寒中見舞いは、小寒から立春の直前までに出す季節の挨拶状です。年賀状の返信や喪中における挨拶など、さまざまなシーンで用いられており、ビジネスシーンにおいても寒中見舞いは大きな意味を持っています。
寒中見舞いを用いる際は、出す時期に加えて基本構成を理解しておくことが肝要となってきます。本記事では、寒中見舞いが使える時期や基本的な構成例などをご紹介します。
寒中の時期とは
「寒中」とは小寒から立春の直前までの期間を指します。1年を24の節目で分ける暦の区分法のことを二十四節気と呼びますが、そこで1年の最後に来るのが「小寒」「大寒」であり、その次に来るのが「立春」です。ちなみに、2021年は小寒が1月5日、大寒が1月20日、立春が2月3日となっています。
「小寒」は寒さが厳しくなり始める時期、「大寒」は寒さがピークを迎える時期を表します。したがって、「寒中」とは小寒から大寒が終わるまでの、寒い時期を表す言葉です。
寒中見舞いを出せる時期
寒中見舞いを出す時期は「松の内」が明ける日から立春までとされています。松の内とは、歳神様をお迎えする注連飾りや門松を飾りつける期間のことを指します。地域によって期間は異なり関東では1月7日、関西では1月15日が一般的です。
近年は年賀状の代わりに寒中見舞いを送るケースも増えていますが、そのような際はこの松の内を過ぎてから出すのが一般的とされています。年明け早々に寒中見舞いを送る人は、投函するタイミングに留意しましょう。
立春以降は「余寒見舞い」となる
寒中は立春までの時期を指しますが、この時期を過ぎると「余寒」になります。大寒の最終日は「節分」で、翌日が立春です。節分を過ぎても寒さは続きますが、暦の上では「春」になります。
そこで、寒さが続く期間を「余寒」と呼び、この時期に差し出される手紙を「余寒見舞い」とするのが一般的です。なお、「余寒」を使うのは2月末までとなります。
寒中見舞いを出す意味
寒中見舞いは、松の内までに差し出せなかった年賀状の代わりに使われています。元来、寒中見舞いは暑中見舞いと同様に、季節の挨拶状として、互いの近況を知らせるものでした。
最近ではメールで簡単に近況を報告し合うことができます。しかし、手紙ならではの温かみを味わえるのは、寒中見舞いならではのメリットです。年賀状をいただいた相手には寒中見舞いで近況を報告しましょう。
寒中見舞いの基本的な構成例
寒中見舞いは季節の挨拶状であることから、堅苦しい書き方のルールはありません。しかし、相手に想いを伝えるには一定のルールに沿って書くことが大切です。
一般的には
- 時候の挨拶
- 近況報告
- 先方への心遣い
- 書いた日付
の順に書いていきます。なお「拝啓」などの頭語、「敬具」などの結語は、寒中見舞いには必要ありません。ここでは、寒中見舞いの基本構成を解説します。
(1)時候の挨拶
寒中見舞いの冒頭には「時候の挨拶」を書き入れましょう。時候の挨拶とは、その季節に応じた季節感や心情を現す文節であり、一般的には「頭語」の後に続く礼儀文です。
寒中見舞いの場合、頭語は必要ありませんから「寒中お見舞い申し上げます」と書きます。続けて「厳しい寒さが続いておりますが皆さまいかがお過ごしでしょうか」「寒さも一段と厳しくなってまいりましたがお変わりございませんか」などと書くとよいでしょう。
(2)近況報告
当方の近況を伝える際には、必要に応じて年賀状に関する一文を加えましょう。例えば、喪中のため年賀状の返信が遅れたなど、そのことを伝える一文を添えることで相手への心遣いが表せます。
近況を伝える例文としては「ご丁寧な年始のご挨拶をいただきありがとうございました」「おかげさまで私どもは変わりなく過ごしております」などが一般的でしょう。
(3)先方への心遣い
自らの近況報告をした後には、先方の無事を祈って文書を締めます。寒中見舞いはあくまでも、自らの近況報告を報告することで季節の挨拶とするものです。したがって、長々と文章を書き連ねるものではありません。
先方の無事を祈る一文も「立春とは名ばかりの寒い日が続きますが、くれぐれもご自愛くださいませ」「皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます」」など定型句が一般的です。
(4)書いた日付
寒中見舞いの最後に書き入れる日付は、西暦でも和暦でも構いません。書き方としては「令和2年●月」「2020年●月」などとし、日にちや「吉日」は入れないのが一般的です。
