熱心なアップル製品ファンでも意外に持っている人が少ないのが、スマートスピーカー「HomePod」です。音質と性能の高さはお墨付きなのですが、大きさと価格の高さが敬遠され、日本では大ヒットには至っていません。
それらの欠点を解消しつつ、アップル製品の鉄板ブランド「mini」を冠した新製品「HomePod mini」がこの秋登場します。場所を選ばずに置ける小さなボディからは想像できない高音質のサウンドが楽しめるだけでなく、ワイヤレススピーカー特有の接続の手間を省いて音楽や動画の音声を奏でる機能や、家族のコミュニケーションを高めるユニークな機能も搭載。楽しさももたらすお手ごろ価格の高音質スピーカーに仕上がっていました。
HomePod miniのおもな特徴は以下の通りです。
- ちょっとしたスペースに置けるリンゴ1つ分ほどのコンパクトな本体
- 聴く場所を選ばない設計で、部屋全体がスイートスポットになる
- 小音量でもクリアな再生が可能で、かつほどよい重低音が楽しめる高音質設計
- 2台用意すれば広がり感のあるステレオ再生が可能
- iPhoneを近づけるだけで、iPhoneで聴いていた曲や動画の音声が再生できる
- 外出先からでも音声でメッセージが伝えられるインターコム機能
- 税別10,800円の低価格、2台買っても税別21,600円
“アメリカンサイズ”だったHomePodを大幅ダイエット
国内では2019年8月に登場した元祖HomePodは、ひたすら高音質を追求した設計としたアップル初のスマートスピーカーです。円筒形の本体に7つものツィーターや大型のウーファーを搭載し、お腹に響くような豊かな低音や透き通るような高音が味わえます。さらに、HomePodを置く場所や聴く場所を選ばない工夫が凝らされており、高音質が手軽に楽しめるのもポイントです。
このようにサウンド面では一切手抜きのないHomePodですが、その代わり“大きく重い”“価格が高い”という2つの欠点がありました。底面積はCDやDVDのディスクよりもひとまわり大きい程度なのですが、重量が約2.5kgとかなり重いので、日本の家庭事情だと設置場所を確保するのは意外に苦労します。さらに、価格は税別32,800円と、低価格化が進む各社のスマートスピーカー&ワイヤレススピーカーのなかでは高価格で、なかなか手が出ません。
そのような“大きさも価格もアメリカンサイズ”だったHomePodを大幅に小型軽量化しつつ、評価の高い高音質を継承して誕生したのが「HomePod mini」です。価格は税別10,800円と、実に元祖HomePodの1/3にまで安くしています。2つ買っても21,600円、3つ買って32,400円と、ようやく元祖HomePodと同等の価格になる安さです。
元祖HomePodで気になっていた本体サイズですが、大きさはリンゴ程度のサイズにまで小さくなり、重さは約345gと数分の1にまで軽くなっています。つなぎ目のないメッシュ生地で覆われた外装は元祖HomePodを継承しますが、形状は円筒形から球体に変わり、カジュアルな印象が高まりました。
部屋のどこにいても良質なサウンドが楽しめる
HomePod miniは、職人の手による音響設計にデジタル技術を駆使したコンピュテーショナルオーディオを掛け合わせることで、サイズからは考えられないほど上質なサウンドを奏でるよう工夫しているのが特徴です。
音響設計は、下向きに搭載したフルレンジドライバーが豊かな音を出し、底面に設けられたアコースティックウェーブガイドを通して音を360度の全方向に広げる仕組みになっています。この構造により、設置したテーブルの不要な反射音を抑制しつつ、室内のどの場所にいても均一なサウンドが届き、部屋全体がスイートスポットになる仕組みです。
コンピュテーショナルオーディオは、新たに搭載したS5チップがリアルタイムに聴いている音楽を分析し、不自然なゆがみがなくバランスのよいサウンドに仕上げます。これにより、サイズを大幅に小型化しながらも豊かなサウンドが奏でられるわけです。
Apple Musicでさまざまなジャンルの音楽を再生したところ、元祖HomePodのようなお腹に響くほどの重低音はないものの、この小さな球体が奏でているとは思えないほどの上質なサウンドが楽しめました。感心したのが、ボリュームをかなり絞ってもサウンドの傾向が変わらず、上質な音が保たれたこと。子どもや家族が寝たあと、自宅の書斎やリビングで音楽やラジオを楽しみたいお父さんも満足できるでしょう。
