燃え尽き症候群とは、今まで熱心に業務に取り組んでいた人が、急に意欲を失ってしまい、仕事に対してやる気を感じられなくなるような状態を指します。 従業員の燃え尽き症候群は、企業・組織にとって大きな脅威です。

2020年3月に発表されたGallupの調査によると、従業員の76%が燃え尽き症候群を経験していることがわかっています。2020年10月には、オフラインで働く従業員よりも、完全にリモートワークで働く従業員のほうが燃え尽き症候群を経験しているという調査結果も発表しています。

  • 燃え尽き症候群を経験している従業員の割合 資料:Gallup

    燃え尽き症候群を経験している従業員の割合 資料:Gallup

  • 新型コロナウイルスによるパンデミックが発生した後、フルタイムでリモートワークをする人が燃え尽き症候群になる可能性が高まっている 資料:Gallup

    新型コロナウイルスによるパンデミックが発生した後、フルタイムでリモートワークをする人が燃え尽き症候群になる可能性が高まっている 資料:Gallup

燃え尽き症候群を経験している従業員は病気で休んだり、新しい仕事を探したりする可能性が高いとされています。そして、こうした従業員が現れた時、職場での自信とエンゲージメントは低下します。

Gallupの調査では、従業員の燃え尽き症候群と相関関係がある上位5つの要因として、「職場での不当な扱い」「管理不能なワークロード」「マネージャーとの不明確なコミュニケーション」「マネージャーのサポートの欠如」「不当な時間のプレッシャー」を挙げています。従業員の燃え尽き症候群を防ぐ上で、組織のリーダーの責任は重大です。

したがって、組織のリーダーは、従業員の燃え尽き症候群を防ぎ、ウェルネスを促進するための対策を講じることが重要です。以下、そのための3つの方法を紹介します。

従業員がテクノロジーをコントロールできるようにする

職業心理学者のCary Cooper氏によると、職場でコントロールや自律性がないと感じている従業員はストレス関連の病気にかかる可能性が高く、新しいテクノロジーの過負荷が大きな要因となっています。

一般的なビジネスワーカーは毎日、仕事で9.4種類のアプリケーションを使用していると言われています。つまり、アプリを切り替えなければならないたびに、新しいコンテキストに適応するために貴重な精神的エネルギーを費やしていることになります。このストレスに加えて、多くの従業員が仕事に使用するアプリやデバイスについて発言権を持たないという事実を考えると、燃え尽き症候群になってしまうのも納得です。

この問題に対処するには、従業員が仕事に使用するテクノロジーを選択できるようにする必要があります。例えば、安全でありながら柔軟性のあるBYOD(Bring Your Own Device)のポリシーを定義することで、従業員が仕事で使用するデバイスを管理することができます。また、よく使い慣れたコンシューマーアプリと統合するテクノロジーを活用するのも有効です。

そこで、すべての重要なビジネス・アプリケーションを1つのインタフェースにまとめるWorkspace Technologyが注目を集めています。これにより、アプリケーション間のコンテキストの切り替えを最小限に抑え、社員の集中力を高めることができます。

テクノロジーで業務の中断を排除する

さて、この記事を読んでいる間、PCやスマートフォンから何らかの通知を受けて邪魔をされていたかもしれません。会議への招待状や、署名が必要な経費報告書、メッセージ受信の通知など、注意をそらされることなく、ここまで読み進められたでしょうか?

こうしたことは日常茶飯事ですが、実は、精神的な代償を伴うものです。米国カリフォルニア大学アーバイン校の研究者によると、従業員は仕事中に11分ごとに中断を受けており、1日当たり2.5時間以上を失っているそうです。そして、頻繁に業務の中断を経験した従業員は、中断を経験していない従業員よりも9%高い疲労を感じており、2倍以上のミスを犯すという調査結果も出ています。これは燃え尽き症候群の典型的な症状です。

職場からすべての中断を排除することは不可能ですが、中断がどれも重要なではないことは覚えておいてください。適切なテクノロジーの導入により、特定の作業時間帯にSlack、メール、カレンダーの更新などの通知を排除する設定を使用して、必要のない通知を除外することができます。機械学習とAIにより、カレンダーの招待状への返信や経費報告書の承認など、価値の低いタスクを自動化することも可能になっています。これらのテクノロジーは、燃え尽き症候群や従業員のエンゲージメント低下の原因となる注意散漫を防ぐのに役立ちます。

全従業員のために毎週、空白の時間を設ける

従業員をコントロールし、仕事中の気が散らないようにするための対策を講じたとしても、「常時稼働」の職場文化は燃え尽き症候群の原因となることがあります。「常時稼働型」の職場では、従業員はすべての作業時間を厳密にスケジュールし、いつでも迅速にメッセージに返信し、作業量を常に最大に近い状態で維持することが求められます。

Quartzによると、従業員の67%が「常時稼働」は健康とウェルネスに大きなマイナスの影響を与えると考えており、「常時稼働」の職場が従業員の定着率とエンゲージメントが低い傾向にある理由を示しています。

「常時稼働」の状態を解消するには、集中して仕事をする時間と自由な空白の時間の適切なバランスを見つけることです。従業員のカレンダーに毎週空白の時間を設けることで、クリエイティブな思考、熱中できるプロジェクト、エクササイズのための時間を1週間のうちに確保することができます。また、従業員が希望すれば空白の時間を一緒に過ごすことができるように共同スペース(ゲームルームやヨガスタジオなど)を用意するのも効果的です。

燃え尽き症候群を深刻に受け止めている従業員、リーダーは?

Quartzの調査によると、81%の従業員が燃え尽き症候群を減らすことが雇用者にとって最優先事項であると考えており、従業員は燃え尽き症候群が組織のリーダー層が注目すべき脅威であると考えていることを示唆しています。

リーダーの皆さん、行動する準備はできていますか。従業員が職場のテクノロジーをよりコントロールできるようにしたり、注意散漫を軽減するツールを導入したり、自由な空白の時間をチームのために確保したりすることで、組織のウェルネス文化を促進し、燃え尽き症候群を抑えることができるのです。

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)


シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社
セールスエンジニアリング本部 エンタープライズSE部 部長

グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスであるエンタープライズSE部部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。