米労働省が2020年11月6日に発表した10月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数63.8万人増、(2)失業率6.9%、(3)平均時給29.50ドル(前月比+0.1%、前年比+4.5%)という内容であった。
(1)市場の注目が集まった10月の米非農業部門雇用者数は前月比63.8万人増と、前月の67.2万人増からやや減速したが、市場予想(58.0万人増)は上回った。3カ月平均の増加幅は93.4万人となり、前月(130.9万人)から大きく減速した。業種別では、レジャー(娯楽・宿泊)が27.1万人増となり全体をけん引。小売りも10.4万人増加した。一方で、政府関連は国勢調査のための臨時雇用が終了した事で26.8万人減少した。
(2)10月の米失業率は6.9%となり、前月から1.0ポイント低下。市場予想(7.6%)以上に改善した。ただ、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は12.1%と、前月の12.8%から0.7ポイントの改善にとどまった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は61.7%へと、前月から0.3ポイント上昇した。
(3)10月の米平均時給は29.50ドルとなり、前月から0.04ドルの増加にとどまった。伸び率は前月比+0.1%、前年比+4.5%となり、前月比では予想(0.2%)を小幅に下回ったが、前年比は予想通りであった。比較的低賃金とされる業種を中心に雇用が回復した事で、平均時給の伸びがやや鈍ったと見られる。
米10月雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加幅が5月以降のコロナ禍からの回復局面で最小の63.8万人にとどまった。失業率は大幅に改善したが、「雇用されているが休職中」の人の一部が失業者としてカウントされていない模様で、引き続きデータの歪みとなっている。これらの人を含めた失業率は7.2%であったとする試算も示された。
一方、労働参加率の上昇は雇用市場の裾野が拡大している事を示す好材料ではあるが、コロナ禍以前の63%台には程遠い。米10月雇用統計については、米雇用情勢の改善は続いているが改善ペースが鈍っているとの評価が妥当であろう。こうした見方に加え、米大統領選挙の結果が投票から3日を過ぎても確定しない異例の事態となった事から、今回の雇用統計に対する市場の反応は控えめだった。ドルは、円やユーロなどの通貨に対して発表直後こそ小幅に上昇したがその後反落した。米国株は小幅安となり、米国債はやや下落して利回りが小幅に上昇した。