抜けるような秋の青空の下、「マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2020」(立川立飛大会)が2日間の日程(10月31日~11月1日)で開催された。

選手たちにしてみれば1年ぶりの大きな大会。華やかな女子トーナメントでは実績あるペアが順当に勝ち残り、また実力伯仲の男子トーナメントでは昨シーズンのファイナルと同じ顔合わせが激突した。

  • 国内トップカテゴリーツアー「マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2020」が開催(以下、公式画像より)

今年唯一の国内トップツアー

本来なら春から開幕予定だった今シーズンも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でスケジュールが軒並み中止・延期に。ようやく迎えた開幕戦は、今年唯一の国内トップツアーとなった。初日には男女の8試合が実施され、2日目には男女の準決勝と決勝が実施された。

  • 予定では8試合あった今シーズンのジャパンツアーも、これが唯一の大会になった

ツアーで選手が獲得したポイントは、日本代表選考に大きく影響する。来年には、東京2020大会における開催国枠(出場権1枠)を決める代表決定戦も控えている。

このため今大会は、国内トップレベルの選手たちによる真剣勝負が繰り広げられた。

  • タチヒビーチで躍動する選手たち

  • マイナビ、久光製薬(サロンパス)など各スポンサーの広告が会場に彩りを添える※YouTubeの配信映像より

熱戦の舞台となったタチヒビーチは、海のない立川市の街なかに砂が持ち込まれてできた人工のビーチ。南国のヤシの木をイメージしたパネルで囲まれた特設コートの向こうを、都会の象徴であるモノレールが走り抜ける。

両日とも天気が良く穏やかなビーチバレーボール日和となった。男子も女子も、小麦色の肌の引き締まった身体に、チームカラーに合わせた色とりどりの水着という格好。選手たちの笑顔が青空に映える。試合を見ていて、とても華があると感じた。

  • 選手たちの気持ちの入ったプレイが随所に見られた本大会

  • コロナ対策のため、観客席では節度のある応援が行われていた

白熱した準決勝の戦い

男子準決勝では、石島雄介/白鳥勝浩ペアが西村晃一/柴田大助ペアを破り、また高橋巧/長谷川徳海ペアが土屋宝士/池田隼平ペアを破って決勝に進出。

男子3位となった西村選手は「来年、オリンピックが開催されることを信じて、またイチから練習したいと思います」、柴田選手は「コロナの影響で練習もいっぱいできました。あと半年あるので、もっと練習して、次は絶対に勝ちます」と再起を誓った。

  • 男子3位となった西村晃一/柴田大助ペア

また、女子は石井美樹/村上めぐみペアが鈴木悠佳子/藤井桜子ペアを破り、鈴木千代/坂口由里香ペアが西堀健実/溝江明香ペアを破って決勝に進出。

鈴木悠佳子選手は「この大会に合わせて調整してきました。良いパフォーマンスが出せました」、藤井選手は「コロナにより1年間、公式戦がありませんでしたが、今日は楽しくプレイできました」、溝江選手は「このような状況下でツアーを開催いただき、ありがとうございました。再結成して初めての国内トップツアーでしたが、試合できる喜びを噛み締めながら戦いました」とコメントを残した。

  • 女子3位となった西堀健実/溝江明香ペア

女子決勝は絶対王者が圧倒

ビーチバレーボールには、6人制バレーボールのオリンピック経験者や、Vリーグの第一線から転向してきた選手も少なくない。女子の決勝に残った石井美樹選手もそんな1人。久光製薬スプリングスなどで活躍した後、ビーチバレーに転向した。

  • 女子ビーチバレーの王者、石井美樹選手(奥)と村上めぐみ選手(手前)

女子の決勝は、そんな絶対王者 石井・村上ペアに、中堅の鈴木・坂口ペアが挑むという構図になった。

第1セットの序盤は石井・村上ペアが先行し、鈴木・坂口ペアは2点差前後で食らいつく。しかし村上選手のサーブが決まり出すと14-10と徐々に突き放しにかかる。1プレイが終わるたびに、確認の話し合いをする石井・村上ペア。一方で、鈴木・坂口ペアは準決勝のようなプレイをさせてもらえない。

石井選手の強烈なスパイクが決まり17-12と5点差に。ラインぎりぎりを狙った攻撃に、ボールを拾いきれない鈴木・坂口ペア。長いラリーを押し切り得点を重ね、最後は石井選手が上げたトスを村上選手が決めて21-16。第1セットが終了する。

第2セットは鈴木・坂口ペアが先行する出だし。鈴木選手は「オリンピックを狙います」と公言しており、ツアーにかける意気込みも高い。一方で35歳の村上選手は冷静沈着なプレイ。石井選手のサービスエースが決まり04-04の同点になる。鈴木選手はドロップショット、村上選手はカットショット、ラインショットという持ち味を出し始める。

