上に、在宅勤務時における職場内コミュニケーションの時間が短い結果となった。

一方で、チームワークが良い状態のチームでは業務内外ともにコミュニケーションの時間が長くなることがわかったほか、チームワークの良いチームではコミュニケーション状況を改善する兆し(「場の雰囲気をつかみにくい」「発言・発信への反応がつかみにくい」の低減)も感じられたという。

「コミュニケーションがしにくい」との声は、業務に関わる、業務に直接関わらないともに5割を超え、特に「20代」、次いで「30代」と傾向が強く、若い層ほど「しにくさ」を感じていることが分かったほか「自分がどう映っているか不安」では20代、30代が高いという傾向も判明した。

そもそもコミュニケーションの時間が短いなかで、かつ「しにくい」と感じている若手が多いという事実から、40代以上の世代や職位など上位の人は若手にどのようなフォローができるのかを考えてみることも必要かもしれないと、同社では認識を示している。