なお、寒中見舞いは節分を過ぎると、余寒見舞いにシフトしなくてはなりません。はがきの最後に日付を書き入れることでフォローはできますが、可能な限り早めに出すのがマナーです。
ビジネスで使える寒中見舞いの書き方
ビジネスにおける寒中見舞いは、季節の挨拶以上の意味合いを持つことが往々にしてあります。例えば年賀状の返信や、喪中の方に年賀状を送ってしまった場合などは、寒中見舞いを使うのが一般的です。
基本的な構成や書き方を踏まえたうえで、シーン別の書き方を覚えると、寒中見舞いの用途が広がります。ここでは、シーンに合わせたビジネスで使える寒中見舞いの書き方を紹介します。
■基本的な内容の場合
ビジネスにおける寒中見舞いの目的は、相手との関係構築もしくは維持です。日頃の感謝の気持ちを改めてハガキで寒中見舞いを送ることで、相手の印象も良くなります。基本的な構成は「時候の挨拶」「近況報告」「先方の無事を祈る」です。
時候の挨拶では「●●様には平素より格別なお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます」といった一文を入れましょう。また近況報告で、さりげなく会社や自分自身をアピールするのも効果的です。
■年賀状の返事を書く場合
年賀状を出していない相手には、必ず寒中見舞いでフォローしましょう。時候の挨拶の代わりに、年賀状に対するお礼、出していなかったことの謝罪を書き入れるのが通例です。
例文としては「丁寧な年賀状をいただきまして大変ありがとうございました」「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございませんでした」となります。年賀状を出さなかったことの言い訳を書くのではなく、シンプルにお礼の言葉を入れるのがスマートです。
■喪中の方に書く場合
喪中はがきに対する返事は出さなくともマナー違反ではありませんが、寒中見舞いを出すとスマートです。基本的な構成は一般の寒中見舞いと変わりありませんが、相手を気遣う内容を書き入れます。
時候の挨拶の前に「服喪中と存じ年始のご挨拶は遠慮させていただきました」と書くとよいでしょう。また、近況報告の代わりに相手を気遣うのが丁寧です。
■喪中の方に年賀状を出してしまった場合
喪中はがきをいただいていたにもかかわらず、年賀状を出してしまった場合、寒中見舞いでお詫びしましょう。時候の挨拶を省略して、お詫びと故人に対する哀悼の意を述べるのが一般的です。
「このたびはご服喪中と存じ上げず 年始状を差し上げてしまったこと深くお詫び申し上げます」とお詫びします。続けて「ご尊父様のご冥福を謹んでお祈り申し上げます」などと哀悼の意を表しましょう。なお、喪中の場合は「年賀」ではなく「年始」を使うのがマナーです。
■喪中の際に年賀状を受け取った場合
喪中の際には年賀状を出すことはできませんから、寒中見舞いでお礼を述べましょう。時候の挨拶に続けて、年賀状を貰ったことに対するお礼を述べます。近況報告において、喪中であることを報告するのが一般的です。
例文としては「当方、昨年●月に父●●(享年●歳)が永眠し年頭のご挨拶を控えさせていただきました」となります。続けて「ご連絡が行き届かず大変失礼いたしました」とするのがマナーです。
■余寒見舞いを出す場合
立春が過ぎたら寒中見舞いではなく、余寒見舞いとなります。余寒見舞いは、単なる挨拶状ではなく「年賀状が出せなかった」「寒中見舞いの返信が遅れた」などのシーンで出すのが一般的です。
最初の挨拶は「余寒お見舞い申し上げます」とします。時候の挨拶は「立春とは名ばかりの厳しい寒さが続きますが お変わりありませんでしょうか」が一般的です。基本的な構成は寒中見舞いと同様となり、シーンに応じた文章を書き入れます。
寒中見舞いを出すときの切手の貼り方
年賀状とは異なり、寒中見舞いには専用の切手がありません。したがって、決まったルールはなく一般の63円切手もしくは記念切手を貼って出すのが一般的です。
郵便局にはさまざまな記念切手が発売されていますので、季節に合った絵柄の記念切手を選ぶとよいでしょう。ただし「62円」と「1円」切手を貼るのは、見栄えがよくないので避けるのが無難です。
寒中見舞いを出す時期を知り適切な書き方をしよう
寒中見舞いは松の内の期間以降、立春までに出すのが正しいマナーです。もともと、季節の挨拶状として寒中見舞いは用いられていました。最近では、年賀状の返信や喪中のときの年始の挨拶など、多様な用途で使われています。
基本構成を踏まえて、シーンに応じた文章を書き入れると、丁寧かつマナーに沿った寒中見舞いとなるでしょう。