三浦九段は残留に向け大きな勝利で1勝4敗の成績に。糸谷八段は3勝2敗
第79期A級順位戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の5回戦、▲三浦弘行九段(0勝4敗)-△糸谷哲郎八段(3勝1敗)戦が11月10日に東京・将棋会館で行われました。早く今期初白星が欲しい三浦九段と、挑戦に向けて勝ち星を増やしたい糸谷八段との対戦は、101手で三浦九段が勝利を収めました。
糸谷八段が後手番ということで、戦前の予想通り本局は一手損角換わりの将棋となりました。早繰り銀の構えをとった三浦九段に対し、糸谷八段は飛車を4筋に転回して仕掛けをけん制します。しっかりと備えられるとすぐに仕掛けるのは困難とみた三浦九段は一転、玉形の整備に入りました。糸谷八段も右銀を繰り替えて左辺に配置。両者手出しの難しい展開となりました。
矢倉囲いにまでがっちり囲い切った三浦九段。一方の糸谷八段も銀矢倉を構築しましたが、玉は囲いの外の6二にいるという不思議な形。力戦派の糸谷八段らしい構えです。
自陣を万全の状態にした三浦九段が矢倉の一部である銀を▲8六銀と繰り出し、▲7五歩の仕掛けを見せたタイミングで、糸谷八段が先んじて△4五歩と突っかけていきました。手をこまねいているとまずいとの判断でしょう。
しかし、その仕掛けは三浦九段の待ち受けるところ。相手の手に乗って盤上の要所に角を設置し、主導権を握りました。この角と右銀を軸にした、三浦九段の歩をどんどん前進させていく手厚い攻めはまさに圧巻。4五~7五まで、五段目にずらっと三浦九段の歩が並び、糸谷玉に迫っていきます。
下から下から突き上げるような攻めは、まさにラグビーのスクラムのよう。このような攻めは途切れることはありません。受けが利かないとみた糸谷八段はと金を2枚作って攻め合いに活路を見出そうとしましたが、その攻めが三浦玉に届くことはありませんでした。
糸谷八段がと金で銀を入手し、銀得にはなりましたが、そのタイミングで三浦九段は蓄えていた力を一気に放出するような電光石火の寄せを披露。角を切り飛ばし、あっという間に糸谷玉を詰ましてしまいました。
相手に全く付け入る隙を与えない完勝となった三浦九段。今期待望の初白星をあげ、リーグ成績は1勝4敗に。敗れていたら降級濃厚の雰囲気も出てしまうところでしたが、これで残留争いは全く分からなくなりました。
一方敗れた糸谷八段は3勝2敗の成績。現在4連勝で首位の斎藤慎太郎八段とは星2つ差となってしまいました。