正確な日時は不明だが、Microsoftは米国時間2020年11月11日ごろ、Microsoft Edge InsiderのダウンロードページでWindows 10X用Microsoft Edgeを公開した。本稿執筆時点では、Canary・Dev・ベータチャネルで提供している。インストーラーはMSI形式の後継となるMSIXパッケージ形式だった。

  • Microsoft Edge Insiderのダウンロードページに並ぶプラットフォーム一覧のなかに、Windows 10X用がある

以前はWindows 10 Insider Previewが必要だったWindows 10X Emulatorだが、現在配付しているWindows 10X Image 10.0.19578.0は、Windows 10 20H2でも動作する。

さっそくデスクトップPCで環境を整えて起動したところ、バージョン82.0.431.0だったMicrosoft Edgeの自動更新が始まり、バージョン88.692.0へアップデートされた。今回の環境はCanaryチャネルのバージョン88.0.698.0だったので、何もせずにCanaryチャネルのWindows 10X用Microsoft Edgeが適用されるようである。

  • Windows 10X Emulatorを起動したところ、Microsoft Edgeの自動更新がかかり、最新バージョンへアップデートした

余談だが、Windows 10X Emulatorに日本語版MS-IMEはインストールできたものの、日本語ランゲージパックのインストールでエラーが発生した。今回は、Windows 10Xの日本語化は諦めた。ただしMicrosoft Edgeの日本語化は容易である。

  • Windows 10X用Microsoft Edgewo日本語化した状態。マイナビニュースも日本語で表示されている。IMEのオンオフでクラッシュすることも多く、安定性の向上に期待したい

2019年10月にデュアルスクリーンデバイス用OSとして発表されたWindows 10Xは、OEM PCメーカーやMicrosoftのSurface Neoに搭載される予定だった。2020年5月、Microsoftは方針転換を表明し、シングルスクリーンデバイス向けに転向。Surface Neoのリリース時期は未定となったが、Windows 10Xは2020年中にRTM(製造工程版)に達するといわれている。

方針転換の裏では、仮想化されたアプリをローカルに統合するVAIL(Virtualized Application Interface Layer)の実装が見送られることとなり、Windows 10XでWin32アプリを実行することは現時点でかなわなくなった。その結果、Windows 10XはUWPアプリとWebアプリに頼るしかなく、後者の基盤となるMicrosoft Edgeに注力するのは当然の結果といえるだろう。

Windows 10Xが興味深いOSとなることは否定しない。懸念するのは消費者の需要である。今後はSaaSが中心となり、Webブラウザーさえあればこと足りる世界が広がっていくと思われるが、それならWindows 10Xデバイスではなく、Chromebookでも何でも構わないのだ。ARM版Windows 10搭載デバイスもバッテリー駆動時間は魅力だが、コロナ禍において外出頻度が減った現状を踏まえると、ARM64ネイティブアプリが出そろわない限りは、厳しい状況が続くのではないか。加えて、Microsoft Storeの利便性を分かったうえでいうと、UWPアプリは現時点でキラーコンテンツとはいいがたい。

これらの背景を考えると、筆者のようにITを生業にしている人間や、イノベーター理論におけるアーリーアダプターに類するユーザー層を除けば、Windows 10X搭載デバイスを選択肢に含める消費者は多くないだろう。期待半分、懸念半分。それが正直な感想だ。早ければ2021年春ごろにはシングルスクリーンのWindows 10X搭載デバイスが登場すると見られているので、MicrosoftやOEM PCメーカーの公式発表を待ちたい。