ここから中盤までもつれた展開。石井選手の重いサーブ、そして長身を活かしたブロックが決まり17―15。どこに打つべきか、空中で切り替える余裕がある石井選手の強打。最後は鈴木選手のサーブがアウトとなり21-17でゲームセットとなった。サーブの精度が高く、すべてのプレイが上回っていた石井・村上ペアに対して、鈴木・坂口ペアは小さなミスが重なってしまった。

  • 準優勝となった鈴木千代/坂口由里香ペア

準優勝となった鈴木千代選手は「久々の公式戦。負けてしまったけれど、本当に楽しかったです。ビーチバレーを盛り上げていきたいので、今後とも応援をよろしくお願い致します」。坂口由里香選手は「選手にとって、このような場で練習の成果を発揮できるのはありがたいこと。来年に向けて課題を克服できるように頑張っていきます」とコメントした。

優勝した石井選手は、こみ上げる涙をこらえつつ「たくさんの応援をありがとうございました。今年はビーチバレーボールの大会がなくて、チームとして目指す方向が分からなくなった時期もありました。そんなとき、皆さんが声をかけて応援してくださった。だからこそ頑張れました。優勝できて本当に良かったです」。

村上選手は、大会が開催されたことに感謝しつつ「試合があるからこそ日頃のモチベーションを保つことができます。今回、それを再認識しました。これからも1日1日、精一杯の練習をしていきます。私たちのプレイを見た皆さんに、元気、笑顔、勇気が届くように頑張っていきます。今後ともビーチバレーをよろしくお願い致します」と話していた。

  • (左から)浅尾美和さん、石井美樹選手、村上めぐみ選手、狩野舞子さん

男子決勝は意地と意地がぶつかり合う

男子決勝は、石島雄介/白鳥勝浩ペアと高橋巧/長谷川徳海ペアがぶつかり合う、昨シーズンと同じ顔合わせとなった。昨年は4回、ファイナルでこの顔合わせがあり、3勝1敗で石島・白鳥ペアがリードしている。試合は高橋選手の強烈なサーブで先行。対する石島選手も身長から打ち下ろすスパイクで盛り返す。愛称が"ゴッツ"として知られる石島選手の力強いプレイ。

冷静にコースに打ち分ける長谷川選手、白鳥選手は打ちそうな素振りを見せて空いているスペースに絶妙に落とすカットショットを決めていく。2点差の中盤、スパイクが決まって吠える石島選手。白鳥選手のスパイクで逆転を果たすも、高橋選手のコート隅に落とす良い判断で再び18-18。意地と意地がぶつかり合う。

高橋選手のスパイクで同点(ジュース)に、そしてナイスショットで逆転して20-21、ここでタイムアウト。最後は高橋・長谷川ペアのブロックが決まって第1セットをものにする。

  • 決勝の4人はペアを組んだことがあり、お互い手の内が分かっていた

第2セットもレベルの高い試合が続く。ツーで返すなどの小技を効かせ、また連続ブロックを決めるなど調子の良い長谷川選手。高橋選手は相手のど真ん中に落とすサービスエース、続く長谷川選手もサーブを決める。4点差になると、思い切ったサーブがどんどん決まるようになる。

コートチェンジして、グッドサイドの風上の条件をうまく活かした攻撃が続く。長谷川選手、高橋選手の強烈なスパイクが決まり13-19と6点差がつく。攻める高橋・長谷川ペア。最後はオンライン際にボールが落ち15-21でゲームセット。最後まで崩れなかった高橋・長谷川ペアが、昨シーズンの雪辱を果たした。

  • 準優勝となった石島雄介/白鳥勝浩ペア

試合後、MCの浅尾美和さんから、トレーニングで胸板がさらに厚くなったのではと聞かれた長谷川選手は「もうタンクトップがきつくなってしまい、息ができないくらいなんです。そんなハンディキャップがありましたが勝てて嬉しい。来期はXAではなくXBかXCのサイズでつくってください」と話して会場を笑わせた後、「今日はたくさんの方がライブで試合を見てくれました。見てくれたらビーチバレーの面白さが伝わる。これからもこの競技の面白さを発信していきます」と話していた。

また高橋選手は「コロナで大変な状況ですが、現地やリモートで応援してくださった方々の声に励まされました。これからもプレイで恩返ししていけたら」と話し、家族、チームスタッフ、ファンに感謝の言葉を述べていた。

  • (左から)浅尾美和さん、長谷川徳海選手、高橋巧選手、狩野舞子さん

なお、本大会のツアー冠協賛はマイナビ、ツアー協賛は久光製薬など。賞金(マイナビ賞)として総額324万円(優勝60万円、2位30万円、3位※2チーム16万円、5位※4チーム10万円)などが用意された。