興味深かったのが、置いた場所の素材に応じて音が変化すること。カーペットなど音を吸収しやすい素材だと音がこもりがちになるので、ある程度しっかりした木製の机やオーディオラックの上に設置するのが好ましいと感じました。手で高い位置に掲げた際も通りのよい音が楽しめたので、アクセサリーメーカーから専用スタンドが登場することを期待したいと思います。
iPhoneをかざして音楽を引き継ぐなど、便利な機能も満載
便利だと感じたのが、音楽を再生しているiPhoneをHomePod miniに近づけるだけで、HomePod miniに音楽を引き継いで再生できるハンドオフ機能。AirPodsで音楽を楽しんでいて、AirPodsのバッテリーが少なくなってきたら、iPhoneをかざすだけでHomePod miniでの再生にサッとチェンジできるわけです。わずらわしいワイヤレス設定をしたりコントロールセンターを開く必要はありません。
元祖HomePodと同様に、2台のHomePod miniを使ったステレオ再生にも対応します。こちらも面倒な設定は必要なく、並べたHomePod miniそれぞれにiPhoneをかざすだけでOK。ふだんはリビングと寝室のそれぞれでHomePod miniを使い、Apple TV+の映画を楽しむときは2台を並べて広がりと迫力のあるステレオ音声で、と使い分けができるのは便利です。
HomePod miniで再生できるのはApple MusicやApple TV+、Podcastなどアップルのサービスだけではありません。YouTubeやRadiko、Amazon Music、TVerなど、サードパーティーのアプリも広く対応しており、より幅広いシーンで活躍してくれます。ただ、元祖HomePodと同様にAirPlay 2のみの対応となるため、Bluetoothスピーカーとは異なりゲームなどの音声出力には対応しません。
新しい機能として、HomePod miniを介して家族と音声メッセージのやり取りができる「インターコム」を搭載しています。キッチンに設置したHomePod miniに「Siri、みんなに“ごはんができました”と伝えて」と話しかければ、ほかの部屋に設置したHomePodで音声メッセージが再生されるという仕組みです。
音声メッセージは家庭のWi-Fiネットワークの外からも送受信できます。外出先から「Siri、みんなに“駅に着いたので、晩ご飯の準備をしてね”と伝えて」といった連絡も、iPhoneでSiriを呼び出してサッと済ませられます。逆に、自宅の家族から届いた「帰りに牛乳を買ってきて」というメッセージをApple Watchで再生し、そのままApple Watchに「分かりました」と音声を吹き込んで返信できます。これに慣れると、メッセージアプリを使うのも面倒に感じてしまいます。
HomeKitに対応したIoTデバイスも、HomePod miniを介して音声で制御できます。2,000円前後で購入できる「Meross WiFiスマートプラグ」などのスマートプラグを使えば、サーキュレーターやスタンドライトなどの電源を音声でオンオフできます。日本ではHomeKit対応デバイスがまだまだ少ないのが残念ですが、安価なスマートプラグから試してみるのもよいでしょう。
Apple Musicを契約していなくても満足でき、2台3台と増やしたくなる
大きさや価格、サウンドのクオリティなど、すべてが“ちょうどよい”レベルに過不足なくまとまったHomePod mini。何より、どこにでも置きやすいコンパクトサイズと1万円ちょっとという価格は、日本のユーザーにとって特に魅力的に感じます。YouTubeやAmazon Musicでもスマートに再生が楽しめるので、Apple Musicのサービスを契約していない人でも魅力を十二分に堪能できます。
1台でも満足できますが、2台あればワイドなサウンドが楽しめ、3台あれば家族それぞれが使える…と、台数が増えるごとに活用の幅が広がるのも目を引きます。まず1台入手し、気に入ったら2台目、3台目…と買い増していくのもよいでしょう。