仕事で商談をまとめたり、日常生活で周囲の人に頼み事をしたりなど、私たちの日常には交渉が必要になるシーンが多数あります。交渉を上手に進めなければ自分の要望を通すことができません。そのため、自分の要望を上手に通すためには交渉術を身につけておくことが重要になります。

本記事では交渉術を行う際のポイントや、実際に交渉の場で使えるテクニックをご紹介します。

交渉を行う際のポイント

交渉で重要なことは、自分が求める条件を通すことですが、要求を求めるばかりに自分の重要な条件を通せなくなる場合もあります。交渉術を理解し、自分や相手にとってもよい交渉になるようにしましょう。

  • パソコンと資料を使って話し合いをしている様子

    交渉のポイントを知りましょう

■アイデンティティの把握

仕事におけるアイデンティティとは、自分が会社にとってどのような役割を果たすべきであるかということです。

アイデンティティを把握していないと、自分が交渉を行う目的を見失ったり、自社の商品やサービスなどへの理解が不十分になったりします。また、メリットを伝えることができないため、交渉相手に対して適切なアプローチをすることもできません。仕事の役割や商品の理解を徹底していくようにしましょう。

■相手のことを知る

交渉をする場合は、事前に相手の情報をできるだけ集めておく必要があります。もし、交渉相手の情報を集めていなければ、お互いの求める条件が一致しているかどうかを判断できません。一致していない場合は、どのような条件の変更が必要であるかもわかるため、交渉の材料として相手のことを知っておくようにしましょう。

■相手と自分の共通点を見つける

スムーズに交渉を進めるためには、相手との信頼関係を築いていく必要があります。交渉相手と信頼関係を築く方法はいくつかありますが、基本的な方法の一つに「相手との共通点を見つける」があります。

趣味や出身地などの共通点が見つかると、親近感が湧きます。その親近感をきっかけに話を進めると、より交渉が進めやすくなるでしょう。

■Win-Winの最大化を目指す

交渉は決して勝ち負けを決めるためのものではありません。一方的に相手の要求を呑んだり、自分の要求を通すために相手を説き伏せたりすることは、上手な交渉とはいえません。

交渉は相手と自分、双方がWin-Winで、かつそのWin-Winの最大化を目指すよう意識しましょう。

■相手の反応を見逃さない

交渉の場では、相手がどのような条件であれば受け入れてくれて、どのような条件は譲ることができないのかを判断しなければなりません。その条件を探る際には、交渉相手に直接聞けないこともあるので、表情や仕草などを客観的に観察して判断することが大切です。

交渉相手が合意できるWin-Winとなる条件を探るためにも、相手の細かな反応を見逃さないようにしましょう。

■シンプルに交渉する

交渉では相手の様子を探ることも重要ですが、自分の要望を伝えることも重要です。もし、自分の求める条件が交渉相手に正しく伝わらなければ、適切な交渉を進めていくことができません。

そのため、自分の条件を伝える際には、余計なことを付け加えたり遠回しな言い方をしたりせず、簡潔に伝えるようにしましょう。

■条件が魅力的である

交渉を成立させるためには、お互いが相手の出す条件に納得する必要があります。お互いが条件に納得するためには、双方の価値基準を把握し、すり合わせていくことが重要です。

もし、条件が価値基準の範囲内に入っていなければ、その条件が魅力的と判断されないので交渉を成立させることができません。そのため、お互いの価値基準の範囲を話し合いによって確認し合うことも重要です。

■事前にどこまで譲歩するか決める

交渉ではこちらが出す条件を相手が受け入れてくれるとは限りません。そのため、このような交渉が成立しなかった状況に備えて、事前に譲歩できる範囲を決めておくことや、代替え案を準備しておくことが重要です。交渉の最低目標ラインを明確にしておくことで、交渉の場での判断が行いやすくなります。

■交渉成立の想定

交渉が成立すれば、次の展開としてその交渉が成立したことを明確にしなければいけません。その方法として文書化があります。交渉の内容を文書化していないと、成立後に解釈の違いが発覚して、その交渉が無効となってしまうなどのトラブルが起こる可能性があります。

交渉が成立した場合は、スムーズに進められるように、その後の展開に備えた準備をしておく事も重要です。

交渉術に活かせるコミュニケーションテクニックや心理学

交渉する際は「こちらの条件を確実に伝える」「相手の感情を読み取る」「相手に好印象を与える」などのコミュニケーションテクニックを持ち合わせていると、有利に進められます。以下にいくつかまとめましたのでご確認ください。

  • メモを取りながら話し合いをしている様子

    さまざまなコミュニケーション方法を知りましょう

(1)DESC法

交渉では、こちらの条件を明確に相手に伝える必要があります。自分の条件をわかりやすく伝える方法としては、4つのステップを活用する「DESC法」があります。

「DESC法」は以下の4ステップを経るスキルです。

D:Describe(描写する)……客観的な状況や事実を伝える・

E:Express(表現する)……自分の考えや感情を表現する

S:Suggest(提案する)……自分が求めているものを相手に伝える

C:Consequences(結果を伝える)……提案したものによる結果を伝える

DESC法ではまず事実を伝え、その事実に対して自分の意見や感情を伝えます。そして、自分が相手に求めていることを伝えて、それによってどのような結果が得られるのかを伝えます。このように段階を踏んで自らの主張をすることで、相手に理解を深めてもらいやすくなります。

(2)ペーシング

交渉では相手との信頼関係を築くことが必要です。そのためには、ペーシングによって安心感を相手に与えると効果的でしょう。

ペーシングとは、他者とコミュニケーションを図る際、自分と相手のペースをあわせることで、相手に安心感や親近感を与えるスキルのことを意味します。交渉相手の表情や話し方、声のトーン、さらにはあいづちのタイミングなどをあわせることで、「自分と似ている」という気持ちを相手に抱かせ、信頼関係が築きやすくなるでしょう。

(3)ダブルバインド

ダブルバインドとは、「2つの矛盾した命令を他人にすることで相手の精神にストレスがかかる状態」を指します。

ビジネスシーンでは、相手から自分が意図した選択肢を引き出すエリクソニアン・ダブルバインドというテクニックが交渉に役立つでしょう。

(4)バンドワゴン効果

大勢の人が選択しているものと同じものを、自分もつい選択してしまうという心理効果をバンドワゴン効果といいます。

販促やPRで使われることも多い心理テクニックですが、交渉においても使えます。

(5)ドア・イン・ザ・フェイス

本来通したい要求を承認してもらうため、わざと最初に大きな要求をし、それが断られた後に要求のスケールダウンをしていくことで本来の要求を通りやすくさせる技法をドア・イン・ザ・フェイスといいます。

(6)フット・イン・ザ・ドア

フット・イン・ザ・ドアは、最初に小さな要求を承諾させてからだんだんと要求内容を大きくしていき、最終的に目的である要求を承諾させる方法です。

ドア・イン・ザ・フェイスと対になるテクニックですので、それぞれのメリット・デメリット、注意点などを押さえておきましょう。

ビジネスに活かせる交渉術をマスターしよう

交渉をするときは、自分や相手にとってメリットがある取り引きにする必要があります。そのために交渉術を身につけ、スムーズに交渉が行えるとよいです。交渉術を行う際にはいくつかのポイントがあるので、それらを押さえて、有利な交渉を進められるようになりましょう。