預貯金の使い道はいろいろあるでしょう。「いつかは自分で起業したい」、「老後はゆったりと生活したい」「子供を医者にしたい、留学させたい」、「便利な都心に住まいを取得したい」……と、例を挙げればきりがありません。ただし誰もが、「1億円あれば、老後を安心して暮らせる」と思うのはないかと思います。今回は60歳の区切りに、普通のサラリーマンが老後を安心して暮らすための資金をテーマに、どうすれば1億円貯められるかを考えてみましょう。

今回は60歳の区切りに、普通のサラリーマンが老後を安心して暮らすための資金をテーマに、どうすれば1億円貯められるかを考えてみましょう。

  • 1億円はどうやって貯める?

    1億円はどうやって貯める?

■共働きサラリーマンのケース

1億円というと、途方もない金額のように思われるかもしれませんが、普通のサラリーマン家庭でも60歳の第一定年時に1億円貯めることは可能だと思います。

例えば、これからは共働きが一般的ですので、平均的な収入の共働き家庭を考えてみましょう。普通に収入があるので、原則夫の収入だけで家計を賄えるはずで、多少の貯蓄も可能でしょう。妻の30歳から60歳までの手取り額の平均を300万円とすると、30年間で9,000万円です。若い時はそれよりも少ない時もあり、産休で収入がない時もあるかもしれませんが、地位が上がれば収入も上昇していくはずです。退職金が予定されている会社であれば、目標額に組み込めますし、住まいも資産ですので、60歳時点の時価で参入できます。

現在では生活の様々なことにお金がかかり、妻の収入もある程度は生活費に消費されていくのが一般的かもしれませんが、普通の家庭でも不可能ではないという、ざっくりした感触をつかみましょう。結局は収入を何に使うかの問題です。海外旅行に支出するのか、より豪華な住まいの取得に使うのか、安穏な老後の生活費として貯蓄するのかの選択にほかなりません。

人生は自分達が何がしたいか、何が目的なのかが最も大切ですので、60歳からの第2の人生を豊かに過ごしたい、そのために1億円必要で、そこに重点があれば他は節約するしかありません。

■独身サラリーマンのケース

夫婦で働くことが一般的になりつつありますが、それでは生涯単身で過ごす場合は1億円貯めるのは難しいのでしょうか。確かに単身であっても生活費は1/2で済むわけではありません。教育費は不要ですが、家賃や光熱費はあまり差は出ません。また年を取ったときに家族がいませんので、介護等はすべてお金で解決しなければなりません。

そこで単身者のケースで1億円貯蓄可能かを検証してみましょう。下図は男性サラリーマンの平均給与から手取り収入の概算を算定し、支出を差し引いて貯蓄額の推移を算出したものです。30歳現在の貯蓄高は200万円で設定しています。住宅ローンは月12万返済とし、その他の支出は月々10万円としています。旅行や大型家電製品などもここから支出します。退職金は1,500万円とし、30年後の住まいの資産価値を2,800万円としています。あくまでも自分で検証するための見本ですので、それぞれ自分の収入や支出に当てはめてチェックしてみてください。運用益は考慮していませんが、実際は預貯金だけでなく、一定範囲を投資に回して運用した方がよいでしょう。

  • 1億円を独身サラリーマンが貯めるには?(筆者試算)

    1億円を独身サラリーマンが貯めるには?(筆者試算)

■他の支出とのバランスは生涯収支表でチェックを!

30歳位から、ひたすら貯蓄に励めば、独身のサラリーマンでもなんとか1億円は貯められそうと分かっても、60歳以降の人生に最大の楽しみを見出している場合は別ですが、それだけの人生はつまらないと感じるかもしれません。

子供がいる場合は子供の教育や子供が巣立つまでの家族としての豊かな時間への支出も大切でしょう。貯蓄と支出のバランスを知るためにはライフプランニングシート(生涯収支表)を作ってみるのが最適です。現在から60歳まで、あるいは平均余命までの収入と支出を書き出し、貯蓄残高の推移を見ます。住まいの取得、子供の高校・大学の入学など、大きな支出によって貯蓄残高がどのように変化するのかが分かります。貯蓄残高がマイナスになった時点で家計の倒産です。また、残高が少なくなった時が家計の弱点期となります。早くからその時期が分かっていれば、時間をかけて対処していくことが可能なのです。

貯蓄が順当に推移していれば、他の支出により多く回せるでしょう。また、現在はさほど貯蓄できなくても、何年か先にかなりの額を貯蓄できると分かれば、今無理をする必要はありません。逆にこのままでは目標の貯蓄額に達せないようであれば、支出の見直しを早くから着手できます。

  • ライフプランニングシート例(筆者試算)

    ライフプランニングシート例(筆者試算)

■住まいの資産価値が決め手

1億円貯める過程を考えると、家賃の支出は大きなネックです。「持ち家か賃貸か」の問題は過去何回もメディアで話題になってきました。それぞれの支出金額の違いは、意外にもほぼないのです。

ただし、それは何事もなかった場合の比較です。持ち家の場合は債務者に万一のことがあれば、遺族にローンの負担がない住まいが残ります。賃貸の場合は引き続き家賃を払い続けなければなりません。長期療養の時は家賃とローンのどちらの負担が大きいでしょうか。ここで物件の市場価値という一つのファクターが登場します。市場価値の高い住まいであれば、値下がりも少なく、有利に売却したり、貸したりできます。家賃として消費し続けるよりも、市場価値の高い物件であれば、住宅ローンの負担はありますが、資産となる持ち家の方が有利かもしれません。ポイントは価格は安いけど、値下がり等のリスクの少ないエリアの駅近物件です。

「マンションPER」という言葉があります。PERとは株価を判断する投資指標の一つで、市場全体の株価収益率を表します。RERが低いほど、その銘柄の株価は利益水準と比較して割安であると判断できます。マンションPERとは、金融指標のPERをマンション購入時の指標に置き換えたものです。マンションPERが低いということは、そのマンションから得られる収益(貸した場合の賃料)に比較して、購入価各が安いことを意味します。私はマイホームを取得する際に、当時はその言葉は知りませんでしたが、購入物件と同エリアの賃貸状況を事前にリサーチしました。結果は抜群のPER値で、資産として今でも有効に働いています。

株価収益率(PER)=株価/1株当たり利益
マンションPER=マンション価格/そのマンションを貸した場合の1年間の賃料収益

資産となる住まいをしっかりと調べて探してみることも、1億円を貯めるひとつの道となるでしょう。