帝国データバンクは11月10日、2020年1~10月末までに写真スタジオの倒産が20件発生したと発表した。倒産件数は既に2019年(11件)の約2倍に達し、年間では過去10年で最多となる見通しだ。
「ハレの日」需要が消失
同社の推計によると、2019年の写真撮影市場は約2,000億円。同市場は2008年頃までは急激な需要縮小が続き、ピークとなった2008年には33件の倒産が発生。しかし、近年は需要減を小幅に食い止めることができており、倒産件数は減少傾向にあった。
デジタルカメラやスマートフォンの普及が進む中、需要が大きく崩れない背景には、子育て世代を中心とする現役世代での需要減を抑えることができた点が大きい。近年はコト消費を追い風に、「ハレの日の思い出を残す」という付加価値が写真業界で市民権を獲得。子供向けポートレートやブライダルの記念写真など、「ハレの日」需要の強化により新規獲得に成功した写真スタジオも多数あるという。
しかし、今年はコロナ禍により、ハレの日やイベントの多くが中止や自粛に追い込まれたほか、インバウンドも消失し、写真需要が収縮。日本フォトイメージング協会が9月にまとめた調査によると、今年度のフォトイメージング市場は前年度比で約2割減少すると予想されている。
他方、コロナ禍をチャンスに新たなビジネススタイルを模索する写真スタジオも登場。出張撮影サービスの拡大を目指す事業者や、ネットプリントサービスなど撮影周辺のビジネスを強化することで他社との差別化を図る写真スタジオも出てきている。同調査では、「需要の回復が見通せないなか、再び訪れた危機をどのように乗り切るかが注目される」としている。