広瀬八段は勝者組決勝で糸谷哲郎八段と対戦。敗れた永瀬王座は久保利明九段と敗者復活戦を戦う

第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント(主催:共同通信社)の▲広瀬章人八段-△永瀬拓矢王座戦が11月9日に東京・将棋会館で行われました。勝者が勝者組決勝に進出する大一番は、161手で広瀬八段が勝利を収めました。

第43期挑戦者の永瀬王座と、第44期挑戦者の広瀬八段の対決となった本局。二人とも渡辺明棋王に敗れており、渡辺棋王への再挑戦を目指す戦いです。

振り駒で後手番になった永瀬王座は一手損角換わりを採用。ベスト4入りを決めた前局の対飯島栄治七段戦でも一手損角換わりを用いていました。

永瀬王座の18手目△4四歩が珍しい一手。この手は先手が▲3七銀と上がり、早繰り銀や棒銀を明示したタイミングで突くのが普通です。しかし、本局では広瀬八段の右銀は4八のまま。広瀬八段は早速この早い歩突きをとがめるべく、▲4六歩と突いて腰掛け銀の布陣を採りました。4五を争点にしようという狙いです。

広瀬八段の狙い通り、4筋で戦いが始まりました。銀桂交換の戦果を挙げた広瀬八段が徐々に優位を拡大していきます。永瀬王座も角を切って飛車を敵陣に打ち込み、広瀬玉に迫っていきましたが、広瀬玉は上部が広い形でつかまりません。一方の永瀬玉は大駒2枚に攻められて、今にも寄せられてしまいそうです。

しかし、ここから永瀬王座が粘ります。自陣の守り駒を見捨てて玉を上部に逃がしていきます。香の王手にはなんと大駒の角を合駒にして延命。ついには広瀬陣に入り込む「入玉」を果たしました。

持ち時間が少ない中、入玉までされたら普通は焦って手が乱れてしまうところ。しかし、広瀬八段は棋界でも有数の終盤力の持ち主です。慌てることなく着実に手駒を蓄え、永瀬玉への包囲網を形成していきます。そしてついに157手目の▲4五銀から、永瀬玉を自陣内で即詰みに打ち取りました。

勝った広瀬八段は勝者組決勝に進出。対戦相手は糸谷哲郎八段です。決勝は、勝てば挑戦まで1勝でいいのに対し、敗れると3勝が必要になる重要な一戦です。

敗れた永瀬王座は敗者復活戦に回り、久保利明九段と対戦。ここから4連勝すれば挑戦権を獲得できます。

正確な終盤力が武器の広瀬八段(提供:日本将棋連盟)
正確な終盤力が武器の広瀬八段(提供:日本将棋連盟)